2026年06月07日、韓国産業通商資源部が興味深いプレスリリースを出しました。
以下に全文を和訳します。
イ・ホヒョン気候部第2次官、米韓エネルギー協力協議のため訪米
―「米韓エネルギー・ビジネスフォーラム」開催を通じて官民ビジネスパートナーシップを強化気候エネルギー環境部(長官・金星煥〈キム・ソンファン〉)のイ・ホヒョン第2次官は、06月08日(月)から06月10日(水)まで(現地時間)、アメリカ合衆国ワシントンD.C.を訪問する。
今回の訪米は、米韓原子力協定締結70周年を迎え、両国の原子力同盟をより強固なものとする一方、人工知能(AI)時代における電力需要の急増など急変するエネルギー環境に対応して、米韓間のエネルギー安全保障協力を強化し、エネルギー分野における官民ビジネスの協力関係を拡大するために設けられたものである。
イ次官は訪米初日(韓国時間06月09日午前)、米韓原子力協定70周年記念カンファレンスに出席し、この70年間にわたり両国が築いてきた原子力同盟の成果を評価するとともに、次世代原子力協力の方向性について議論する予定である。
翌日には、アトランティック・カウンシル・グローバル・エネルギーフォーラムに出席し、合衆国エネルギー省の高官および世界のエネルギー企業関係者らと会談するほか、電化時代における電力システム革新とエネルギー安全保障強化策をテーマとして基調講演を行う計画である。
訪問最終日には、米韓エネルギー・ビジネスフォーラムを開催する。両国は2024年04月のエネルギー相会談を契機として、同フォーラムの定例開催に合意しており、今回のフォーラムでは、エネルギー金融・投資、電力網およびエネルギー貯蔵装置(ESS)、エネルギー供給網などの中核分野における実質的な協力方策について重点的に議論する予定である。
イ次官は、「今回の訪米を通じて、70年間続いてきた米韓原子力同盟をエネルギー・産業同盟へとさらに一段飛躍させ、両国企業間の活発な投資と交流を基盤として、グローバル・エネルギー市場を共に主導する官民協力モデルを構築していくことを期待している」と述べた。
これは、例の「原子力潜水艦を韓国で建造する」案件に絡んだ話です。
誤魔化しているつもりなのかもしれませんが、プレスリリースに原子力潜水艦の件は一語も出てきません。しかし、だからこそ韓国側の「企み」が透けて見えます。
韓国が原子力潜水艦を実際に建造・保有するには、主に以下のようなハードルがあります。
1.米韓原子力協定・合衆国の法によるハードル
現行の米韓原子力協定の下では、韓国は使用済み核燃料の再処理や、軍事目的のウラン濃縮を自由にはできません。韓国は現行協定上、使用済み燃料の再処理や軍事目的のウラン濃縮が認められておりません。
さらに韓国外交部の報道官が濃縮・再処理拡大問題は既存の原子力協定改定に関係するが、原子力潜水艦は「核エネルギーの軍事利用」に関わるため、合衆国のエネルギー法上、別途の合意が必要だ――と説明しているのです。
2.核燃料の調達・管理のハードル
韓国政府は原潜燃料として低濃縮ウランを使う方針を示しています。韓国電子政府のプレスリリースでは、安圭伯(アン・ギュベク)国防部長官が「米国と緊密に意思疎通し、低濃縮ウランの確保および管理過程全般で核不拡散義務を誠実に履行する」としています。
つまり、燃料をどこで濃縮するのか、誰が供給するのか、韓国がどこまで管理できるのか、合衆国がどこまで認めるのかが中核問題です。
3.IAEA保障措置・NPT上のハードル
原子力潜水艦の建造そのものはNPT(核拡散防止条約)で禁止されていません。AUKUS関連の豪州政府資料も、非核兵器国による海軍用原子力推進はNPT上禁止されておらず、IAEA包括的保障措置協定の「第14条」がそのための法的仕組みだと説明しています。ただし、IAEAは、原潜用核物質について「非禁止の軍事活動」に使われる核物質に対する保障措置の扱い、機密情報保護、核物質の転用防止を確認する仕組みが必要だとしています。
4.核不拡散上の政治的ハードル
合衆国の国務省は、濃縮・再処理能力の拡散を制限するのが合衆国の長年の政策であり、123協定では可能な限り高い核不拡散基準を求めると説明しています。また、韓国外相も「原子力協定改定を通じて韓国が独自核武装や潜在的核能力を持とうとする話は、核不拡散の観点から合衆国が絶対に受け入れない」と述べています。
5.原子炉・推進システムの技術ハードル
韓国は民間原発、造船、通常動力潜水艦についての技術を持っていますが、原潜は別物です。必要なのは、潜水艦用の小型原子炉、遮蔽、冷却、静粛性、長期運転、安全停止、事故対応、燃料交換または非交換設計などです。韓国政府は「韓国の民間原子力および造船分野の技術を活用する」としていますが、これは裏を返せば、原潜用に統合・実証しなければならないということです。
先にご紹介したとおり、韓国政府は「低濃縮ウラン使用」「国内開発・建造」「設計・建造・運用・整備・核燃料管理・解体まで全寿命周期で管理」などの原則に掲げたと報じています。
(掲げただけで「できる」とはいっていません/「言うだけタダ」といういつもの韓国政府です)6.建造インフラ・産業基盤のハードル
原潜は通常潜水艦より大型化しやすく、原子炉区画、放射線管理、核安全基準に対応した造船所・整備施設が必要です。韓国政府は国内建造を掲げていますが、建造だけでなく、整備、燃料管理、廃棄、解体まで含めた体制が必要です。韓国政府自身も「全寿命周期」の管理を原則に挙げています(これも言っただけ/もちろん現在そんな能力はありません)。
7.放射性廃棄物・退役処理のハードル
原潜は建造して終わりではありません。使用済み燃料、放射化した原子炉区画、整備時の放射性廃棄物、退役艦の処理が必要です。AUKUSでもオーストラリアはIAEAとの協力、核不拡散、廃棄物管理が大きな論点になっています。韓国政府も「IAEAと協力し、原子力安全と放射性廃棄物を規定通り管理する」と説明しています。
(もちろんこれも言っただけ)8.米韓間の具体的な合意形成
2026年06月時点で、米韓は原子力関連協議を開始しました※が、まだ何も決まっておりません。※2026年06月02~03日に韓国の外交部がアメリカ合衆国国務省と協議を行いました。
――というようなハードルがありますので、単なる政治的承認だけでは足りず、燃料供給、技術移転、保障措置、建造場所、運用管理、核物質管理について、実務合意を詰める必要があります。
これが詰めきれなければ、原潜建造などできません。
最大のハードルは 「潜水艦を造れるか」ではなく、「原潜用核燃料を米国・IAEA・NPT体制の中でどう合法的に確保し、管理するか」 です。韓国が通常潜水艦や造船技術を持っていると強弁しょうが、別次元の問題です。
(吉田ハンチング@dcp)






