2026年05月14・15日で米中首脳会談、晩餐会、昼食会などが行われ、世界的な注目を集めました。
05月15日に、中国外交部が「王毅がメディアに対し、米中首脳会談の状況と共通認識を紹介」というプレスリリースを出しています。
外交部の部長(外務大臣に相当)、王毅さんが記者からの質問に答えたという体になっている文書です。
長い文書ですが、非常に興味深いので以下に全文和訳しておきます。
王毅がメディアに対し、米中首脳会談の状況と共通認識を紹介
2026-05-15 22:05習近平国家主席の招待に応じ、Donald Trump米国大統領は5月13日から15日にかけて中国を国賓訪問した。中国共産党中央政治局委員・外交部長の王毅は15日、メディアに対し中米首脳会談の状況と共通認識を紹介した。
質問❶
中米両国の各界および国際社会は、今回のトランプ米大統領の訪中に高い関心を寄せている。両国首脳会談をどのように評価するか?王毅:
今回の訪問期間中、習近平主席とトランプ大統領は、中米関係および世界の平和と発展に関わる重大問題について、率直かつ踏み込んだ、建設的かつ戦略的な意思疎通を継続して行い、二つの大国の正しい付き合い方を積極的に模索し、その点について一連の共通認識に達した。多くのメディア関係者が指摘している通り、これは歴史的な会談であった。
第一に、これは両国がそれぞれの発展の重要段階に入った時期に行われた重要な会談である。
今年は中国の「第15次五カ年計画」始動の年であり、われわれは高品質発展によって中国式現代化を全面的に推進している。今年はまた、合衆国独立250周年でもある。
この重要な年に、両国首脳が北京で会い、国政運営、中米関係、国際・地域のホットスポット問題について深く意見交換し、対外的に重要なメッセージを発した。
それは、中華民族の偉大な復興の実現と、合衆国を再び偉大にすることは、両立可能であり、相互に成就し合い、世界に利益をもたらし得るということである。
第二に、これは新たな歴史的出発点に立つ米中関係にとって重要な会談である。
今回の会談は、昨年10月の釜山以来、両国首脳による再度の対面会談であり、また合衆国大統領としては9年ぶりの訪中でもあった。
これにより、両国首脳間の良好な相互交流の勢いが継続・強化された。現在、百年に一度の大変局が加速的に進展し、世界は新たな十字路に差しかかっている。
習近平主席は、米中が「トゥキュディデスの罠」を乗り越え、大国関係の新たなモデルを切り開けるのか、世界的課題に協力して対応し、世界により多くの安定性を注入できるのか、両国人民の福祉と人類の前途・運命に目を向け、共に両国関係のより良い未来を切り開けるのか、と強調した。
こうした歴史からの問い、世界からの問い、人民からの問いに直面し、われわれは共に時代への解答を書き上げなければならない。両国首脳が米中関係という巨大船の進路を正しく導き、舵をしっかり取ることは、国際情勢の変化と人類社会の発展に重大かつ深遠な影響を与えるだろう。
第三に、これは両国首脳が深く意思疎通を行い、豊富な成果を達成した重要な会談である。
今回の会談では、正式会談や歓迎晩餐会だけでなく、小規模交流や視察活動も安排され、両国首脳は合計約9時間にわたり交流した。
相互尊重、平和の重視、協力の模索が、会談全体を貫く基調であった。両国首脳は、「中米建設的戦略安定関係」を構築することが最も重要な政治的共通認識であると合意した。
さらに双方は、外交、軍事、経済・貿易、衛生、農業、観光、人文、法執行など各分野でより多くの交流を展開する意向を示し、次段階の両国交流に新たな原動力を注入した。
質問❷
「中米建設的戦略安定関係」という新たな位置付けをどのように理解すべきか?王毅:
会談の中で、両国首脳は「米中建設的戦略安定関係」を両国関係の新たな位置付けとすることで合意し、今後3年間、さらにはそれ以上の期間にわたる米中関係に戦略的指針を与えた。これは両国人民および国際社会から歓迎されている。中国側は次のように考えている。これは、協力を主軸とする積極的安定であるべきであり、交流と協力を通じて絶えず米中関係の強靭性を高めるべきである。
