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【全文】米ファクトシート:韓国政府は何を得たのか

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2023年04月26日(現地時間)、アメリカ合衆国のホワイトハウスが、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が訪米し、米韓の協力関係において確認したことについての「Fact Sheet」を出しました。

最大の目玉は、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領が求めていた「核シェアリング」についての合衆国側の回答です。

尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は一時「NATO並の……」という発言を行っていましたが、合衆国側の命題はあくまでも「朝鮮半島の非核化」です。

韓国側の要求が強かったためでしょう、合衆国は「原子力協議会(NCG)」を発足させることにしました。「同盟の核抑止のアプローチに関する協力」について協議しようというもので、合衆国側が根負けした感があります。

ただし、今回のファクトシートにある「合衆国は、朝鮮半島およびその周辺における合衆国の戦略的資産、特に合衆国の核兵器搭載可能なプラットフォームの配備を強化することを約束した」は重要な部分だと思われます。

図上演習の強化、核抑止についての教育、演習を増やすことも盛り込まれていますので、北朝鮮にとっては「ぐぬぬ……」な話です。

北朝鮮は、合衆国と韓国が演習を行うと対抗措置をとらなければならなくなって、困るのです。なぜ困るかというとビンボで油と食料がないからです。

これは、元北朝鮮外交官、太永浩先生の『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』にはっきり書かれています。

本来なら対抗措置として北朝鮮も演習を行いたいのでしょうがビンボでできません。そのため、まだしも安上がりなミサイルを飛ばしているのです。

投資関連の話もでてきます。「お互いに投資協力は行っているよね」となっていますが、挙げられているのは「韓国 ⇒ 合衆国」で、「合衆国 ⇒ 韓国」は、先にご紹介した『Netflix』の25億ドルだけです。

下掲のファクトシート全文を読んでいただければいいのですが、挙げてみると以下のようになっています。

韓国 ⇒ 合衆国
『現代自動車グループ』:54億ドル
『SKイノベーション』:114億ドル
『サムスン電子』:最大250億ドル
『ハンファQセルズ』:25億ドル

合衆国 ⇒ 韓国
『Netflix』:25億ドル

意地悪な見方をすれば、「相互に投資してるぞ」と主張するために何かないのか、と探したら有名企業でそこそこプレスリリースに書けそうなのが『Netflix』しかなかったのかもしれません。

企業の投資先が合衆国になるのは、(韓国メディアは文句をいうかもしれませんが)情勢からいっても仕方がないことです。

当然ですが、韓国メディアが連呼いていた「通貨スワップ」などもちろんありません。

『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁が述べていたとおり、通貨スワップを連呼するのは格好悪いのでやめた方がいいでしょう。

冒頭に「両大統領はグローバルな同盟となったことへの断固たる決意表明を再確認した」 となっています。

この「断固たる決意表明」は「ironclad commitment」で、「ironclad」は「鉄壁の……」といった意味ですので、韓国のよくいう「血盟」に近いニュアンスです。グローバルな同盟として鉄壁の意思を再確認できたので、これは成果と呼べるのではないでしょうか。

以下はファクトシート全文です。

FACT SHEET: Republic of Korea State Visit to the United States

アメリカ合衆国のバイデン大統領は、2023年04月26日、米韓同盟70周年を記念して、大韓民国(韓国)の尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領を国賓として迎えました。

両大統領は、防衛・安全保障関係の深化、経済・商業・環境協力の拡大、宇宙分野を含むデジタル技術協力の拡大、開発援助、教育交流、人的関係の拡大に焦点を当てたグローバルな同盟となったことへの鉄壁の決意を再確認しました。

このファクトシートは、今回の訪韓で確認された政治的理解、および米韓のさらなる協力活動の計画について、その概要を説明しています。

防衛・グローバルセキュリティ協力

バイデン大統領と尹大統領は、拡大抑止の深化を含め、合衆国と韓国の国民と領土の防衛に対する強く共通のコミットメントを確認しました。

原子力協議会(NCG):
合衆国と韓国は、朝鮮民主主義人民共和国(DPRK)の脅威が増大していることを踏まえ、核不測の事態に対する計画の立て方と同盟の核抑止のアプローチに関する協力について協議するため、NCGを発足させた。

