「またか」と思われるかもしれませんが、ご紹介しておきます。
韓国の国産化推進の成果は微々たるもの
日本に依存している「半導体製造に必要な素材・部品・装備」を国産化しようとしている韓国。
2019年07月に日本が行った輸出管理強化がよほど骨身に染みたようですが、基礎的な研究と改善努力の積み上げは一朝一夕にはできません。
韓国政府は時に成果が上がっていると喧伝しますが、先にご紹介したとおり、韓国『全国経済人連合会』のリポートによれば微々たるものです。
↑「フォトレジスト」「フッ化ポリミイド」の対日依存度は、輸出管理強化前後でほとんど変わっていません⇒参照・引用元:『全国経済人連合会』公式サイト「日本の新政権発足を契機に実益のない日韓経済葛藤終わらせる」
※『全国経済人連合会』のデータをMoney1でグラフ化しました
迂回輸入が奏功して一見日本依存が減ったように見える「フッ化水素」以外の二品、「フォトレジスト」「フッ化ポリミイド」の対日依存度はほとんど変わっていません。
特に「フォトレジスト」は日本依存度が9割を超えたままです。
「フォトレジスト」は感光剤で回路パターンを形成するときに必須となる材料です。感光部分が溶解するポジ型と感光部分が硬化するネガ型があります。現在の最先端微細工程の半導体製造にはEUV(Extreme Ultravioletの略:極端紫外線)のリソグラフィ技術が用いられますが、リソグラフィ装置によって組成を変えるなどの緻密な調整が必要で、かつ不純物が残っていることが許されません。
半導体製造用のフォトレジストをつくるのは非常に難しいのです。
韓国企業が国産化に成功!と報道出る
2021年12月19日、韓国メディア『etnews』に「韓国企業『東進セミケム』(Dongjin Semichem)がフォトレジストの国産化に成功した」という報道が出ました。
記事から一部を以下に引用します。
『東進セミケム』が『サムスン電子』と協力し、半導体超微細工程必須素材である極紫外線(EUV)フォトレジスト(PR)の開発に成功した。
EUV PRは2019年の日本輸出規制3大品目のうちの1つだ。
技術難度が高く全量海外に依存してきた製品を国内企業間コラボレーションとして国産化した。
(後略)⇒参照・引用元:『etnews』「東進セミケム、EUVフォトレジストの国産化」
「国内企業間コラボレーション」と書いているのは、『サムスン電子』がテスト環境を提供したことを指しています。試作品ができてもそれが半導体製造メーカーが求めるクオリティーに達しているかどうかを調べることができなければ、質を高める工夫もできません。韓国にはそのためのテスト機関がなかったのです。
記事では、
(前略)
既存フッ化アルゴン露光機など独自のインフラとベルギー半導体研究所『IMEC(アイメック)』のEUV機器などを活用し、EUV PRの国産化に乗り出した。
(後略)⇒参照・引用元:『etnews』「東進セミケム、EUVフォトレジストの国産化」
と書いています。『IMEC』は1984年ベルギー政府によって設立された世界的に有名な研究機関です。『東進セミケム』の困っている状態に『サムスン電子』が支援の手を差し伸べ、自社のテストラインを提供したというのです。
記事では、『サムスン電子』の信頼性試験を通過した、となっています。
↑『東進セミケム』の公式サイトでは特にプレスリリースは出ていません
『東進セミケム』の株価急騰!
この報道を受けて、『東進セミケム』の株価が急騰しています。以下をご覧ください(チャートは『Investing.com』より引用:日足)
↑注目いただきたいのは直近3日間の動きですが「おかしなヒゲ」が出ています(笑)。
報道のあった12月19日の終値が「3万2,650ウォン」。翌20日にギャップアップして大きく上昇しました。12月21日14:18現在「4万2,950ウォン」ですので、なんと「31.5%」も上がったのです。
『サムスン電子』は実ラインに投入するか?
興味深いのは、『etnews』記事の以下の部分です。
(前略)
『サムスン電子』が直ちに『東進セミケム』のEUV PRを半導体生産ラインに投入するかは未知数だ。通常は信頼性試験を通過すると量産ラインに投入される。このため、一部では早ければ来年上半期の供給可能性を占めている。
EUV PR信頼性試験通過について『サムスン電子』と『東進セミケム』はほとんど話していません。『サムスン電子』関係者は「協力会社の信頼性試験通過については話せない」とし「半導体素材・部品・装備(小部長)多様化のために努力している」と伝えた。
⇒参照・引用元:『etnews』「東進セミケム、EUVフォトレジストの国産化」
製造ラインに何かあると巨額な損失を被るのが半導体企業です。『サムスン電子』はこの「国産品」を実際の製造ラインに投入するでしょうか。
また何か動きがありましたらご紹介します。
(吉田ハンチング@dcp)