「格付け」におびえる韓国企業・格付けの低下が「資金難」に直結する

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ここにきて韓国メディアで「格付け」についての記事が目立つようになっています。先に、韓国企業が現金確保のために奔走している件についてご紹介しましたが、その中で引いた『朝鮮日報』の記事のタイトルも、

「企業『恐怖の死月』に… 信用格付け下落、誰も社債を買ってくれない」

と「信用格付け」の低下について触れています。

同記事では、韓国の車両メーカー『現代ロテム』について紹介しています。

『現代ロテム』は資金調達のために「転換社債」を発行するという選択をしました。転換社債というのは、「社債」の一種で、簡単にいうと「株式に換えられる社債」です。

面倒くさい人は「これまた企業が借金をするための手段の一つ」と考えていただければ十分です。

転換社債は株式に換えられるため、発行した枚数によってその分経営権が持っていかれるリスクがあります。その企業の経営に口出しできるかどうかは保有する株式の枚数によって決まりますからね。

今回資金調達の方法として「転換社債」の発行に踏み切ったのは異例のこと。そうせざるを得なかったのは「信用格付け」が低くなってしまう見込みのため、と述べています。

以下に元記事から引きます。

(前略)
『現代ロテム』が転換社債の発行というカードを切ったのは、それだけ状況が差し迫っているという話だからだ。

『現代ロテム』が深刻な経営難に陥っている状況なのにコロナ騒動まで重なり、「動脈硬化」現象が激しくなって、会社の信用格付けが「BBB +」に降格されるので、苦肉の策を取ったのである。
(後略)

⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「企業『恐怖の死月』に… 信用格付け下落、誰も社債を買ってくれない」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)

※赤アンダーラインは筆者による(引用内以下同)

また次のような記事もあります。

(前略)
『現代キャピタル』の現在の信用格付けは「Baa1」だ。これはムーディーズの21個の評価のうち、8番目だ。三段階さらに評価が低下すると「投資不適格」の評価となる。
(後略)

⇒参照:『朝鮮日報』「ムーディーズ 『現代キャピタル信用度降格検討』」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)

なぜこのように執拗に「信用格付け」を注視しているかというと、答えは単純で「お金が借りにくくなる」(資金の調達が難しくなる)からです。

「信用格付け」は何のためにある?

ムーディーズ』や『スタンダード&プアーズS&P)』といった信用格付け会社が発表する格付けは、何のためにあるのでしょうか?

『ムーディーズ』は自社の行う「格付け」(レーティング)について以下のように非常に的確に説明してくれています。

格付とは、発行体が金融債務の元本及び利息を償還まで予定通り支払う能力及び意思についてのムーディーズの意見です。

⇒参照:『Moody’s』

なぜこのような「意見」が必要かといえば、投資家にとって必須のものだからです。

「A社の株式に投資してもいいだろうか?」「B社の社債を買ってもいいのだろうか?」「C国の国債に投資しても大丈夫か?」などと投資家が悩んだときに、自分でその金融商品の発行体(企業、団体、組織、国など)についていちいち調べていたら大変です。

その投資の安全性、危険度を、つまりは「投資的確かどうか」を判断する指標があれば便利ですね。『ムーディーズ』はそれを行っているというわけです。

また、「金融債務」を評価することはその企業を評価することに直結しています。なぜなら「B社の社債はきちんと償還される可能性が高い」と判断できるということは、その企業の経営などファンダメンタルズが(少なくともその時点では)良好だからからです。そのため、『ムーディーズ』の格付け評価は企業の評価としても認識されています。

ただし、信用格付け企業・機関の評価が本当に当たっているかどうかは別問題。そのため、『ムーディーズ』もあくまで「(自社の)意見」としているのです。

「信用格付け」の低下は資金難を招く!

本線に戻ります。

ですので、信用格付けの評価が低下することは、資金調達のために社債やCPなどを発行しにくくなることを意味します。

信用の低い社債やCPを買おうという投資家はいませんし、それでも買ってもらおうとするなら、その分「利率」を高め、投資家にとって魅力的なものにしなければならないからです。

韓国企業はムーディーズやS&Pなどの信用格付けが低下することを異常ともいえるほど恐れています。それも当然です。コロナ騒動もあって投資家の投資意欲が薄れているところに、レーティングが低下すればますます投資家は遠のきます。

上掲の「企業『恐怖の死月』に… 信用格付け下落、誰も社債を買ってくれない」という記事内には以下のような韓国企業の嘆きが記載されています。

(前略)
しかし、経済全般に冷たい風が吹き資金市場は凍りついた状態だ。今月社債の発行に踏みきったハナ銀行(信用格付けAA)とポスコグループの系列会社フォースパワー(AA –)は目標額を達成していない。

ある20大グループのCFO(最高財務責任者)は、「超優良と評価されるAAの企業が社債発行の目標額が達成できていないというのは大きな衝撃」「未来を否定的に見て、誰も社債を引き受けようとしていないので、4月危機説はまだ広がるだろう」と述べた。
(後略)

※赤アンダーラインは筆者による

このように、信用格付けの高い企業の社債でも引き受ける投資家はいないのが現状です。さらに信用評価が下げられたら……というわけです。

韓国企業が置かれている状況は非常に厳しいもので、先の記事でもご紹介した「04月に満期を迎える総額『約6兆5,000億ウォン』の社債」を償還できるかは、まさに直近の焦点といえるでしょう。

(柏カミカル@dcp)

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