世界的な鉄鉱石の値上がりであっちこっちで悲鳴が上がっております。韓国も悲鳴を上げている国の1つです。
上掲は鉄鉱石先物の「なんだこりゃ」なチャートですが、とにかく2020年の05月ごろから値上がりが始まり、05月に入ってトン当たり200ドルを超えて下がらず、推移しています(チャートは『TradingEconomics』より引用)。
鉄筋がないので仕事にならない!
そのため、韓国では悲喜劇が起きており、2021年05月20日、韓国メディア『朝鮮日報』に興味深い記事が出ました。
韓国・大田で中小の建設会社が02月以降工事中断で被害を受けている――という話を紹介しているのですが、理由は鉄筋が現場に到着しないからです。
なぜこんなことになるかというと、工事に必要な鉄筋・H形鋼を工事の発注元である公共機関が供給するという約束だったのに、これが全然守られないのです。
鉄鉱石が高騰したために適正な価格で鉄筋・H形鋼が入手できなくなったからです。
このままではマズイ(いつまでも仕事が終わらない:時間ばかりかかってお金がでていくばかり)と、建設会社自身が鉄筋の確保に乗り出したのですが、大手の建設会社が物量を押さえており、やはり鉄筋を確保できません。
理由は中国にもある!
鉄鉱石の急騰による鉄鋼製品の価格上昇。これに輪をかけているのは中国の事実上の鉄鋼製品の輸出禁止です。コロナ禍からの回復で建設業も回復しているのですが、その国内需要をまかなうため中国は自国で生産した鋼材を輸出しないように計っているのです。
韓国独自の事情として、そもそも近年鉄筋・鋼材の生産量が落ちていたという件があります。また、先に『現代製鉄』の生産ライン(唐津製鉄所)で死者が出る事故がありました。これによって工場の安全稼働を鑑み、生産量が落ちました。最悪のタイミングです。さらに、流通業者が買いだめして価格を釣り上げているのではないか、という疑念も提起されています。
韓国としては、鉄鉱石は急騰するし、中国からの輸入もできないし、国内での入手も困難と、ますます建築現場に鉄筋が来ない――のです。
韓国の建設協会の調査によれば、03-04月にやむなく工事を中段した現場は59カ所におよぶとのこと。このうち43カ所が鉄筋・鋼材不足が原因です。
調査から漏れているところや明確な回答をしていないところも含めれば被害を受けた現場は100カ所に達するのではないかと推測されています。
いくら鉄筋が来ないからといって、もういいや鉄筋抜きで建てちゃえ!とならないでいただきたいものです。
(吉田ハンチング@dcp)