2026年05月21日~06月07日の期間、総ストライキを実施するとしていた『サムスン電子』の労働組合。総ストライキ突入寸前、雇用労働部長官が直に調整に乗り出し、労使間で劇的な妥協が行われました。
韓国内でも強欲で餓鬼のような労働組合に対する目が厳しくなった中での、妥結でした。

上掲のように、労使と雇用労働部の長官(中央)の三人が大笑いしていますが、妥結の中身はそんなに喜ぶような内容ではないのです。
どのような条件で妥結したのかをご紹介します。ちょっと長くなりますので、面倒くさい方は次の小見出しまで飛ばしていただいても大丈夫です。
①賃上げ:2026年賃金を6.2%引き上げ
労使は、2026年の賃金を前年比6.2%引き上げることで合意しました。これは通常賃金引き上げと成果給制度を組み合わせた内容です。②半導体(DS)部門向け「特別成果給」新設
妥結では、DS(Device Solutions=半導体)部門に対し、「特別経営成果給(special management performance bonus)」を新設し、労使が合意した業績指標の「10.5%」を原資として配分
することで合意しました。
これは、従来の「超過利益成果給(OPI)」とは別枠です。
③基本インセンティブ1.5%引き上げ → 合計12%規模へ
さらに、
基本インセンティブ(Basic Incentive)を1.5%引き上げ
特別成果給10.5%と合わせ
合計12%規模の成果配分体系とすることで妥結しました。
④支給は「自社株」が中心
非常に特徴的なのがここです。
特別成果給は、現金ではなく、
「税金分のみ現金」
残りは『サムスン電子』の自己株(自社株)――で支給される形式となりました。
つまり、従業員は成果給のかなりの部分を株式で受け取る形です。
⑤一部株式にはロックアップ(売却制限)
支給株式には、
即時売却可能分
1年保有義務
2年保有義務などの区分が設けられ、一部にはロックアップ(売却制限)が課されます。もらってすぐに売却されると困るからです。
これは、
従業員を長期的に会社へつなぎ止める
現金流出を抑える
株主との利害一致を促す――という狙いがあります。
⑥制度は「10年間」維持
労組側は「単年の一時金」で終わることを嫌っていました。
今回の妥結では、
特別成果給制度を10年間維持
することでも合意しています。これは労組にとってかなり大きな成果と受け止められています。
⑦利益基準達成時のみ支給
ただし、無条件支給ではありません。「一定水準以上の営業利益達成時のみ支給」という条件付きです。
『Reuters(ロイター)』の報道では、
2026〜2028年:営業利益200兆ウォン超
2029〜2035年:営業利益100兆ウォン超――などの条件が示されていたとされています。
⑧DS内部で「40:60」で配分
DS部門(半導体事業部)内の配分方式についても合意が成立しました。
40%:DS全体で均等配分
60%:各事業部の実績連動という方式です。
つまり、
メモリー部門
ファウンドリー部門
システムLSI部門などで業績差がそのままに反映されます。
⑨赤字部門は減額対象、ただし1年間猶予
ファウンドリーなど赤字部門には不利な制度ですが、
「赤字部門減額」
ただし最初の1年間は猶予――という形で折り合いました。
⑩労組の「15%要求」は実現せず
当初、労組は、
営業利益の15%を成果給として制度化
上限撤廃
契約への明文化――を要求していました。
しかし最終的には、
10.5%水準
条件付き
株式中心支給
上限完全撤廃ではない――という妥協になりました。
『サムスン電子』の経営陣はばかな妥結をした!
妥結合意が行われ、ストライキは回避されたものの、『サムスン電子』の経営はこの先大丈夫なのか――が問題です。
なぜ土壇場で妥結したのか?――その背景には、
韓国政府の強い圧力
中央労働委員会による仲裁
裁判所による安全維持命令
(半導体工場で損害が発生しないように維持すべき――という命令)
AI半導体需要急増下での生産停止リスク
国家経済への打撃懸念
etc.
――がありました。
実際、外信の『Reuters(ロイター)』までもが、
『サムスン電子』が韓国輸出の約4分の1を占める
ストで世界半導体供給網が揺らぐ可能性
――と危機を指摘する報道を出したほどです。
市場原理から遠ざかる韓国! 近いのは習近平の「共同富裕」
結論からいえば、『サムスン電子』経営側はこんな妥結をするべきではありませんでした。
なぜなら、今回の妥結が単なる「一時的なスト回避」ではなく、
利益連動型成果給を長期制度化した
(営業利益が出ない経営期間でも労働組合は何もしてくれない)
しかも10年間という長期枠組みにした
さらに「半導体好況時には自動的に取り分を要求できる前例」を作った
――という点で大問題です。
何度もご紹介しているとおり、韓国は市場原理が優先されない世界になりつつあります。社会主義・共産主義的な経済というと、言い過ぎかもしれませんが、少なくとも国家介入色の強い「韓国型国家資本主義」へ転落していっております。
いわば「K-国家資本主義」とでもいえる奇怪なものです。
中国の習近平さんが唱える「共同富裕」「習近平が主導する中国型社会主義」と何が違うのでしょうか。奇妙なことに、韓国は自分から中国の国家体制に近づいています。
誠に恐縮ですが、結論はいつもと同じです。韓国ってばかな国だなあ。本当にばかな国だなあ――です。
(吉田ハンチング@dcp)






