また関税交渉になっているアメリカ合衆国と韓国ですが、2026年02月11日、韓国の産業通商資源部は非常に興味深いプレスリリースを出しました。
以下に全文を和訳します。
通商交渉本部―USTR、米韓共同説明資料※
非関税分野の履行計画の議論を継続
※’25.11.14に両国が合意したジョイント・ファクトシート(Joint Fact Sheet)産業通商部(長官 金正官(キム·ジョングァン))の呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長は、02月11日(水)09:30~11:00、訪韓中のリック・リック・スウィツァー(Rick Switzer)合衆国の通商代表部(USTR)副代表が率いる米国代表団と会い、米韓首脳間の共同説明資料(Joint Fact Sheet、以下JFS)の非関税分野合意事項に対する履行状況および今後の計画などについて詳細に議論した。
米韓両国は昨年11月、JFSを通じて合衆国産自動車の安全基準同等性認定の上限撤廃、デジタル分野における合衆国企業に対する非差別義務などに合意しており、韓米FTA共同委員会を通じて上記合意事項に対する履行計画を採択することとしている。
呂翰九(ヨ・ハング)本部長は今回の面談において、韓国政府の米韓間の既存合意履行に対する意思を改めて伝達し、デジタルなど非関税分野における進展事項について集中的に協議し、近く米韓FTA共同委の開催を目標に、今後の詳細計画について継続的に協議していくこととした。
呂翰九(ヨ・ハング)本部長は今年初めからグリアUSTR代表と5回にわたって面談を行い、非関税など米韓通商関係の懸案および安定化方策について議論してきた。
呂翰九(ヨ・ハング)本部長は「米韓通商懸案を安定的に管理するため、今後もUSTRとの常時疎通体制を維持していく」との立場を明らかにした。
⇒参照・引用元:『韓国 産業通商資源部』公式サイト「통상교섭본부-USTR, 한-미 공동설명자료*비관세 분야 이행계획 논의 지속」
Rick Switzerとは何者か? ややこしい話
合衆国のUSTRの副代表が韓国に乗り込む事態に進展しています。

Rick Switzer(リック・リック・スウィツァー)さんというのは上掲の人物ですが、プレスリリースにもあるとおり、USTRの副代表で、毎度おなじみグリア代表に次ぐポジションにある人です。
興味深いのは、スウィツァーさんの担当が「通商協定の実施、非関税措置、デジタル通商などの交渉実務」であることです。
読者の皆さまもご存じのとおり、合衆国トランプ政権は、合衆国のデジタルプラットフォーム企業が不当な扱いを受けることに神経を尖らせています。
USTRは、EUや欧州各国の「デジタルサービス税(Digital Services Tax, DST)」に対し、「これは合衆国のサービスプロバイダーに対する差別的・不合理な処置である」と公式に批判し、 報復措置(新たな関税や規制措置)の検討を表明しています。
日本ではあまり話題になりませんが、「デジタルサービス税」というのは、巨大デジタル企業が「利用者のいる国」で得るデジタル収益に課す税――のことです。
ITプラットフォーム企業は多国籍に事業を展開しており、多くのユーザーに利用されることで、さまざまな収益を挙げています。
従来の法人税は「企業の物理的拠点(PE)」がある国で課税する仕組みでした。
しかし、GoogleやMetaのような企業は、現地に大きな拠点がなくても広告や仲介で巨額の収益を得られます。これらに課税させろ――という話なのです。
EU側からすると、
巨大デジタル企業は適切な税を払っていない
利益移転(タックスプランニング:profit shifting)問題がある
(税負担を極小化するために利益を低税率国へ移す行為)
公平な課税が必要
――という立場ですが、これに対して合衆国政府は、
実質的に米国IT企業を狙い撃ち
売上ベース課税は不合理
二重課税の恐れ
――があるとし、報復関税を示唆したことがあるのです。この摩擦の先頭に立って「報復関税」など対抗措置を示唆しているのがUSTRなのです。
そんなUSTRが韓国に乗り込んできました。
「相互関税25%に上げる」の交渉で済まなくなってきた
呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長のカウンターパートとなっているのは、グリア代表ではなく、スウィツァーさんです。より現場に近い、実務交渉担当者です。
つまり、事は「相互関税の大枠」についてなどではなく、より「ややこしい話」になってきたことを意味しています。

先にご紹介した『Coupang(クーパン)』に対する差別的扱い――が影響しているのは間違いありません。
韓国大統領に成りおおせた李在明(イ・ジェミョン)は、合衆国企業『クーパン』に対して「国民に被害を与えれば、とてつもない経済制裁を受ける、下手をすれば会社が潰れる。この考えが浮かぶようにしなければなりません」と嘯いたのです。
個人情報を流出させたとされる『クーパン』を潰れると思うほどの目に遭わせてやれ、という表明に他なりません。
このような発言をUSTRが看過するわけはありません。
――というわけで、事は相互関税だけにとどまらず、韓国による合衆国企業に対する差別的な扱い(合衆国はこれを関税障壁とみなしている)にまで発展してきました。
(吉田ハンチング@dcp)






