『韓国銀行』が恐れる韓国経済危機のシナリオ

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韓国の経済回復は明らかで大丈夫」みたいな話を韓国政府がすることがありますが、本当にそうなのか、です。『韓国銀行』のリポートによると、決して大丈夫じゃない――となります。

韓国の金融不均衡状態

2021年12月23日に『韓国銀行』が公表した「金融安定報告書」によれば、韓国の金融システムは脆弱性が高い状況にあります。先にご紹介したとおり、FVI(金融脆弱性指数)が示すところによれば、韓国がドボン寸前だった2020年03月~06月よりも状況は悪化しています。

『韓国銀行』自身は現在の状況を「金融不均衡状態」と述べています。

これは、家計負債の異常な増加、不動産価格の急騰によって醸成されました。『韓国銀行』の分析は以下のようになっています。

(前略)
韓国の家計負債(家計信用統計基準)は、グローバル金融危機以後、2010年末の843.2兆ウォンから2021年の第3四半期末の1,844.9兆ウォンに倍増し、主要国に比べても負債水準が高く、増加速度も速い。

2021年03月末、韓国の名目GDPに対する家計負債比率(以下「家計負債比率」)は104.9%で、名目GDP(2020年)上位30カ国の主要国平均(63.2%)を大きく上回っており、最近10年間、韓国の家計部者の負債比率増加幅(+31.7%ポイント)も主要国(+6.9%ポイント)より大きいことが分かった。

グローバル金融危機(リーマンショックのこと:筆者注)後、一部の国で住宅価格調整が相当期間進行し、大規模な非自発的デレバリッジを経験したのとは異なり、韓国はこのような状況を経験しないまま家計負債比率が概ね持続的な上昇傾向を示した。

経済規模の拡大に伴い負債の増加は自然な現象といえるが、実物経済に比べて過剰な負債水準(debt overhang)はマクロ経済経済の安定性を阻害する要因と認識されている。

つまり、所得水準に比べて家計負債規模が大きい場合、家計負債とかみ合った住宅価格の下落など、衝撃発生時の民間消費やGDPがより大幅に萎縮し、失業率も上昇するなど、対内外衝撃に脆弱になるリスクが高い(『IMF』2012など)。

過去の家計負債に関連した危機の例を見ると、概して危機直前に家計融資が急増して資産資産バブル崩壊、急激な信用供給の萎縮など、対内外衝撃発生で家計融資の不実化が急速に進み、金融危機が触発された(Reinhart and Rogoff、 2009)。
(後略)

⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「「金融安定報告書」(2021年12月)」

「家計負債とかみ合った住宅価格」「所得に比べて負債が大きすぎる」

『韓国銀行』が指摘しているのは、以下のようなことです。

2010年末に韓国の家計負債は「843.2兆ウォン」でしたが、これが2021年第3四半期「1,844.9兆ウォン」となっています。

リーマンショック以降、主要各国では不動産価格の調整(簡単にいえば下落)が起こり、それは相当期間続いたにも関わらず、韓国では上昇を続けてきました。つまり、家計が借金をして不動産価格を膨らませてきたのです。これが『韓国銀行』のいう「家計負債とかみ合った住宅価格」です。

また、韓国の家計は負債を膨らませて、所得水準と比べてそれは大きなものになっています。

それは負債比率が示しており、名目GDP比率が上位30カ国の平均が「6.9%の増加」にとどまっているのに対して、韓国は「31.7%の増加」となっていることからも明らかです。

ここに衝撃が加わったらどうなるよ?――といっているのです。

南欧型経済危機が参考になるという話

「過去の家計負債に関連した危機の例を見ると、概して危機直前に家計融資が急増して資産資産バブル崩壊、急激な信用供給の萎縮など、対内外衝撃発生で家計融資の不実化が急速に進み、金融危機が触発された」という件は、Money1でも先にご紹介しました。

ポルトガル、ギリシャ、スペイン、イタリアを襲った「南欧型経済危機」です。

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南欧型経済危機
予兆:政府負債と家計負債の急増
2005~2009年:民間負債29%増加)

危機:2010年に到来

民間負債は企業負債と家計負債を足したもの

『韓国銀行』はこの南欧型経済危機を恐れているのです。すでに予兆が現れているかもしれない――といっています。

衝撃が発生すると……

ちなみに、『韓国銀行』はストレステストの結果も同報告書の中に書いています。

(前略)
2021~23年中に金融不均衡が継続的に蓄積された状況で対内外で衝撃が発生する場合を想定してストレステストを実施した結果、第4四半期以降の経済成長率予想分布のテールリスク(tail-risk)が増加(GaR下位10%、-2.2%)、住宅価格(-3.5%)が下落するなど、実体経済の下方リスクが拡大することが分かった。

これにより、家計貸付の不良債権率が0.83%(20年第4四半期)から1.18%に上昇し、不良債権規模も5.4兆ウォンから4.2兆ウォン(成長率衝撃2.2兆ウォン、金融不均衡調整2.0兆ウォン)増加した9.6兆ウォンに達すると推定された。
(後略)

経済成長率が「-2.2%」、住宅価格が「-3.5%」、家計に貸し付けたお金のうち不良債権が9.6兆ウォンに拡大するとしています。衝撃の結果というほかありません。

先にご紹介した「アメリカ合衆国の利上げが見込まれるここ1年が勝負だ」は恐らく正しいのでしょう。『韓国銀行』の報告書もそれを裏付けています。

韓国がうまく切り抜けられるのかにご注目ください。

(吉田ハンチング@dcp)

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