中国共産党の英語版御用新聞『Global Times』が興味深い記事を出しています。
「日本と中国はアメリカ合衆国の国債を売却を進めているぜ。ピッチャービビってるよ、ヘイヘイ」という記事です(もちろんヘイヘイは書いていませんが「煽っている」のは確か)。
日本を仲間に入れるのはやめていただきたいのですが、下掲記事でご紹介したとおり、両国が合衆国公債を巨額売却しているのは本当です。
中国としてはこれを「合衆国は信用を失っている」「合衆国の危機」にしたいのです。以下に『Global Times』の同記事から一部を引用します。
(前略)
中国が最近、米国債の保有を削減したのは、主に経済的な理由によるものであり、合衆国経済の問題と二国間の経済貿易関係の変化により、中国は外貨準備の多様化を追求する必要性が高まっています。はっきりさせておきたいのは、中国が米国債の保有を減らしたとしても、米国債が依然として中国の外貨準備の重要な部分であるという事実は変わらないということです。
中国は依然として世界第2位の米国以外の国債保有国です。
なぜなら、米ドルは依然として貿易決済のための世界で最も重要な通貨であり、変わりやすい市場の中で安全を求める投資家にとって安全な避難所だからです。
その上、合衆国のソブリン債は最高で最も安定した信用格付けを持っています。
しかし、今日、これらの要因は変化しています。
まず第一に、合衆国の債務の規模は過去最高を更新し続けており、債務不履行の可能性が高まっています。
議会予算局は水曜日、現在の31.4兆ドルの借入上限が引き上げられるか、停止されない限り、合衆国財務省は07月から09月の間に全ての請求書を支払う能力を使い果たすだろうと述べた。
(後略)⇒参照・引用元:『Global Times』「米国経済、債務は、他の国が準備金を多様化しなければならないことを示唆します」
中国が合衆国公債の保有額を小さくしている理由を「中国の経済的理由による」としていますが、具体的に何が原因かは書いていません。「ドルが不足しているのですか?」と聞きたいところですが、これには答えないでしょう。
また「二国間の関係により」外貨準備の多様性を追及しなければならない――としています。
これなどは正直な告白というべきで、台湾侵攻などで合衆国との対立が決定的になったら、合衆国公債などナノ秒で使えなくなりますから、そんな事態はご免だというわけです。
ウクライナ侵攻で「ロシアが外貨準備にアクセスできなくなった」のを念頭に置いているのは、いうまでもありません。合衆国が極力手出しできないようなポートフォリオに組み換えているのです。
かといって、一帯一路で入手できた発展途上国の港やダムなどを外貨資産に組み入れても、緊急時にはなんの役にも立たないので無駄です。中国は中国で、合衆国公債を売却するのはいいとしても、代わりに何で持つ?が問題です。
日本国債を買ってはみましたが、日本は自由主義陣営国にして合衆国の忠勇なる同盟国です。EUにしても似たようなもので、もし中国が暴発したらスグに合衆国と一緒になって中国の資産を凍結するでしょう。では、中国は何で外貨資産を持てばいいのでしょうか。
合衆国が困っているのではなく、むしと中国が選択肢がなくて困ってるともいえるのです。
また、合衆国の債務上限問題で「ヘイヘイ、アメリカは困ってるよ」と書いていますが、これは毎度おなじみの話で、これで合衆国がドボンになるなどとは誰も考えていません。
以下はドルの強さを示す「DXY」のチャートですが……(チャートは『Investing.com』より引用)。
上掲のとおり、一時期のドル一強は収まったとはいえ、また徐々にドルは強まってきています。投資家の皆さんが本当に合衆国がドボン騒動を起こすなどと考えているのなら、ドルは弱まっていなければいけませんが……そうはなっておりません。
通貨主権が最強の合衆国は、残念なことに中国の揶揄ぐらいでは困ったことにはならないのです。むしろ中国の方が「どうすんのコレ」になってきた、というのが本当です。
世界的に(合衆国・『IMF』含めて)「中国のリオープニング」などと期待を高めていますが、そのお店が開かなかったらどうするつもりでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)