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韓国の金融収支「約1兆円」の資金流出。銀行が巨額を借りた後、貸す方に回った

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2021年05月07日、『韓国銀行』が03月末時点での国際収支統計を公表しました。経常収支については先にご紹介しましたので、今度は金融収支を見てみます。03月は非常に興味深い点があります。

急に「100億ドル」の大台に乗った!

まず、「金融収支」自体が急に100億ドルの大台に乗りました。以下をご覧ください。

2021年韓国の「金融収支」推移
01月:52.8億ドル(約5,763億円)
02月:74.3億ドル(約8,110億円)
03月:100.1億ドル(約1兆926億円)

ちなみに、これは海外との取引での資産の増減を示すので、03月は100.1億ドル(約1兆926億円)ぶん資産が増えたということですが、その分の資金流出になります。

では、どのような資産が増えた(どのような項目で資金が流出した)のでしょうか。

03月は「その他投資」が異常な数字

金融収支は「直接投資(Direct Investment)」「証券投資(Portfolio Investment)」「デリバティブ(Financial derivatives)」「その他投資(Other Investment)」「外貨準備の増減(Reserve assets)」の5つの項目に分かれます。

2021年03月末時点でのそれぞれの項目は以下のようになっています。

2021年03月
①直接投資:22.6億ドル(約2,466億円)
②証券投資:-8.4億ドル(約-911億円)
④デリバティブ:2.6億ドル(約283億円)
⑤その他投資:71.4億ドル(約7,797億円)
⑥外貨準備の増減:11.8億ドル(約1,287億円)
金融収支(①~④の合計):100.1億ドル(約1兆926億円)

①の「直接投資」は、工場を造るとかそのような金額の収支を計上しますが、韓国の場合には、2020年05月以降はだいたい20億ドル台で収支は安定しており、ここは特に問題ありません。韓国から海外へ投資を行って海外資産を増やす方が22.6億ドル多かったことを示しています(その分お金が出ていった)。

②の「証券投資」は、株式・債券などへの投資の収支が計上されます。これが03月急にマイナスに転じ「-8.4億ドル」となりました。つまり、海外から韓国の株式・債券などに投下される資金の方が多くなったのです(つまり資金流入です)。

③の「デリバティブ」はその名前のとおり「金融派生商品」の取引の収支を計上しますが、これはいつもとても小さな金額で大勢に影響は与えません。

注目は④の「その他投資」です。ここには長期融資、短期融資などお金の貸し借りなどに関する取引が計上されます。03月はこのその他投資の収支が「71.4億ドル」(約7,797億円)にもなっており、つまりその分資産が増えたわけですが、これは資金流出です。

面白いのは、

「その他投資」推移
2020年11月:-20.3億ドル(約-2,216億円)
2020年12月:-105.8億ドル(約-1兆1,548億円)
2021年01月:-47.7億ドル(約-5,206億円)
2021年02月:3.8億ドル(約-415億円)

と、2020年11月~2021年01月に巨額の資金流入が計上されているにもかかわらず(02月は3.8億ドルの資金流出です:念のため)、03月に急にプラスに転じ「71.4億ドル」(約7,797億円)の資金流出になっている点です。

銀行が海外から巨額を借りて……

ちなみにこの2020年11月~2021年02月に、「Deposit-taking corporations, except the central bank」(中央銀行以外の銀行)は、「Short-term loans, Liabilities」(短期融資負債)を108.8億ドル(約1兆1,876億円)も増やしています。つまり、銀行が海外からめっちゃお金を借りたわけです。

03月のその他投資の収支を見ると、

その他投資の資産の部:51.6億ドル
その他投資の負債の部:-19.8億ドル

資産の部で51.6億ドルの資産増(資金流出)、負債の部で-19.8億ドルの資金流出、合わせて71.4億ドルの資金流出となったわけです。

で、さらに細かく見ると、資産の部では「Short-term loans, Assets」(短期融資資産)に「61.1億ドル」(約6,669億円)も計上されています。そのほとんど全てが「Deposit-taking corporations, except the central bank」(中央銀行以外の銀行)のものです。つまり、銀行が海外にお金を融資したのが資金流出の理由というわけです。

今回の金融収支からは、上記のとおり02月まで海外からお金を借り倒していた銀行が、03月に巨額のお金を貸し出すようになったことが見て取れます。

というわけで、韓国の金融収支を見ると資金の流入・流出のどたばたが見られてとても面白いのです。

国際収支統計は外国との取り引きについて、そのいってこいのフローを計上したもので「経常収支」「所得等移転収支」「金融収支」「誤差脱漏」の4つから構成されます。

(柏ケミカル@dcp)

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