事実上破綻した韓国『双竜自動車』買収の件です。
優先買収先と決定した、韓国の電気バスメーカー『エジソン・モータース』が契約締結にこぎ着けたのですが、事業計画が債権団に認められるのか、また1兆ウォンを超える買収・運営資金をどうやって用意するのか――が焦点となっております。
『エジソン・モータース』は「LBO」※(Leveraged Buy-Out(レバレッジ・バイアウト)の略)を用いて国策銀行『産業銀行』から融資を受けることを想定していたのですが……『産業銀行』の李東杰(イ・ドンゴル)会長が「ふん!」と言わんばかりにこれを一蹴。
ここまでは先にご紹介しました。
李東杰『産業銀行』会長が「LBOは悪い買収方式だ」
2022年01月27日、李東杰(イ・ドンゴル)『産業銀行』会長がオンライン記者懇談会で、『エジソン・モータース』への融資の件で発言されたので、ご紹介します。
韓国メディア『中央日報』によると、『エジソン・モータース』が想定していたLBOについて以下のように述べたとのこと。記事から発言部分を引用します。
(前略)
「最も悪い買収構造の典型である借入買収(LBO)方式と見られる」と批判した。(中略)
李会長は「(『エジソン・モータース』が)融資を受けて事業するというが、これはM&Aの中で最も悪い方式」とし「今後、財務的投資家(FI)が長期的な観点から投資するのか、戦略的投資家(SI)である『エジソン・モータース』が本人資金をどれだけ入れるのかを綿密に見る」
(後略)
LBOは、まだ自分のものではない買収先の資産を担保にするという、何も知らない人が聞いたら驚くような手法なので、李東杰(イ・ドンゴル)会長が批判するのも分からないではありません。しかし、普通に使われる手法であるのも事実です。
先にご紹介したとおり、2006年、『ソフトバンク』はLBOを使って『ボーダフォン』を買収しました。
恐らく、李東杰(イ・ドンゴル)会長が否定的な見解を述べているのは、『エジソン・モータース』が自身の資金を投じる気がないように見えるからでしょう。
『エジソン・モータース』は身銭を切る気がない!
先にご紹介した、(リークされた)『エジソン・モータース』の資金調達プランは以下のようなものでした。
①買収前の有償増資:2,700~3,100億ウォン
②買収後の有償増資:4,900~5,300億ウォン
③資産担保融資など:7,000~8,000億ウォン
小計:1兆4,600億~1兆6,400億ウォン
①②は、『双竜自動車』が新規株式を発行して増資します。発行する新規株式を誰が引き受けるのかは不明(つまり株主割当増資・第三者割当増資・公募増資かは不明)ながら、要は投資家を募るわけで『エジソン・モータース』がお金を出すわけではありません。
③は「LBO」ですから、これまた『エジソン・モータース』の懐が痛むわけではありません。
つまり、『エジソン・モータース』の資金繰りプランというのは、全部自分でお金を出すわけではないのです。人の懐をアテにした資金計画です。身銭を切る気がない、非常に虫のいい計画といえます。
李東杰(イ・ドンゴル)会長の「財務的投資家(FI)が長期的な観点から投資するのか、戦略的投資家(SI)である『エジソン・モータース』が本人資金をどれだけ入れるのかを綿密に見る」という発言はこの点を指していると見えます。
さらに踏み込むなら、李東杰(イ・ドンゴル)会長は「身銭を切る気のないヤツが『双竜自動車』の経営を本気でやるとは思えない」と言っているのではないでしょうか。
さて、『エジソン・モータース』はこの李東杰(イ・ドンゴル)会長をどのように説得するでしょうか。これはMoney1編集部もとても楽しみにしております。
読者の皆さまもぜひご注目ください。
※買収先の企業の企業の資産、キャッシュフローを担保に資金を調達します。『エジソン・モータース』の場合には、買収する『双竜自動車』の工場などの資産を担保にして『産業銀行』から融資を受けるつもりだった。
(吉田ハンチング@dcp)