「世界的な危機が起こったときは金が安全」なんていわれます。紙幣は紙だったり、硬貨は銅だったりしますので、いざというときは価値の変わらない「金が買われる」というわけです。そこで、金の価格が実際にどのように推移してきたのかを見てみましょう。
実際に金の国際的取引の価格推移はどのようになっているのでしょうか。田中貴金属工業株式会社のホームページに金価格の推移のデータがあります。
ちなみに、田中貴金属工業は、1世紀以上に渡って「金」「プラチナ」などの貴金属の精錬・分析を行い、またその販売に携わってきた会社です。また日本初のLBMA公認溶解検定業者の認定を受けています。
同社ホームページにある「海外ドル建価格 ドル/トロイオンス」をグラフにして見てみましょう。トロイオンスは「31.1034768グラム」です。
■1973年から2014年までの金価格推移(ドル建て:価格はドル/トロイオンス)
このように、全体としては右肩上がりですが、ところどころで急騰、急落の山があることが分かります。
1978年から1980年に向かって急に金価格が高騰しています。これは、
●1978年末から「第二次オイルショック」
●1979年にイラン革命で石油生産の行く末が懸念
●1979年に旧ソ連がアフガンに侵攻
●1980年にイラン・イラク戦争が勃発
という世界的な緊張が背景にあります。その後、1981年に下がりましたが、その水準で金価格はずっと推移しています。1970年代末の危機前の価格にまで戻ることはありませんでした。次に大きな上昇カーブを描く端緒となったのが2001年です。
●2001年にアメリカで同時多発テロが発生
●2003年にイラク戦争
とあって、金価格は急騰していきます。さらに、アメリカ版不動産バブルともいわれる「サブプライムローン」が大きく膨らんでいきます。
●2007年にかけてついにサブプライム問題が顕在化
さらに、
●2008年にアメリカ発のリーマンショックが世界を直撃します。
ここで金価格もいったん急落しますが、すぐに急騰し、そのまま全体的に急カーブを描きながら上がっていきます。2011年に「最高価格」の最高値を記録し、2012年には「平均価格」の最高値を達成。2013年、2014年と下がり、現在は2009-2010年辺りの価格水準となっています。
このように、金価格の推移を見ると、世界的に資産が危うくなると金の需要が高まり、その価格が高くなるというのが分かります。「世界的な危機のときは金」という言葉が今もしっかり生きていると思われます。
*……LBMAは「London Bullion Market Association」の略で「ロンドン貴金属市場協会」のことです。ロンドンの金・銀マーケット参加者による自主規制団体で、その取引の中心的役割を果たしてきました。
⇒データ出典:『田中貴金属工業株式会社』公式サイトの「金価格推移」
(高橋モータース@dcp)