韓国は貿易のもうけが減少してくると危険です。減少が赤字になるとホンイキで危なくなります。貿易赤字(貿易収支の赤字)が経常収支の赤字に発展し、これが継続するといよいよいけません。
先の記事で韓国が通貨危機前にどのような状況だったのかをご紹介しましたが、あれは国際収支統計の全体を俯瞰しただけでした。今から統計を見るとどのようなことが読み取れるのかという話でした。
「2008~2009年の韓国通貨危機」の前。実は、韓国は負のサイクルにはまりこんでまさに泥沼状態でした。どんなサイクルにはまりこんでいたのかをご紹介します。
韓国のはまりこんだ泥沼とは
この点については、三橋貴明先生が名著『本当はヤバイ!韓国経済 迫り来る通貨危機再来の恐怖』の中できれいに1枚の図にまとめていらっしゃいます。
筆者がぐだぐだ説明するよりも見ていただいた方が早いので、以下に引用します。
⇒引用元:『本当はヤバイ!韓国経済 迫り来る通貨危機再来の恐怖』三橋貴明,彩図社,2007年07月03日初版,P.8
まず「輸出企業不振」から始めます。輸出企業が不振になって貿易収支が減少します。すると輸出頼みの韓国経済ですから「経常収支赤字化」が起こります。
経常収支が赤字化すると外貨がたまらなくなって「国内の資金不足」に至ります。この資金不足を埋めなければなりません。赤字をファイナンスするために外国から巨額の借金をします。
「短期外債急増」です。これが「資本収支黒字増加」を生みます。
この名著はIMF第5版の時に書かれたものですので、「資本収支黒字増加」となっていますが、現在の第6版に準拠するなら「金融収支の負債の増加」です。
意味するところは「資本収支黒字増加」と同じで「対外負債の増加」。(この当時は短期借入金による)巨額の資金流入です。
韓国への巨額の資金流入が起こると、これをウォンに換えますので、当然「ウォン高」が進行します。
すると、輸出企業の製品に価格戦闘力がなくなり、振り出しの「輸出企業不振」に戻り、また「経常収支赤字化」へと……というわけです。
これが三橋先生が指摘された「通貨危機前に韓国が陥っていた負のサイクル」です。で、その結果先の記事でご紹介したような国際収支統計になっていたというわけです。
これがグルグル回っていたところに、運命の2008年がやってきます。具体的には、サイクルの中の短期借入金が断たれました。外国からの借り入れで国内の資金不足をファイナンスすることができなくなったのです。結果、韓国はアメリカ合衆国、中国、そして日本に助けを求めました。
負のサイクルがワロス曲線を出現させた
当時のドルウォンチャート上でワロス曲線が見られたのは、まさにこのサイクルに関係しています。
巨額の短期借入金がウォンに両替されてウォン高を進行させ、輸出企業が不利になることを恐れた韓国通貨当局がウォン高阻止介入を行っていたからです(あくまでも推定ですが)。
すなわち、チャート上をウォン高方向に下降「\」しては、通貨当局が介入してウォン安方向に上昇「/」するというパターンを繰り返し、そのため「\/\/」が続いたわけです。
当時のワロス曲線がW型で、本当の意味でワロス曲線だったのはこのサイクルが回っていたからといえるのです。
現在は真逆のウォン安阻止で為替介入を行っていると推測されるので、ウォン安方向に上昇「/」すると、通貨当局が介入してウォン高方向に下降「\」しますから、「/\/\」になって、ワロス曲線の命名の由来になった本来の「W」型ではありません。
しかし、現在でも「すわ通貨当局の介入か!」というときには「ワロス曲線」と呼ばれます。ワロス曲線の発見者はやはり偉大です。
貿易収支は国際収支統計で赤字になるのか
――というわけで(どんなつなぎだ)「韓国は貿易収支が減ってくると危ない」ということが、このような過去の事例からも分かります。
翻って現在。
通関ベースながら韓国の貿易収支は2カ月連続の赤字になりました。
2021年12月:-4億5,200万ドル
2022年01月:-48億8,900万ドル
※関税庁、産業通商資源部の公表した「通関ベース」でのデータ
先にご紹介したとおり、上記のうち2021年12月の赤字は予想どおり国際収支統計で黒転しました。
しかし問題は2022年01月の方です。
2022年01月の国際収支統計は03月になって間もなく発表されますが、そこで貿易収支が赤字になったかどうかはかなりの見物なのです。
IMF第6版準拠バージョンの出版を希望
最後に三橋先生の本についてご紹介します。
2007年に初版が刊行されたこの三橋先生の本は、全く経済について知識がない人が読んでも国際収支統計がどのようなものかが理解でき、併せて韓国経済の問題点が分かるという画期的なものでした。
この名著は今でもその輝きを失っておらず、十分に面白くて韓国経済について知りたい人にとっては絶好の入門書といえます。
ただし、前記のとおりこの本が書かれたのは国際収支統計の第5版の時代。現在の第6版とは項目名などが違います。そのため、今読む場合には項目名を置き換えるなどを頭の中で行わなければなりません。
しかし、国際収支統計の本質が変わったわけではありません。
この三橋先生の本が素晴らしい内容であり、韓国経済また国際収支統計の理解を深めてくれることに変わりありません。もし、未読の方がいらっしゃったらぜひご一読ください。
第6版準拠のバージョンが出版され、もっと多くの読者が、特に若い読者が読んでくれることを願ってやみません。
(柏ケミカル@dcp)