先にご紹介した、『韓国経済研究院』のジョ・ギョンヨプ経済研究室長にインタビューした『朝鮮日報』の記事。
韓国の家計負債が異常に増加しており、南欧型経済危機の兆しが見える、という内容です。
①②の2回に渡る大部の記事で、②の「文大統領が財政浪費して危機対応安全弁が壊れた」の中にも非常に注目すべき点があるのでご紹介します。
韓国政府の財政が大赤字なので家計負債危機で助けられない
ジョ室長の見立てでは、韓国の家計負債の異常な増加はそもそもが政府の不動産政策の失敗が原因。
結局、韓国政府は不動産価格の急騰を止めることが現在に至るもできませんでした。
自分たちが家を購入できないという危機感を感じた人々が、借金をしてまで不動産・株式・暗号資産などに資金を投入し、この動きが加速して家計の借金が急増したのです。
ジョ室長は、この家計負債が経済危機の引き金になりうるとして、その証拠に2010年に財政危機が明らかになった南欧4カ国(ポルトガル、ギリシャ、スペイン、イタリア)と韓国の民間債務(企業負債と家計負債を足したもの)の増加について指摘しています。
南欧4カ国:民間債務29%増加
2016~2020年
韓国:民間債務33.2%増加
上掲のとおり、韓国の民間債務は財政危機となった南欧4カ国の増加率を抜いています。南欧4カ国「2005~2009年の5年間」に民間債務を激増させ、2010年に危機。
韓国は「2016~2020年の5年間」に民間債務を激増させ、そして……というわけです。
さらにジョ室長が指摘するのは、この家計負債の異常増加に端を発する経済危機が起った場合、韓国政府は助けられるのか?という疑問です。
つまり、経済危機に陥るとお金を回さないといけませんが、韓国の場合、政府・企業・家計の三部門でまだまともなのは「企業」だけなのです。
企業負債:微増
(コロナで増えたものの他国なみ)
家計負債:激増
このような状況で、家計負債危機が爆発した場合、企業はあくまでも民間セクターなので公的な利益よりも自身の利益を守るために動きます。そのため、政府がお金を投入するしかないのですが、そのお金は新たな借金で作るしかありません。
結果、政府負債はさらに増加し財政はまともとは考えられないものになります。
後はおなじみのコースです。「この国はアカン」と判断した外国投資家が資金の引き上げに入り、その結果として通貨安、株安、債券売却が進行し、資本逃避が進行。ドボンに向かうことになります。
つまり、ジョ室長がおっしゃっているのは、「文政権によって政府負債が激増したために、家計負債が爆発した際に使うはずの安全弁が壊れてしまった」ということで、この指摘が記事のタイトルになっているわけです。
ハードカレンシーでないからドボンになる
ジョ室長もまた、おなじみの警告をしています。以下に『朝鮮日報』の記事から一部を引用します。
(前略)
韓国ウォンは米ドルとは異なる――どのように違うのですか?
「例えば、アメリカ合衆国やイギリスなどは、すべて基軸通貨国(原文ママ:筆者注/以下同)です。
これらの国は、債務が多くても国内の経済危機にはつながっていない。その国の国債や通貨の需要が国際金融市場に常にあるので、債務満期が迫ったら、新たにお金を刷ったり、国債を発行して返せば良い。
しかし、韓国のウォンは基軸通貨ではない。だから、国際金融市場で韓国ウォンの需要が常にあるわけではありません」
――それではどのようになるのでしょうか?
「経済危機の時、韓国の財政や民間部門の財務状態が脆弱である点が明らかになれば、韓国債や株式を保有していた外国人投資家が多くを売却し、韓国を離れます。
韓国にドルやユーロが不足し、対外債務を返済できない通貨危機状況が起こり得るのです」
(後略)⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「文大統領が財政浪費して危機対応安全弁が壊れた」
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
というわけでジョ室長の指摘は非常に示唆に富むものです。家計負債の爆弾が破裂して経済危機、通貨危機に発展しないといいのですが。
(吉田ハンチング@dcp)