景気が悪くなったときには金利を下げてお金の流通量を増やす、というのはまっとうな方策です。しかし、異常な低金利下ではいくらお金の流通量を増やしても効果なしという状況になります。これが「流動性の罠(liquidity trap)」です。
リーマンショックからの回復に長い時間を要したのはこの「流動性の罠」にはまり込んでしまったためです。『さっさと不況を終わらせろ』の中でポール・クルーグマン(Paul Robin Krugman)が流動性の罠について述べた部分を引用してみます。
<<引用ここから>>
(前略)
でも、ここでポイント:金利を押し下げるにも限界がある。具体的には、ゼロ以下には押し下げられない。というのも金利がゼロ近くなれば、お金を他人に貸すよりは自分で抱え込んでいたほうがいいからだ。そして今回の停滞では、FRBがこの「ゼロ下限」にぶち当たるまであまり時間はかからなかった。二〇〇七年から金利を引き下げ始めて、二〇〇八年末にはゼロ金利に達した。残念ながら、ゼロ金利でも低さが足りなかった。住宅バブルはそれほどの被害を引き起こしていたのだ。消費者支出は弱いままだった。住宅はどん底で横ばい。事業投資は低いまま。というのも、売上げが弱いままなのに拡張するわけにもいかないからだ。そして失業は悲惨なほど高いままだった。
そしてこれが流動性の罠だ。ゼロ金利でもまだ高すぎるとこうなる。FRBが経済を流動性で満たし、手持ちのお金を増やすのにまったく費用がかからないのに、それでも全体としての需要はまだ低すぎる状態だ。
(後略)
<<引用ここまで>>
⇒引用元:著:ポール・クルーグマン/訳:山形浩生『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房/文庫版),2015年02月15日発行,p65(原題:『END THIS DEPPRESION NOW!』)
(柏ケミカル@dcp)