韓国には「脱中国の恩恵」がほとんどない。中国を忌避した資金が韓国に入るわけじゃない

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韓国メディアには不思議な特性があります。

たいていはエヘンプイと自画自賛な記事が多いのですが、時にガックリとうなだれるような「嘆き節」の記事を出すのです。

こういうのも嘆き節の一つかもしれません。2023年08月05日、韓国メディア『毎日経済』と『全国経済人連合会』が共同で、「de-risking(デリスキング)」の資金流入について調べた結果についてを公表しました。

「デリスキング」は「脱中国」「中国外し」の別名ですが、この調査では『UNCTAD』(United Nations Conference on Trade and Developmentの略:国連貿易開発会議)の「外国人投資資金」についてのデータを分析しています。

「中国は外せ」とアメリカ合衆国・中国の対立が激しくなったのは、やはりトランプ大統領(在任:2017~2021年)からです。この調査では、「2011~2016年」と「2017~2022年」の2つの時期を比較。

外国人投資家が中国にどれだけ純投資したのかを比較しています。

以下をご覧ください。

対中国「外国人による純投資額」比較
2011~2016年:1,323億ドル
2017~2022年:679億ドル

これは「M&A」の投資資金、いわゆる「ブラウンフィールド投資」についてのデータですが、米中対立の顕在化および激化となった「2017~2022年」には、純投資額は679億ドルまで減少しています。

「2011~2016年」期と比較して「51.3%」になりました。資金流入額はほぼ半減したのです。

中国リスクが認識されて、「ブラウンフィールド投資」による資金流入は半分になったわけです。では、投資資金はどこに流れたか?――です。

ここが面白い点です。同じ期間では「インド」「シンガポール」に巨額の資金流入がありました。

インド:739億ドル
シンガポール:668億ドル
韓国:206億ドル
台湾:16億ドル

上掲のとおり、韓国への資金流入はそれほどでもありません。この結果に『毎日経済』紙は「他の国に比べて脱中国の『反射利益』は大きくなかった」と総括しています。

また、興味深いのは『韓国輸出入銀行』のデータです。

韓国企業の対中国投資
2011~2016年:228億ドル
2017~2022年:343億ドル

「なぜそんなことに」という結果ですが、中国リスクが認識された「2017~2022年」の方が、対中国投資金額は多いのです。約1.5倍に増加しています。

「それでも中国なのか」と不思議ではないでしょうか。

一応、韓国企業の名誉のために付記しますが、中国の周辺国(インド・ベトナム・シンガポール)など周辺国への投資は、

2011~2016年:183億ドル
2017~2022年:383億ドル

と、約2.1倍に増加しています。中国リスクに蒙昧なわけではありません。

「ブラウンフィールド投資」というのは、現地の既存のものに資金を投入する投資のことです。

現地に新規法人を設立してお金を突っ込むスタイルの投資は「グリーンフィールド投資」といいます。

なぜブラウンフィールドとbrown(茶色)なのかというと、既存のものに投資するので、新規設立のグリーン(green)と比較して、新味がないからです。

(吉田ハンチング@dcp)

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