韓国メディアで日本の貿易収支が赤字になっていることを大きく報じています。
例えば『韓国経済』は2022年04月20日に「日本7年ぶりの大規模貿易赤字に日本円130円線に肉薄」という記事を出しています。2021年度の日本の貿易収支が「-5兆3,748億円」となったこと、また『日本経済新聞』の「日本の経常収支は2022年には9兆8,000億円の赤字を出す」という予測を報じています。
日本を心配してくださっているのかもしれませんが、直近、2022年04月の日本の国際収支統計を見てみましょう。以下です。
2022年04月
貿易収支:-6,884億円
サービス収支:-9,653億円
第1次所得収支:2兆3,706億円
第2次所得収支:-2,157億円
経常収支(上記4つの合計):5,011億円
なるほど確かに貿易収支は「-6,884億円」と赤字です。これは韓国と同じで資源価格が急騰しているからです。
財務省のデータによれば、
・原粗油:+5,867億円(+99.3%)
・液化天然ガス:+3,358億円(+151.6%)
・石炭:+3,074億円(+198.9%)
※対前年同期比の増減
⇒データ出典:『日本国 財務省』公式サイト「令和4年4月中 国際収支状況(速報)の概要」
このようにエネルギー資源の輸入金額の増加がすさまじいことになっており、これが貿易収支の大きな赤字の原因となっているのです。
ただし、日本は韓国と違って「貿易収支」が赤字でも経常収支が赤字になることはありません。上掲のとおり、外国への投資からのアガリが「2兆3,706億円」もあるからです。
その上、現在は円安が進行しています。第1次所得収支に計上される「外国から外貨で支払われる投資のアガリ」は、円建てにすると金額は膨らむのです。
韓国は貿易収支が赤転するととたんに国が傾きますが、日本はそうではありません。韓国は日本の貿易収支を心配するヒマがあったら自国の心配をするべきです。
過去2回ドボン騒動はどちらも本質は同じ
なぜ韓国が貿易収支が赤字になると国が傾くのかは非常に明白です。
1997年のアジア通貨危機時と2008~2009年の韓国通貨危機時のドボン騒動の本質は同じです。
まず韓国という国は貿易収支の金額が十分に大きな黒字でないと経常収支が黒字になりません。これは現在も同じで、大前提です。
アジア通貨危機、韓国通貨危機、両方とも経常収支が赤字、あるいは赤転寸前で国を回していました。経常収支が赤字ということは、外貨が基本出ずっぱりになります。この出ずっぱりをファイナンス(穴埋め)しないといけないわけですが、韓国はこれを外国からの融資で埋めていたのです。
以下の記事でご紹介したとおり、アジア通貨危機前には、韓国の財閥系企業がもう莫大な金額を外国から借りていました。このために韓国の対外債務は巨額に膨れ上がり、やがて韓国の信用がなくなって……貸し手がロールオーバーを拒否。
ファイナンスできなくなってバンザイ。
韓国通貨危機の際には、以下の記事でご紹介したとおり、貿易赤字に端を達する負のサイクルが回っていました。このとき、韓国の赤字をファイナンスしていたのは、実は日本円です。いわゆる円キャリートレードというやつです。しかし、円キャリートレードの巻き戻しが始まって……。
やっぱりファイナンスできなくなってバンザイ。
つまり、両方ともドボン騒動の基本構造は同じなのです。
だからこそ、韓国は貿易収支が赤転、あるいは減少して経常収支が赤転しだすと危険なのです。同じように外国からお金を引っ張ってきてそれでファイナンスできたとしても、それが途絶えたとたん……という、かつてあった未来が見えるからです。
(吉田ハンチング@dcp)