毎年おなじみですが、韓国では来年度の最低賃金を決める季節になっています。
↑最低賃金の金額は左軸で単位はウォン、最低賃金の対前年比増減は右軸でパーセントです。
前大統領の文在寅さんが公約として「最低賃金:1万ウォン」を掲げたのですが、これは果たされませんでした。
もう何度だっていいますが、「所得主導経済」という妄想に取りつかれたアンポンタンの文在寅さんは、大統領に就任した直後に(2018年の)最低賃金を16.4%も上げるという離れ業をやってのけました。
しかし、これによって韓国の雇用情勢はガタガタになりました。雇用が大幅に縮小。
最低賃金アップを許容できる大企業はともかく、中小企業、自営業者が耐えられずに人を雇うのを諦めたのです。
さすがに韓国内でも「あの大統領ばっかじゃねーの」という批判が上がり、以降は最低賃金の上昇幅も抑えられたのです(2020年にコロナ禍がきたことで韓国内が不景気になり、とてもではないですが最低賃金を上げられるような状況ではなかったことも影響しました)。
小商工人の悲鳴「最低賃金が上がったら事業をやめる」
ぼんくらを絵に描いたようだった文在寅から尹錫悦(ユン・ソギョル)に大統領が変わりましたが、最低賃金は上昇を続け、「2024年度:9,860ウォン」まできました。
――で来年度ですが、最低賃金委員会は会合を続けています(11日開催が第3次全体会議)。
↑最低賃金委員会での経営者側(左)、労働者側(右)の様子。同委員会ではだいたいこういう表情になります(笑)。
2024年06月11日、『小商工人連合会』は「最低賃金引き上げ小商工人影響実態調査報告書」を公表しました。
これによると小商工人(簡単にいえば個人事業主です)の98.5%が「最低賃金を引き下げ、あるいは凍結しなければらない」回答しています(引き下げ:64.9%/凍結:33.6%)。
「最低賃金を引き上げなければならない」と回答したのはわずか「1.5%」だけでした。
小商工人の皆さんとしては人件費が上がるのは困るので、当然このような結果になるでしょう。
考えなければいけないのは、現在韓国は非常な不景気な状態にあるという点です。
上記の報告書では、小商工人の皆さんは、もし最低賃金が引き上げられたら、以下のように対応すると回答しています。
新規採用縮小:59.0%
既存人員の減員:47.4%
人員の労働時間短縮:42.3%
事業終了:12.0%
営業時間の短縮:9.7%
製品・サービス価格の値上げ:7.3%
※複数回答可
最低賃金委員会への圧力を掛ける意味もあるのでしょうが、最低賃金が上がったら「事業をやめてやる」という個人事業主が12.0%もいらしゃいます。
2025年度は最低賃金はどうなるでしょうか。ご注目ください。
※韓国の最低賃金を決定する仕組みについては以下をご覧ください。
韓国では、最低賃金は『最低賃金委員会』で決定されます。この委員会は、
・使用者(経営者)側の委員:9人
・労働者側の委員:9人
・公益委員:9人
・特別委員:3人
(企画財政部・雇用労働部・中小ベンチャー企業部の局長級公務員)
計:30人
で構成されています。
ただし、政府側の特別委員には議決権がありません。多数決を取る場合には、特別委員を除く27人の投票で決します。
審議要請を受けた日から90日後の06月末まで2025年度最低賃金を議決し、雇用労働部長官に提出しなければなりません。
雇用部は異議申し立て手続きを経た後、08月05日までに最終決定して告示することになります。
(吉田ハンチング@dcp)