米中は世界第1位と第2位の経済大国として、互いに深く結びついており、どちらも相手を欠くことはできない。
協力すれば双方に利益があり、争えば双方が傷つく。対抗は両国と世界にとって必然的に災難となるが、協力によってこそ、両国と世界に有益な多くの大事業を成し遂げることができる。
これは、節度ある競争による健全な安定であるべきであり、勝者総取りのゼロサムゲームを行ってはならない。
大国間に競争が存在すること自体は不思議ではないが、競争によって米中関係のすべてを定義してはならない。
米中間に競争が存在するとしても、それは相互に学び合う健全な競争であり、互いに追いかけ合う積極的競争であり、ルールを守る公平な競争であるべきだ。競争の目的は、互いにより良い自分自身になることである。
これは、相違が管理可能な常態的安定であるべきであり、ジェットコースターのように激しく上下してはならない。
双方は政策の継続性と安定性を維持すべきであり、特に自ら行った約束を守り、常に歩み寄りながら進み、米中協力への前向きな期待によって、それぞれの発展と国際情勢により多くの確実性を提供しなければならない。
これは、平和を期待できる持続的安定であるべきであり、衝突・対抗、さらには戦争が起きてはならない。
平和共存は米中両国にとって最大公約数であり、中米衝突・対抗の結果は誰にも耐えられない。鍵となるのは、米中三つの共同コミュニケを順守し、互いの社会制度と発展の道を尊重し、相手の核心的利益と重大関心を尊重し、それぞれの発展する権利を尊重することである。
要するに、「米中建設的戦略安定関係」は単なるスローガンではなく、双方が堅持すべき目標であり、共に取るべき行動であるべきだ。
われわれは両国首脳が明確に示した方向に沿って、この新たな位置付けの内実を不断に豊かにし、それを具体的政策と実際の措置へ転化し、中米関係の新たな章を共に切り開かなければならない。
質問❸
今回の会談では、米中高官および各方面の往来推進について、どのような共通認識に達したか?王毅:
米中関係は世界で最も重要かつ最も複雑な二国間関係であり、首脳外交は両国関係の「安定を支える要」である。トランプ大統領就任以来、両国首脳は2回の会談、5回の電話会談、複数回の書簡往来を行い、米中関係の改善と発展に重要な戦略的保障を提供してきた。
また、中米関係は激しい浮き沈みを経ながらも、全体として安定を示している。
今回の会談で、両国首脳は今後も会談、電話、書簡交換などを通じて緊密な連絡を保つことで合意した。
トランプ大統領の招待に応じ、習近平主席は今年秋に米国を国賓訪問する予定である。
双方は共に努力し、両国首脳の交流に向けて周到な準備を行い、適切な雰囲気を醸成し、より多くの成果を積み重ねるべきである。
両国首脳の授権の下、政治・外交ルートは意思疎通を維持し、相違を適切に管理し、実際問題を解決し、相互理解を増進することで、二国間関係の発展を促進してきた。
両国首脳の共通認識に基づき、米中経済・貿易チームは複数回の協議を行い、両国の経済・貿易関係を安定させ、市場予想も安定させた。政治・外交と経済・貿易という二つの主要メカニズムは今後も役割を果たし、協力リストを絶えず拡大し、問題リストを圧縮していく。
両国首脳の共通認識を具体化するには、双方各部門の共同努力が必要である。
今回の会談は、両国の立法機関、地方、工商界、学術界、メディアなど各界の往来強化を力強く後押しするだろう。
双方はまた、2026年のAPEC非公式首脳会議およびG20首脳会議の成功開催を相互に支持することで合意した。
米中双方の各レベルは行動を起こし、両国首脳の共通認識をしっかり実行し、より多くの「目に見える成果」を達成すべきである。
質問❹
今回の会談を通じ、どのように両国の人的交流を促進するのか?王毅:
習近平主席はかつて、「米中関係の希望は人民にあり、基礎は民間にあり、未来は青年にあり、活力は地方にある」と指摘した。今回の会談では、両国首脳とも人的交流促進の重要性に言及した。
習近平主席は特に民間交流の逸話に触れ、55年前、米中が「ピンポン外交」を展開し、中米間で20年以上凍結されていた扉を開き、現代国際関係史上の重大事件となったと指摘した。