NCGは次官補レベルで召集される予定である。

国際的な核不拡散レジームの強化:
合衆国と韓国は、国際的な核不拡散体制の基礎であり、核軍縮と平和利用の基盤である核不拡散条約への永続的なコミットメントを再確認した。

合衆国の戦略的資産の配備をより可視化する:
合衆国は、朝鮮半島およびその周辺における合衆国の戦略的資産、特に合衆国の核兵器搭載可能なプラットフォームの配備を強化することを約束した。

同盟はまた、合同演習の範囲と規模を拡大し、地域の脅威に対処するために、定期的な上級レベルの防衛関与と対話を維持している。

韓国の能力を統合軍司令部と緊密に連携させる:
合衆国と韓国は、韓国の新しく改善された戦略的能力と同盟の統合軍構造との相互接続性を高め、共同計画および実行の努力を強化するために取り組んでいる。

核抑止力に関する韓国の教育・訓練:
核脅威シナリオに対する韓国の備えを強化するため、合衆国は韓国軍関係者が国防総省のコースやトレーニングに参加することを歓迎し、通常と核の統合を含め、同盟が朝鮮半島における核抑止にどう取り組むかに焦点を当てる。

新しい図上演習とシミュレーション:
地域の脅威に対する計画と対応能力を向上させるため、合衆国と韓国は、新しい年次の省庁間および政府間シミュレーションと、合衆国戦略軍との個別の図上演習を開発する。これらは、二国間関係ですでに確立されている同様の活動を補強するものである。

防衛演習への参加を増やす:
戦力の即応性を確保し、統合戦力の態勢を強化するため、合衆国と韓国は、「ULCHI FREEDOM SHIELD(ウルチ・フリーダム・シールド)」「WARRIOR SHIELD(ウォリアー・シールド)」を含む実戦訓練演習を拡大し、現実的で劇場レベルの統合演習システムを回復している。

韓国は、合衆国や日本との三国間演習や多国間演習に参加する予定である。

海上安全保障と防衛に関する地域協力の強化:
地域安全保障協力は、インド太平洋の平和、安定、繁栄の達成に不可欠である。 合衆国と韓国は、地域協力作業部会(RCWG)を利用して、他のインド太平洋地域のパートナーとの海洋領域認識と防衛協力を高めるための努力ラインを強化する。

経済・商業・環境協力

合衆国と韓国は、相互繁栄から商業投資、環境協力から文化的つながりの強化に至るまで、同盟のあらゆる側面を強化する永続的な経済関係を築いてきた。

バイデン大統領と尹大統領は、合衆国と韓国が経済、商業、環境協力の推進に尽力することを確認した。

重要分野への韓米の主要投資:
韓国企業はバイデン政権発足以来、1,000億ドル以上の新規投資を発表し、アメリカで4万人以上の新規雇用を創出する。

2021年から現在までの韓国の投資先のトップはアメリカである。

合衆国は、韓国に対する2番目の主要な投資国である。

これらの歴史的な投資により、半導体、電気自動車、バッテリー、バイオテクノロジー、クリーンエネルギー、クリエイティブコンテンツなどの分野での協力が進んでいる。

『現代自動車グループ』は、ジョージア州ブライアンに54億ドルの電気自動車工場を建設中で、8,100人の雇用を創出する予定だ。

『SKイノベーション』はフォードと共同で、ケンタッキー州グレンデールとテネシー州スタントンに建設中の2つの電気バッテリーパークに114億ドルを投資し、11,000人の雇用を創出する予定である。

テキサス州テイラーに建設中の『サムスン電子』の半導体製造施設は、最大250億ドルの投資となる。

『ハンファQセルズ』は、ジョージア州ダルトンのソーラー工場の拡張に25億ドルを投資し、3,000人の雇用を創出する予定である。

『Netflix』は、韓国のコンテンツに25億ドルを投資している。

インド太平洋経済枠組み(IPEF)におけるより広範な協力:
合衆国と韓国は、IPEFを推進し、4つの柱全てにおいて高水準のコミットメントを達成するために取り組んでいる。

