韓国「米国に後頭部を殴られた」

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2025年09月04日(現地時間)『現代自動車』『LGエネルギーソリューション』の合弁会社の工場建設現場で、合衆国当局がカチコミ捜査を行い、475人を拘束。

韓国政府の公表によれば、300人余の韓国人が逮捕されました。

日本にも「縄付き」という言葉がありますが、まるでそれを体現するかのような姿で――逮捕された人は手錠をかけられ、腰を鎖で繋げられて拘禁施設へ移送となりました。


↑ジョージア州Folkston(フォークストン)にある拘禁施設に入るバス。逮捕者を移送しているものと思われます。

米国「大半が退去命令を無視して拘束された者」

今回の事件について、2025年09月08日、United States Homeland Security Secretary(合衆国土安全保障省)のKristi Noem(クリスティー・ノーム)長官は、ファイブ・アイズの会合でイギリス・ロンドンを訪問、記者からの質問に対して、

「これは、合衆国に来れば“ゲームのルール”が何であるかを理解できるのだと、すべての企業に安心してもらうための大きな機会です」

「われわれは、合衆国に来てわが経済を助け、人々を雇用したいと望むすべての企業に対して、合衆国市民を雇い、そしてわが国の法律に従い、正しいやり方でここで働こうとする人々を連れてくることを奨励しています」

拘束された韓国人は、大半が退去命令を無視して拘束された者であり、送還されるだろう」

――と述べています。

ノーム長官の発言からすると、(まだ逮捕者について詳細の情報は出ていませんが)ビザが切れるなどして退去命令が出ていたのに、合衆国にとどまり続けた韓国人が多い――ようです。

今回の件で韓国では「合衆国に投資しているのに韓国人を逮捕するとはけしからん」と反発の声が大きくなっています。

韓国お得意の「合衆国に後頭部を殴られた」――です。

しかし、合衆国からすれば「不法就労は駄目だろ」という当然の対応です。

韓国企業にも同情すべき点はあります。

米国ビザは取得が困難になっている! だから違法でも……という話

正規にビザを取ろうとしても取得が難しいのです。

「H-1B」は2026会計年度の抽選でも約33.6万の有効登録に対し選出は約12万しかありません。申し込んでも多数が枠外になります。

これ以前も25〜30%台の選出率で、需要>供給の構図は変わりません。抽選を抜けても請願審査・在外公館面接と関門が続くため、計画通りのアサインはとても難しいのです。

H-1B ビザ(専門職就労ビザ)は学士号以上(または同等の専門知識)を要する職種に就く外国人を対象にし、典型例はITエンジニア、研究職、金融アナリストなどです。

B-1ビザ(短期商用目的)」というのもありますが、合衆国での会議参加、商談、契約交渉、展示会、技術研修の受講などの「ビジネス活動」を対象にしており(通常は最長6カ月)、就労禁止(合衆国内の企業で働いたり、報酬を得る行為は不可)、工場や建設現場での「作業」や「オペレーション」は違反になります。

韓国、日本、欧州主要国など40カ国が参加しており、90日以内の短期渡航(観光・商用)であればビザを取得せずに合衆国に入国できる制度「VWP/ESTA(ビザ免除プログラム)」もありますが、これは就労不可です。

会議・商談・研修受講は「可」ですが、現場作業や報酬を伴う業務は「不可」です。

今回の事件では「B1」「ESTA」を利用して入国し、現場「作業」を行っていた者が多かった――という情報が出ています。

これは完全にアウトですが、『現代自動車』や『LGエネルギーソリューション』、またその下請け企業からすると「まともにやってもビザが取れないから仕方ないじゃん」となるのは理解できなくはありません。

また先にご紹介したとおり、「不法就労は以前から知っており、複数の連邦・地方政府機関が準備を進めてきたカチコミ捜査」を、なぜこの時点で発動したのか――は気になるところです。

合衆国の韓国に対する「しっぺ返し」であるとも考えられます。

韓国外相がマルコ国務長官と会談する?