トランプ大統領も両国人民交流の歴史を振り返り、合衆国人民と中国人民は相互に欣賞し、相互に尊重しており、友誼は長い歴史を有すると述べた。
中米関係が新段階に入った後、習近平主席は「5年間で5万人の合衆国青少年を中国に招いて交流・学習させる」という重要イニシアチブを提起し、両国各界から熱烈な反響と積極的参加を得ている。
習近平主席は、より多くの合衆国青少年が中国を訪問し、学習することを歓迎すると述べた。
トランプ大統領もまた、中国人留学生が合衆国へ来ることを歓迎すると何度も表明している。このような双方向交流は、若者の視野を広げ、中米関係の未来をより良く形成するだろう。
訪問期間中、両国首脳は共同で天壇を参観し、中華文明における万物との調和、天の時に順応する理念を体感した。
この特別な日程上の趣向は、中米という二つの偉大な国家が、相互理解を深め、人民の友好を促進すべきであることを示している。
過去1年以上の間、米中の立法機関、地方、企業団体の往来は明らかに増加した。
今回、多くの合衆国企業家がトランプ大統領に同行して訪中した。
トランプ大統領は特に彼らを首脳会談の現場へ招き、習近平主席は一人ひとりに対中協力強化を激励し、中国の開放の扉はますます大きく開かれるだけだと強調した。
李強総理は合衆国企業家らと集団会見を行い、参加者は総じて中国市場を高度に重視しており、中国事業を深く耕し、引き続き対中協力を強化したいと表明した。
これは再び、中国が依然として合衆国企業にとって投資の沃土であることを証明した。
総じて言えば、中米人民間の往来と交流を増やすことは、両国首脳の共通認識であり、両国人民の願いでもある。中国側は今後も一貫してこれを奨励・支持し、両国関係の社会的基礎を強固にし、より多くの中米民間友好の物語を書き続けていく。
質問❺
両国首脳会談期間中に台湾問題にも言及があったが、関連状況を紹介できるか?王毅:
今回の会談では、台湾問題は重点議題の一つであった。中国側の立場は極めて明確である。第一に、台湾問題は中国の内政である。
国家の完全統一を実現することは、全中華民族共通の願いであり、中国共産党が揺るぎなく追求する歴史的使命でもある。大陸と台湾は共に一つの中国に属するということは、古来から現在に至る事実であり、台湾海峡の真の現状であり、また第二次世界大戦後の国際秩序の重要な構成部分でもある。
われわれは合衆国側が「一つの中国」原則および中米三つの共同コミュニケを厳格に守り、果たすべき国際義務を履行することを望む。
第二に、台湾問題は中米関係において最も重要な問題であり、一つ動けば全体に影響する。
これを適切に処理できれば、両国関係は全体として安定を維持でき、双方はより多くの精力を互恵協力へ投入できる。処理を誤れば、両国は衝突、さらには対立へ向かい、中米関係全体を極めて危険な状況へ押しやることになる。
中国側は合衆国が実際の行動によって、中米関係の安定発展および台湾海峡の平和と安定を維持することを望む。
第三に、台湾海峡の平和と安定を維持することは、双方にとって最大公約数である。
そして、それを実現する前提は、「台湾独立」を絶対に支持・容認しないことである。
なぜなら、「台湾独立」と台湾海峡の平和は水と火のように相容れないからである。
われわれは会談の中で、合衆国側が中国側の立場を理解し、中国側の関心を重視しており、国際社会と同様に、台湾が独立へ向かうことを認めず、受け入れていないことを感じ取った。
質問❻
会談期間中、双方は経済・貿易分野でどのような成果を達成したか?王毅:
両国首脳は米中経済・貿易関係について深く議論し、両国経済・貿易協力の方向を明確にし、保障を提供した。習近平主席は米中経済・貿易関係の本質は互恵・Win-Winであり、相違と摩擦に直面した際には、対等な協議こそが唯一正しい選択だと強調した。
両国の経済・貿易チームは、全体としてバランスの取れた前向きな成果に達した。
これには、前段階の協議で達成されたすべての共通認識を引き続き実施すること、貿易理事会と投資理事会の設立に同意すること、互いの農産品市場参入に関する懸念を解決すること、相互主義に基づく関税引き下げの枠組みの下で双方向貿易拡大を推進することなどが含まれる。
