アメリカ合衆国の中国に対する圧力は、経済面に限られているわけではありません。対中「貿易戦争」と呼ばれていますが、Money1でかねてからお伝えしているとおり、これは「考え方の相違」における戦いが激化しているのであって、イデオロギーの戦いともいえるものです。世界唯一のスーパーパワー・合衆国とそれに挑戦しようという中国とのイデオロギーの激突ですから、これはやはり「新冷戦」というべきものなのです。
合衆国では対中国を経済的な面だけではなく、政治面、外交面など包括的に抑え込むための法的な準備を進めています。12月19日にトランプ大統領が署名して法(law)となった「チベット相互入国法」もその例です。
2018年12月31日には「Asia Reassurance Initiative Act of 2018.」(日本語では「アジア再保証イニシアティブ」と訳されます)にトランプ大統領が署名、こちらも正式に法律(law)となりました。この「アジア再保証イニシアティブ」は、
インド太平洋地域における「合衆国の覇権」を再び安定したものにするための規範
を示したものです。目的はあくまでも「合衆国の国益を再保証すること」ですが、日本の安全保障にとっても重要な法律であることは言うまでもありません。日本は合衆国と同盟関係にあり、中国の国際法を無視した行為に安全保障上対抗しなければならないからです。
「アジア再保証イニシアティブ」では、2019年-2023年度について各年度「15億ドル」の予算をつけており、このお金の使用法について「第3項」では下のように述べています。
(3)to conduct regular bilateral and multilateral engagements,particularly with the United States’most highly-capable allies and partners,to meet strategic challenges,including-
特に合衆国にとって最も能力の高い同盟国、およびパートナーと二国間、多国間で定期的な関与を行い、戦略的課題に対処するために使用される。この戦略的課題には以下が含まれる。
(A)certain destabilizing activities of the People’s Republic of China; and
中華人民共和国によるある種の不安定化活動。加えて、
(B)emerging threats, such as the nuclear and ballistic missile programs of the Democratic People’s Republic of Korea;
朝鮮民主主義人民共和国の核および弾道ミサイル計画のような新たな脅威
このように、同法の中にはっきりと中国・北朝鮮の名前を挙げて、その行動を対処するべき戦略的課題と位置づけています。このような法律が成立することからも分かるとおり、合衆国は本気で中国の力を抑え込もうとしているのです。合衆国と中国の戦いはまだ始まったばかり。中国の覇権獲得能力が大きく削がれるまで合衆国の攻勢は続くでしょう。
⇒引用元:『congress.gov』「Asia Reassurance Initiative Act of 2018.」
https://www.congress.gov/bill/115th-congress/senate-bill/2736/text#toc-H8D70EE453E2F41CFA3259C8F8F0FC0EE
(柏ケミカル@dcp)