2022年08月26日(現地時間)アメリカ合衆国で伝統のジャクソンホール会議が開催されました。注目の『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)パウエル議長のキーノートスピーチは、予想されていたよりもタカ派的な内容で、そのため合衆国市場では株価が急落しました。
Money1でもご紹介したとおり、パウエル議長の発言はウォン安を急進させました(チャートは『Investing.com』より引用:週足)。
実は『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁もジャクソンホール会議に参加するために訪米していました。李総裁はパウエル議長のスピーチをどのように聞いたのでしょうか。
韓国メディア『中央日報』が、李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁へのインタビュー取材に成功しています。
記事から注目ポイントを以下に引用します。
(前略)
――パウエル連盟議長が予想よりタカ派的な発言をして市場に衝撃を与えたが。パウエル議長があの程度の言及をすると予想はしていた。
合衆国の株式市場が下落したが、26日(現地時間)の市場の反応は予想した水準だ。
合衆国の消費者物価の上昇率が8%を超えるだけに、当分の間、合衆国は基準金利を上げるだろう。
このような状況で、連銀が曖昧な態度をとって一貫してインフレを抑えていないという批判を受けた。パウエル議長がこのように出ると予想できた。彼の発言で大きくは驚かなかった。
――08月に韓国も基準金利を引き上げ、米韓の基準金利が同じになった。ところが、連銀が09月に50~75bpを追加で引き上げた場合、金利差が拡大する。懸念はないだろうか。
合衆国のインフレ数値を考慮すると、米韓の基準金利の格差があるのは自然な現象だ。
格差が大きくなりすぎて資本移動が現れれば対応策を考慮するだろう。しかし今、ウォンの価値が主要国の通貨に比べてより大きく低くなったものではない。自然な現象だ。過去にも米韓の基準金利の逆転現象が数回あったが、資本流出の面で大きな問題はなかった。
――それでもウォンの価値の急激な下落に対する懸はが大きいが?
インフレに与える影響が大きいので心配するのだ。
市場の一部で懸念するように危機が訪れるのではない。
今、資本が海外に出てくる主な原因の一つは国民年金、個人投資家の海外投資から始まったことだ。
債券市場では資本流出がない。
株式市場で昨年末、今年初めに資本流出があったが、これはその前にあまりにも上がったためだった。
――海外資本の急激な流出は心配しないでいいという意味か?
1997年のIMF危機、2008年の韓国通貨危機とは状況が完全に異なる。
当時はウォンだけが評価を下げて韓国からの資本流出が起きた。
今は韓国は純債権国だ。海外投資をたくさんしているため状況が変わった。円、ユーロに比べてもウォンの切り下げ率は低い。ウォンだけが弱気を見せている状況ではない。
(後略)
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、過去2回のドボン騒動とは訳が違い、今回のウォン安急進は問題がない、と述べています。
理由の一つは「ウォンだけが下げているわけではない」ということ。それによる顕著な資金流出が起きてはいないからだ、と言っています。しかし、資金流出はこれから起こるかもしれません。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「そうはならない」とし、その上で、もし顕著な資金流出が起こったら手を撃つとしているのですが、もしそのような資金流出が起きた場合、『韓国銀行』は止められるでしょうか。
韓国が危機を迎えないもう一つの理由は、韓国は過去2回のドボン騒動と異なり、韓国が純債権国であることを挙げています。
政府・企業・家計を全て含めると確かにそうなのですが、『韓国銀行』が公表している「International Investment Position」(対外資産負債残高:略称「IIP」)の政府対外債権・対外債務を見る限り、とても堅牢とはいえません。
2022年第2四半期 韓国政府(General Government)
対外債権: 444億ドル
対外債務:1,462億ドル
純債権:-1,018億ドル⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「International Investment Position(Q2 2022)」
対外債権は「韓国が外国がら取り立てることができる」金額、対外債務は「外国が韓国から取り立てることができる」金額を示しています。
上掲のとおり、韓国政府は外国から取り立てられる金額の方が多い、純債務政府です。
従って、韓国政府の脆弱性は高いと見なければなりません。いざというときのために外貨準備があるわけですが、読者の皆さまもご存知のとおり、韓国の外貨準備高は中身がスグに使えるものなのかは怪しいといわざるを得ません。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「大丈夫だ」と自信を見せていますが、ジャクソンホール会議を受けての本日以降の市場の判断を見なければならないでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)