韓国は、今年後半に釜山でIPEFの交渉ラウンドを開催する予定である。

4つの柱は貿易、サプライチェーン、クリーン経済(クリーンエネルギー・脱炭素など)、公正な経済
引用者注

サプライチェーンの安全保障と協力の拡大:
合衆国は、米韓サプライチェーン・商業対話(SCCD)の新たな作業部会を通じて、経済安全保障措置に関する韓国との協力と関与を深めている。

これらの取り組みを通じて、合衆国と韓国は、半導体奨励プログラム、研究イニシアティブ、サプライチェーンリスクに関する協力を強化するとともに、輸出管理に関する協力も強化している。

重要鉱物のサプライチェーンに対する協力の拡大:
韓国政府は、北米における韓国の重要鉱物とバッテリー製造への投資を支援するため、今後5年間に53億ドルを利用できるようにする。

合衆国と韓国は、鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)において主導的な役割を果たすことを含め、より強靭なサプライチェーンの確立を追求する。

E2ビザの迅速な取得:
合衆国と韓国は、韓国の合衆国における重要な投資を支援するため、タイムリーな出張を促進することにコミットしている。

韓国の投資家がスムーズに手続きを行えるよう、ソウルの合衆国大使館は韓国政府および企業と協力してビザ手続きの改善を行い、その結果、E2投資ビザの待ち時間を87日から5日へと大幅に短縮した。

E2ビザとは、合衆国と通商条約(通商航海有効条約)を交わしている国の国民にのみ発給されるもの。投資家駐在員用のビザ。
引用者注

ロシアに対抗するための国際的な取り組みを支援する:
韓国は合衆国と30カ国以上の国際連合に参加し、制裁と輸出規制を通じ、ウクライナ戦争に対するロシアの責任を追及している。

グリーン・シッピングに関する共同努力:
海運部門の脱炭化水素を加速するため、両国は国際海事機関において野心的な温室効果ガス排出削減目標に関する共同声明に署名し、2022年のCOP27で両国が発表した米韓グリーンシッピング回廊の設置を支援し、特にグリーンシッピングに関する技術協力と情報共有協力を拡大することを約束した。

クリーンエネルギーと脱炭素化に関する協力の強化:
合衆国と韓国は、エネルギー政策対話(EPD)の下で閣僚級会合を開催し、経済全体の脱炭素化に関する継続的な協力のための優先分野を特定した。

EPDは政策・技術交流を促進することを目的とし、クリーンエネルギー目標の推進に対する両国のコミットメントを強化するものである。

技術・デジタル・宇宙協力

私たちの同盟は21世紀に向けて装備されており、米韓の協力関係はサイバーセキュリティー、重要技術、新興技術、宇宙を含むまでに発展している。私たちは、効果的なデジタル政策や電気通信政策に関する協力を強化するなど、デジタル協力を増強している。また、安全保障・防衛、商業投資、宇宙開発など、複数の分野にまたがる宇宙協力を拡大する方向で進んでいる。

新たなサイバー戦略的枠組み 両大統領は、国家安全保障ネットワークのサイバーセキュリティーを強化するための組織文化の発展、防御的サイバーセキュリティー能力の向上、構築のための協力に関する協力を制度化した、新たな二国間サイバーセキュリティの枠組みを発表する。

次世代クリティカル&エマージング・テクノロジー対話の開始

合衆国と韓国は、バイオテクノロジーとバイオ製造、バッテリー、半導体、デジタル・量子技術などの分野におけるパートナーシップを拡大するため、両国の国家安全保障顧問が主導し、毎年開催される新しい省庁間技術対話を開始する。

バイオテクノロジーにおける協力の拡大:
合衆国と韓国は、ローレンス・バークレー国立研究所と韓国バイオサイエンス・バイオテクノロジー研究所の間のMOUを通じて、インフラ整備、労働力と人材能力、バイオ経済関連の研究開発を強化する合衆国と韓国の目標を支援するなど、バイオテクノロジーとバイオ製造の協力を拡大している。

宇宙科学と探査における協力:
NASAと科学技術省(MSIT)は、ゴダード宇宙飛行センターにおいて、宇宙科学と探査におけるさらなる協力を模索するための共同声明に署名した。

