韓国の2024年「最低賃金委員会」は、07月12日に「2025年度の最低賃金は1万30ウォン」と決め、やっと閉幕しました。
毎年のことながら、テッペン越え、日付けをまたいでの会議となり、経営者側委員、労働者側委員、公益委員の全員がヘトヘトになるものでした。
雇用労働部傘下の「最低賃金審議委員会」として始まり(1988年に最低賃金制度が施行)、2000年に「最低賃金委員会」と看板を換えて現在に至っています。
そろそろこの審議体も限界じゃないか――という話が出ています。韓国メディア『韓国経済』の記事では、最低賃金委員会の委員ですらシステムの限界だと話しているとして、以下のように書いています。
(前略)
イ・ジャイン最低賃金委員長とクォン・スンウォン最低賃金委員会幹事は12日未明、最低賃金関連ブリーフィングで、「意思決定システム自体が限界に達している」
とし、
「最低賃金決定体系がこのままではいけない」
と話した。
ある中小企業の最高経営責任者(CEO)は「現行制度の下では、今でも守るのが難しい最低賃金を毎年少しずつ上げることになるだろう」と話した。
ミョン・ミョンソン大韓産業安全協会長は「政府が客観的な最低賃金決定基準を設け、独立委員会や専門家グループが最低賃金を決定できるように制度を見直すべきだ」と述べた。
委員会を設立して話し合い、最後に投票し、多数の意見を決定とする。公平なシステムに見えますが、多数の出した結論が正しいとは限らない――のです。
このままでは、韓国の最低賃金はずっと右肩上がりを続けるでしょう。それが韓国の経済状況に即したものなのかどうかは、問われなければなりません。
経済が右肩上がりで、そもそも実体として賃金が上がっているのなら、最低賃金を上げても問題はないのです。
しかし、韓国は(政府やメディアがいかに騒ごうとも)すでに低成長時代に入っており、やがて(スグに)ゼロ成長時代に入ります。
そのような状態で最低賃金をいつまでも、どこまでも上げていくことなどできません。
韓国の最低賃金は高い!
賃金の水準を見る指標に「中位所得に対する最低賃金比率」があります。これは、その国の最低賃金が中位所得層の所得の何パーセントに当たるのか――を示すものです。
例えば、中位所得者の所得が100万円だとして、最低賃金が50万円であれば「中位所得に対する最低賃金比率」は50%になります。この比率が高ければ高いほど、その国の中位所得者の所得は最低賃金に近いということになります。
つまり、比率が高いと中位所得者は最低賃金に近い水準で働いていることになります。逆にいえば、その国の最低賃金水準が高いことになるわけです。
韓国の場合は、2023年時点で「中位所得に対する最低賃金比率」は「65.8%」もあります。G7各国の平均は「52.0%」です。
1人当たりの名目GNI(国民総所得)のランキングで見ると、韓国は35位です(データ出典:『世界銀行』/2022年)。韓国はG7各国と比較して所得は少ないのに、最低賃金は高い――ということになるのです。
先にご紹介したとおり、最低賃金が上がったら廃業だ、とする小商工人が12%もいました。
実際に廃業するかどうかは分かりませんが、実態として小商工人が追い込まれているのは確かです。宿泊・飲食業など一部の業種で最低賃金を守れない割合が「40%」という数字もあります。
決めても守ることができないのであれば意味はありません。
つまりもう限界なのです。韓国の最低賃金はどこまで上昇するでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)