2020年09月25日、「台風9号」「台風10号」の影響で韓国の原子力発電所が停止した件についての調査報告が出ました。
まず「まとめ」ですが、台風2個の影響は以下のようなものでした。
古里1・2・3・4号機、新古里1・2号機
外部電源供給が停止し緊急発電機が起動
(古里3・4号機、新古里1・2号機の運転を停止)
09月07日
月城2・3号機
タービン・発電機が停止。同2基の運転を停止
となり、結局台風2個で6基の原発が止まったわけです。
原因は塩害だが、対策を講じてはいなかった
先にご紹介したとおり、09月09日の段階で「塩害」が原因という説明は出ていたのですが、今回の「韓国原子力安全委員会」と「通商産業資源部」の共同調査の結果もおおむねそれを裏付けるものとなっています。
⇒参照・引用元:『韓国 通商産業資源部』「台風(メイサーク、ハイシェン)による原発事件の調査結果を発表」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
「産業通商資源部」の公表文書では事故原因は以下のように説明されています。
고리1·2·3·4호기와 월성2·3호기의 경우 원전에서 생산된 전력량을 계측하는 계기용변성기에 태풍시 강풍이 동반한 염분이 흡착되어 섬락*이 발생하면서 스위치야드에 있는 차단기가 개방되어 사건이 시작되었고, 고리1·2·3·4호기에서는 소외전원 공급이 차단되면서 비상디젤발전기가 자동으로 기동되었습니다.
古里1・2・3・4号機と月城2・3号機の場合、原発で生産された電力量を計測する計器用変圧器に台風の強風に運ばれた塩分が吸着。フラッシュオーバ・が発生し、スイッチヤード(開閉所)のブレーカーが開放されました。そのため、古里1・2・3・4号機では外部電源が遮断され、緊急ディーゼル発電機が自動的に起動しました。
* 섬락(閃絡, flashover) : 순간적으로 전기가 통할 때 불꽃이 튀는 현상
フラッシュオーバー(閃絡、flashover):瞬間的に電気が通じると、火花が散る現象특히, 고리3·4호기의 경우에는 태풍이 지나간 후인 9.4일과 9.5일에 태풍시 흡착된 염분으로 인한 섬락으로 인해 대기보조변압기 전원이 차단되어 비상디젤발전기가 기동되는 사건이 있었습니다.
特に、古里3・4号機の場合には、台風が過ぎ去った後の09月04日と09月05日に、台風時に吸着された塩分によってフラッシュオーバーが起こり、補助変圧器の電源が遮断されて緊急ディーゼル発電機が起動しました。
신고리1·2호기의 경우에는 강풍으로 인해 원전에서 생산된 전기를 765kV 송전탑으로 송전하는 점퍼선이 철탑구조물에 가까워지면서 섬락이 발생하여 소외전원 공급이 중단되어 원전이 정지되고 비상 디젤발전기가 가동되었습니다.
新古里1・2号機の場合には、強風のために原発で生産された電気を765kV送電塔に送電するジャンパー線が鉄塔構造物に近づいてフラッシュオーバーが発生。外部電源供給が中断されて原発が停止し、緊急ディーゼル発電機が起動しました。
という説明です。
設計・施工・整備はきちんと行われていたのかという点が気になるところですが、韓国メディア『ハンギョレ』はその疑問に対する『韓国水力原子力発電』のリアクションを以下のように書いています。
(前略)
これに対して韓水原(『韓国水力原子力発電』のこと:筆者注)は、「今回の事故は、予期せぬ強力な台風の影響による急速な塩害により発生したもので、設計や施工、管理、不良とは関連がない」と述べた。⇒参照・引用元:『ハンギョレ』「[独占]『マイサーク』と原発4基の集団停止、台風のせいより設備不良と思われる状況」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
「予期せぬ強力な台風」のせいだとしていますが、「海に近い場所にある」のに「塩害対策が不十分だった」というのは、設計や施工に問題があったことにはならないのでしょうか。
今回の運転停止で韓国の原発に対して不信感を高めた人は多そうですが……
(松田ステンレス@dcp)