「ECRA」とは? 合衆国が示す新秩序の一つ

日本が韓国への輸出管理を厳格にすることが決まり、韓国が大きく反発していますが、アメリカ合衆国はこれに対して何ら仲裁する様子を見せていません。

合衆国の態度が明らかに日本の輸出管理強化を容認するものであることから、合衆国と日本の間で「話はついていた」と推測する人が多いわけですが、しかしこれは対韓国輸出管理という局面だけで見てはいけません。

合衆国は2018年から「対中国」を念頭に「輸出管理を強化すること」を準備しており、今回の日本の輸出管理強化も合衆国の動きに追随するものと見た方が良く、だからこそ合衆国は「日本と韓国の対立」に首を突っ込もうとしないのです。

合衆国は2018年08月13日、「国防権限法2019」に併せて「ECRA」と「FIRRMA」という法律を制定。この法律は10月から施行されています。

実はこの「ECRA」と「FIRRMA」こそが今回の輸出管理につながる鍵なのです。まずは「ECRA」からご紹介しましょう。

「ECRA」とは?

ECRAは「Export Control Reform Act」の略で、日本語では「輸出管理改革法」と訳されます。

この法律の眼目は、これまでの輸出規制でカバーしきれない「新興・基盤技術」(emerging and foundational technologies)のうち特に合衆国の安全保障に関わるものを輸出規制の対象とすることを定めたことです。

さらに重要なのは、合衆国で研究され、生まれた新興・基盤技術は合衆国の定めた禁輸国(輸出を許可しない国)への輸出、再輸出、禁輸国内移転は認めず、合衆国の許可が必要になるという点です。もちろん許可を申請してもおりるわけはありません。

再輸出、合衆国禁輸国内移転を認めませんので、

合衆国から直にその国に輸出するのを禁止するだけではなく、

・輸出された国から合衆国が定める禁輸国への再輸出
(第三国経由の禁輸国への輸出)

・合衆国が定める禁輸国の国内での技術移転

も駄目です。さらには、

・合衆国国内において外国国籍を持つ者に技術開示すること
・合衆国から輸出された技術を、その国において禁輸国国籍を有するものに技術開示すること

も「みなし輸出」として禁止です。

問題は、ECRAにおいて「新興・基盤技術」とするのは何かという点ですが、これは第1758節の(a)「技術の特定」の(1)通則で以下のように規定されています。

大統領は、以下に該当する「新基本技術を特定する省庁」間の手続きに従い、継続的なプロセスを制定し、商務長官、国防長官、エネルギー省長官、国務長官、および必要に応じて、その他の連邦政府機関の長と調整の上、牽引しなければならない。

(A)米国の国家安全保障にとって重要なもの;並び、
(B)1950年防衛生産法の第721(a)(6)(A)節の(i)から(v)項で規定される基幹技術ではないもの(第1703節により改正)

となっていますのでECRAに具体的な記載はありません。しかし、この法律に対してパブリックコメントを募集した際には、以下のような14の「技術」が例示されました。

バイオテクノロジー
AI・機械学習
測位技術
マイクロプロセッサー
先進コンピューティング
データ分析
量子情報・量子センシング技術
輸送関連技術
付加製造技術(3Dプリンターなど)
ロボティクス
ブレインコンピューターインターフェース
極超音速
先端材料
先進セキュリティ技術

これらの技術は、中国が「中国製造2025」※として国家目標に掲げていたものと見事にまる被りしており、合衆国が中国に合衆国の技術を奪われることと防ぎ、共産党政府の野心を叩きつぶそうとしているのは明らかです。

このように「ECRA」は非常に重要な法律です。見ていると直近の日本政府による対韓国輸出管理と被って見えませんでしょうか。最近の日本政府の動きは合衆国の動きに呼応しているのです。そのために合衆国は韓国からの仲裁依頼に応えないのです。

ECRA自体は特に韓国を指弾するものではありませんし、そもそも韓国の姿勢がどうこういう文脈で語られるものではありません。しかし、韓国という国は、合衆国の「対中国の本気度」を見落としたといえます。合衆国はそのような韓国を決して大事とは思わないのではないでしょうか。

※中国が国家目標とした「中国製造2025」については以下の記事を参照してください。
⇒参照:『Money1』「『中国製造2025』とは?」
https://money1.jp/?p=6088

(柏ケミカル@dcp)