2025年09月26日、韓国大田市儒城区にある「国家情報資源管理院」の電算室が火事になった件です。
行政安全部の次官は記者会見の場で、
「26日金曜日の夜8時15分頃、国家情報資源管理院の無停電電源装置(UPS)バッテリーを地下へ移設する作業中、電源が遮断されたバッテリー1個から火災が発生しました」
――と出火原因を説明していました。
電源を落として作業をしていたのですが、UPSのバッテリーから突然発火というのが「腑に落ちない」という方がいらっしゃるかもしれません。
無停電電源装置(UPS)の「電源を切る」とは、外部との回路接続を遮断しただけであって、電池セルそのものには電気エネルギーが残っています。つまり、外部給電が止まっても「電池自体は依然として発火リスクを抱えている」わけです。
ただし、小型のリチウム電池(ノートPC・スマホなど)ではまれで、通常は「電源オフで発火」というのは異常事態です。
実際に、2022年10月15日には、韓国・城南にある『SK C&Cデータセンター』で火災が発生し、『KAKAO(カカオ)』の主要サービスが長時間停止するという事態に陥りました。
UPS用リチウム電池が発火点と報じられ、UPSのリチウム電池やインバータが燃焼拡大に関与したと説明されました。
興味深いのは、消火が大変に困難だったことです。韓国メディア『朝鮮日報』は以下のように報じています。
(前略)
消防当局は27日午前03時20分ごろ、はしご車を利用して外部のガラス窓と内側の隔壁を壊して煙を排出した。午前06時30分に初期鎮火したが、2時間10分後に再び火の手が上がった。
リチウム電池数百個が層を成して積まれており、電池周辺に設置されたサーバー間の間隔も1.2m余りしかなく、炎が燃え広がり続けた。
火を抑えるには水をかけるか電池を水に浸して冷却する必要がある。
↑電気自動車火災でおなじみの即席プールを作って機器を沈めて鎮火。しかし国家重要情報が収められたサーバーが破壊されることを懸念した消防当局は少量の水しか撒かず、二酸化炭素ガス消火設備などを使用した。
このため再発火と消火が繰り返され、27日午後6時ごろようやく炎は完全に収まった。
火災発生から22時間後だった。
リチウムイオン電池パック384個が全焼した。電池周辺の電算機器740台も損傷を受けた。
(後略)
「バッテリーが古かったんじゃねーのか?」という指摘も出ています。
というのは、「電極の劣化やセパレータ破損により、セル内部でショートが起こると急激に発熱し、熱暴走につながる」からです。
移設作業中にケーブルを誤って外したり、絶縁処理が不十分だと一瞬のスパーク(火花)が発生し、発火の引き金になることがあり得ます。
実際、火災を起こしたバッテリーは2014年08月、情報資源管理院電算室に設置されたもので、製造会社が保証する耐久年限(10年)を1年超過していました。
当該バッテリーは、『LGエネルギーソリューション』が生産し、それを受け取った製造会社2社を経由して納品・設置された――と報じられています。
また、電池は周囲温度が高いと内部反応が加速します。「空調が切れて160℃に達した」と報じられていますので、それ自体が熱暴走の再発を誘発し得ます。
いろいろと「人災」であった可能性が出てきました。「作業ミスがなかったか」など、さらなる調査が必要でしょう。韓国のことなので、人災であっても直りはしないのですが。
(吉田ハンチング@dcp)







