韓国の外貨準備高が1カ月で197億ドルも急減しました。
韓国通貨危機の2008年10月(274億ドル減少)以来歴代2番目に大きな減少幅です。
以下が、2022年10月06日『韓国銀行』が公表した「2022年09月末時点での外貨準備高」のデータです。
2022年09月
外貨準備高:4,168億ドル(約60兆2,026億円)※
(前月比:-197億ドル)<<内訳>>
⇒Securities:3,794億ドル(約54兆8,005億円)
(証券類)
前月比:-155億ドル⇒Deposits:142億ドル(約2兆511億円)
(預金)
前月比:-37億ドル⇒SDRs:141億ドル(約2兆366億円)
(IMFのSDR(特別引出権))
前月比:-3億ドル⇒IMF position:42億ドル(約6,067億円)
(IMFリザーブポジション)
前月比:-1億ドル⇒Gold:48億ドル(約6,933億円)
(金)
前月比:増減なし※円換算は2022年10月06日「1ドル=144.44円」のレートで算出
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「Official Foreign Reserves(September 2022)」
当月の注目はなんといっても、Securities(証券類)が155億ドルも減少し、かつ現金たるDeposits(預金)も37億ドル減少したことです。
Securities(証券類)を売却して現金に換えたのであれば、当然Deposits(預金)が増加しなければなりません。理由なく資産が増えたり減ったりしないからです。
ところが、155億ドルの現金が増えなければいけないのに、Deposits(預金)の方も37億ドル減少です。天地で「192億ドル」合いません。
これがどこへ行ったかです。
『韓国銀行』は以下のように説明しています。
ㅇ外国為替市場の変動性緩和措置、その他通貨外貨資産の米ドル換算額の減少、金融機関の外貨預金の減少などによる
⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2022年9月末の為替保有額」
いつもどおりの説明といえばそれまでですが、当月は「外国為替市場の変動性緩和措置」が先頭にきています。為替介入を行ったと明言しており、ウォン安阻止で「ドル売りウォン買い」の金額が大きかったことを示しています。
以下のとおり、09月は大きくウォン安が進行しました(チャートは『Investing.com』より引用:月足)。
始値が「1ドル=1,341.76ウォン」で終値が「1ドル=1,439.96ウォン」ですから、1カ月で7.3%も対ドルでウォンの価値は下がったのです。
これを食い止めるために韓国通貨当局はかなりのドルを溶かしたものと思われます。
――それでもウォン安は止められなかったわけですが。
2022年09月までの直近1年間の外貨準備高の推移を見ると以下のようになります。
韓国の外貨準備高は、2021年10月の「4,692億ドル」をピークに右肩下がりを続け、当月に急減しました。
09月が「4,168億ドル」ですから、ピークから524億ドル減少しました。
「このままウォン安阻止にドルを溶かすと4,000億ドルを切るのではないか」という見方もありそうです。
通貨防衛に必死になると外貨準備高が急減するといういい例でしょう。
ウォン安の泥沼がいつまで続くのか――です。
(吉田ハンチング@dcp)
ちなみに、SDRsが変動していることについて、SDRsを使用しているという説があったりしますが、これは間違っています。
国際収支統計を見ればすぐに分かります。
⇒データ出典:『韓国銀行』公式サイト「ECOS」
上掲は『韓国銀行』が公表している国際収支統計のデータから切り出したものですが、黄色でフォーカスした箇所がSDRsの増減です。
上掲のとおり、毎月「ゼロ」で増減していません。2021年08月だけ「116億4,980万ドル」も増加していますが、これはMoney1でもご紹介したとおり『IMF』から分け前をもらったからです。
SDRsは仮想の通貨のようなもので(暗号資産という意味ではありません)、複数の通貨(ドル、ユーロ、ポンド、円、人民元の5種類)から組成されており、その価値は時価。ドル建てで計算すると変動します。SDRsの割当量が変化していないにもかかわらず、毎月増減があるのはそのためです。