↑合衆国ジョージア州フォークストンのICE(移民税関取締局)。韓国人300余が収監されています。

本件は韓国内でも大きく報道されており、パク・ユンジュ外交部第1次官が合衆国務省次官と電話でやりとりし「遺憾の意」を表明しました。

つまり正式に「外交的な大事おおごと」になったわけです。

日本語や韓国語、中国語では字面から「残念に思う」「惜しい」といったニュアンスが強いために軽く受け止められがちですが、欧米の外交文脈で “regret” “express regret” は、外交的に大きな意味を持つ表現です。

2025年09月09日時点の情報によると、韓国の外交部部長(長官:外相に相当)である趙顕(チョ・ヒョン)さんが急きょ訪米し、マルコ・ルビオ国務長官と面談する――となっていました。

以下は10日に韓国外交部が出したプレスリリースです。

合衆国ワシントンD.C.を訪問中の趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官は、現地時間09月09日(火)午後、ワシントンD.C.駐在の我が国企業代表らと懇談会を開催し、合衆国当局によるジョージア州の『現代自動車』‐『LGエネルギーソリューション』電池工場に対する取り締まりに関連したビザ問題を含む、我が国企業の苦衷事項と建議事項を聴取した。

LG、現代自動車、ポスコ、サムスン電子、ハンファQセルズ、ハンファディフェンス、SK、大韓航空など、計8つの主要企業駐在事務所および韓国貿易協会(KITA)、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)など経済団体が出席。

まず趙長官は、政府がジョージア州で拘禁されている我が国国民を迅速かつ安全に帰国させ、今後彼らが合衆国に再入国する際に不利益を受けないようにするため、あらゆる努力を最優先で傾注していると強調した。

出席した企業代表らは、今回の事案に関連した政府の迅速かつ積極的な在外国民保護活動に謝意を表する一方で、韓国人専門人材を対象とした別枠ビザ(E-4ビザ)クォータ新設、対米投資企業雇用人員ビザ(E-2ビザ)承認率向上のための努力とともに、短期的には我が国企業社員が米国出張の際に主に発給を受ける短期商用ビザ(B-1ビザ)に関して、米政府の明確なガイドラインを再確認し、現場で適用できるよう韓米両国政府が積極的に協議してほしいと要請した。

特に、合衆国務省のみならず国土安全保障省など関係部署が、今後策定されるガイドラインを同一に適用することが、企業の不確実性を減らし、より積極的な対米投資活動を行ううえで大きな助けになると強調した。

これに対して趙長官は、これまでわが国政府が、

▴韓国人専門人材対象の別枠ビザ(E-4)クォータを新設する「韓国同伴者法(Partner with Korea Act)」立法のための米政府および議会向けアウトリーチ、

▴わが国企業ビザ問題改善のための対米協力、

▴合衆国ビザ申請留意事項・説明会の開催

などを積極的に実施してきたとし、企業人が提起した内容をすでに米側に伝達したと述べるとともに、今後、わが国の対合衆国投資企業の活動が円滑に行われるよう積極的に努力していくと明らかにした。

趙長官はこの懇談会に続き、駐アトランタ総領事館およびジョージア州フォークストン(Folkston)拘禁センター近隣に設置された現地外交部現場対策班とテレビ会議を行い、拘禁されているわが国国民を迅速に帰国させるための準備状況を点検するとともに、彼らが安全に帰国するまで万全を期すよう指示した。

一方、趙長官はわが国の国民拘禁問題に関連し、政府レベルで米国家安全会議(NSC)、国務省、国土安全保障省などを対象に行われている高位級の意思疎通と協議を点検し、必要な措置を指示しメッセージを伝達するなど、多様な争点の迅速な解決を促した。

韓国メディアは「10日には開放されてチャーター機で帰国する」という報道が出ているのですが、これが本当に達成されるのか要注目です。

(吉田ハンチング@dcp)

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