さらに、NASA、MSIT、および参加機関は、月と火星を探査するための将来の協力可能な領域に関する共同研究を実施する意向である。

宇宙およびサイバー関連の協議の強化:
合衆国と韓国は、民間宇宙対話(CSD)、宇宙安全保障対話(SSD)、宇宙協力ワーキンググループ(SCWG)、サイバー協力ワーキンググループ(CCWG)などの協議機関を通じて、宇宙およびサイバー協力を強化し、相互運用性を向上させることを約束した。

フリーダムオンライン連合を強化する:
韓国はフリーダムオンライン連合と合衆国の取り組みに参加し、インターネットの自由を支援し、オンラインで人権を守ることを目的としたこの連合をさらに強化・拡大する。

ジェンダーに基づくオンライン・ハラスメントと虐待に対処するための提携:
合衆国と韓国は、他の10カ国とマルチステークホルダーアドバイザリーグループおよび運営委員会とともに、ジェンダーに基づくオンラインハラスメントと虐待に関する行動のためのグローバルパートナーシップを通じて、テクノロジーによって促進されるジェンダーに基づく暴力の災いを優先し、理解し、予防し、対処するために引き続き協力する。

開発、教育、人と人とのつながりの拡大

バイデン大統領と尹大統領は、両国の文化的なつながりの素晴らしさ、そして世界中の開発問題に対する協力的な取り組みの高まりを強調した。

両氏は、両国の開発協力関係をさらに強化し、米韓両国民をさらに緊密に結びつけたいという意向を共有した。

ウクライナを支援する 韓国外交部(MOFA)は、USAIDと緊密に連携し、USAIDのウクライナ向け農業復興イニシアチブ(AGRI)に貢献する予定である。 これは、韓国が昨年の1億ドルの拠出に加え、1億3,000万ドルの追加支援を約束したことの一部である。

開発協力の強化:
04月25日、USAIDと韓国国際協力団(KOICA)は、開発協力政策と実施に関する相互理解を深めるための人材交流を支援する3年間のMOUに署名した。

USAIDとKOICAは、フィリピンの海洋ごみモニタリングシステムの支援や、気候変動に強い都市プログラムでの協力を約束した。また、USAIDは2023年に合衆国大使館ソウルに常駐し、ドナーとの連携を強化する予定である。

平和部隊とワールド・フレンズ・コリアのMOUがインド太平洋地域の気候適応を支援:
1966年から1981年にかけて韓国の教育・保健分野で活躍した平和部隊のボランティアを手本に、韓国は独自の海外ボランティアプログラム、ワールド・フレンズ・コリアを開発した。両団体は、インド太平洋地域を中心に気候変動への適応や国内でのボランティア活動を支援するためのMOUを締結している。

新しい教育交流イニシアチブ:
合衆国と韓国は、人文・社会科学および科学・技術・工学・数学(STEM)の分野で、複数年、6000万ドルの新しい教育交流プログラムを実施することを約束した。

このプログラムには、STEM研究に焦点を当てた過去最大のフルブライト大学院プログラムが含まれている。

技術に関する新しい幹部研修プログラムを開発する:
合衆国と韓国は、半導体、AI、量子、バイオテクノロジーなどの重要な新技術について、十分な情報と責任を持った管理者となる次世代のリーダーを育成することに焦点を当てた新しいプログラムを開発することを約束した。

このプログラムは、合衆国、韓国、インド、イギリス、ドイツの公的セクターの中堅リーダーを対象としている。

文化・言語交流の拡大:
両大統領は、「仕事、英語学習、旅行」プログラムへの両国の年間参加者数を2,000人から2,500人に増やすというMOUの更新を歓迎した。

米韓保健協力の深化:
合衆国と韓国は、最先端のがん研究への協力や、人工知能を用いた医療製品の安全な生産に関する情報交換を行うためのMOUを更新した。

合衆国保健福祉省と韓国保健福祉部の協力拡大には、グローバルヘルスセキュリティー、デジタルヘルス、ユニバーサルヘルスカバレッジに関する関与が含まれる。

⇒参照・引用元:『White House』公式サイト「FACT SHEET: Republic of Korea State Visit to the United States」

(吉田ハンチング@dcp)

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