中国のオウンゴールです。
中国は、『滴滴出行(DiDi)』などのIT関連企業、『ニューオリエンタル』などの教育関連企業への締め付けを急きょ発表し、合衆国・中国・香港株式市場でこれら企業の株式が大暴落するという事態となりました。
合衆国市場に上場した中国企業銘柄も中国共産党の政策に揺さぶられる結果となり、投資家に損を生じさせています。そのため、『SEC』(U.S. Securities and Exchange Commissionの略:合衆国証券取引委員会)は2021年07月30日は以下のような公式声明を出しました。
⇒参照・引用元:『合衆国証券取引委員会』公式サイト「Statement on Investor Protection Related to Recent Developments in China」
このステートメントは、『SEC』のGary Gensler(ゲイリー・ゲンスラー)議長の名前で出されたものですが、この中では中国当局の最近の動きに懸念を表明し、合衆国株式市場に上場しようとする中国企業をさらに詳しく審査するとしています。
Money1でもご紹介したとおり、2020年すでに「外国企業責任法」(Holding Foreign Companies Accountable Act)が定められています。
この法律によれば、Public Company Accounting Oversight Board(PCAOB:公開企業会計監視委員会)が3年以内に発行者の公開会計事務所を検査することが認められており、PCAOBが検査できなかった場合には、上場廃止になる可能性があります。
このような前提があるが、今回さらに追加で詳細な審査を行うとしているのです。
つまり、もはや合衆国株式市場は中国企業を信用できない、という表明です。
「背後には中国共産党の政治闘争がある」という説明
中国企業はこれでますます合衆国市場からの資金流入を期待できなくなりました。しかし、なぜ中国共産党はこのような自らの首を締めるようなことをするのでしょうか。
これは特に台湾メディアで散見しますが、背後には中国共産党内部の政治闘争があるという説明がされます。すなわち、現主流派である習近平派閥と旧勢力の暗闘の現れだというのです。
つまり、IT関連の企業などのバックには守旧派である、江沢民元総書記につながる一派がついており、それら企業が上場して資金を得ることが習近平派にとっては許せないのです。
そのために習近平派閥から「個人情報が流出する」「三人子政策にとって教育関連企業は負担を強いる存在だ」「ゲームはアヘンである」といった難癖がつけられ粛正の対象となる、というわけです。
経済的合理性からすれば、中国企業に合衆国から資金が入るのはいいことのはずですが、これを自ら阻害するのは、理由が経済になく、政治にあるから――という説明です。
合理性を無視した決定の背景に政治手動機があるという解説には納得できる部分があるのではないでしょうか。
このような政治的背景をきちんと説明しているのは、日本では恐らくYouTuber妙佛さんのチャネンネル「DEEP MAX」ぐらいではないかと思われます。例えば、以下の動画などを参照してみてください。
今回ご紹介した『SEC』の件は、日本でいえば『ソフトバンクグループ』に大きな影響を与える話です。『ソフトバンクグループ』の「Vision Fund(ビジョンファンド)」は、中国のスタートアップ企業に投資し、これを上場することで巨額の含み益を上げてきました。
しかし、少なくも合衆国市場において、これまでのように中国企業を上場できなくなるとすれば、その戦法の先行きにも陰りが出ることになります。孫正義CEOはどうされるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)