双方の実務チームは現在も関連細部について協議を続けており、できるだけ早く成果を確定し、共同で実行していく。
質問❼
両国首脳はどのような国際・地域ホットスポット問題について話し合ったか?王毅:
習近平主席とトランプ大統領は、常に国際・地域のホットスポット問題について緊密な意思疎通を維持している。今回の会談期間中も、双方は再び共通の関心問題について深く意見交換した。中東情勢について、習近平主席は中国側の一貫した立場を説明し、武力では問題を解決できず、対話こそが正道であると強調した。
交渉は一朝一夕で成し遂げられるものではないが、対話の扉が開かれた以上、再び閉ざされるべきではない。
中国側は、合衆国とイラン双方が核問題を含む相違と矛盾を引き続き交渉によって解決することを奨励しており、停戦維持を前提として、できるだけ早くホルムズ海峡を再開するよう主張している。
同時に、中国側は海峡問題を解決する根本的道は、恒久的かつ全面的停戦の実現にあると考えている。
中国側はこれまで一貫して和平促進と対話推進に努めており、今後も戦火の早期沈静化と中東地域の平和回復を促進するため、自らの役割を果たし続ける。
ウクライナ危機について、米中双方はいずれもこの戦争の早期終結を望んでおり、それぞれの方法で和平促進と対話推進のために多くの努力を行ってきた。
複雑な問題に簡単な解決方法はなく、和平交渉も一朝一夕では実現しない。
米中双方は今後も意思疎通を維持し、危機の政治的解決のため建設的役割を果たす意向である。
王毅は最後に以下のように強調した。
習近平主席が指摘した通り、米中関係は両国17億以上の人民の福祉を担い、世界80億以上の人民の利益に関わっている。
中国側は合衆国側と共に、首脳会談で達成された重要な共通認識を着実に実行し、「米中建設的戦略安定関係」の構築に向けて、より広い視野とより長期的な視点から米中関係を見つめ、把握し、共に新時代における大国の正しい付き合い方という道を切り開き、両国人民により多くの福祉をもたらし、世界の平和と発展により多くの貢献を行っていきたい。
王毅さんの「中国が依然として合衆国企業にとって投資の沃土であることを証明した」は傑作な回答です。もし本当にそうなら、中国への直接投資はもっと増えているのではないでしょうか。
注目しておきたいのは、
「われわれは会談の中で、合衆国側が中国側の立場を理解し、中国側の関心を重視しており、国際社会と同様に、台湾が独立へ向かうことを認めず、受け入れていないことを感じ取った」
――です。この王毅さんの言葉を拾って日本メディアにも報道が出ましたが、「あんたらのお気持ちやないか」という話です。
「中国側は海峡問題を解決する根本的道は、恒久的かつ全面的停戦の実現にあると考えている」も注目しておきたい発言です。ホルムズ海峡の封鎖問題は、「恒久的かつ全面的停戦」が実現されるまでは、解決されなくても仕方がない――と言ったようにも見えるからです。
何より一番面白いのは「中米建设性战略稳定关系(米中建設的戦略安定関係)」とやらです。
ナニそれ?――という話なのですが、今回の首脳会談で言い出した新語ですが、既存の国際政治学の定着した用語ではなく、中国外交当局が提示した「政治概念」です。
王毅さんは、
合则两利、斗则俱伤
協力すれば双方に利益があり、争えば双方が傷つく
と述べており「協力関係を主軸にしたい」としています。また、
不搞你输我赢的零和博弈
お前が負けて俺が勝つというゼロサムゲームはやるな
――と述べています。つまり中国側は、合衆国による半導体封鎖・対中包囲網・サプライチェーン切断・技術優位維持政策などを、「中国を抑え込む競争」と見ているわけで、要するに「競争はいいが、中国を潰す競争は認めない」というわけです。
ずいぶん虫の良い主張です。
王毅さんによれば、
竞争的目的是为了彼此做更好的自己
競争の目的は、互いにより良い自分になること
――だそうです。これも大笑いですね。合衆国を説得するためのおためごかしの発言です。こんな発言で合衆国が騙されるはずがありません。
(吉田ハンチング@dcp)







