韓国では「すわ第2の尿素大乱か」と緊張が走っております。中国の海関総署が急遽輸出を止めにかかったからです。
先にご紹介したとおり、韓国の企画財政部は「3カ月分の在庫はある」としているので、2024年02月まではなんとかなりそうです。しかし、中国メディアでは「2024年第1四半期いっぱい」は輸出の制限がかかるのでは――という見方が出ているのです。
第1四半期は03月までですから「1カ月分どうする?」な感じになっており、韓国側は警戒感を強めています。
2023年12月04日、韓国メディアが中国外交部の定例記者ブリーフィングで本件について質問をぶつけたのですが……。以下をご覧ください。
『聯合ニュース』記者:
中国海関総署が韓国への尿素輸出の通関手続きを中止した。韓国政府は、この動きが中国による尿素の輸出を非公式に制限する措置だと考えている。外交部から詳しい情報を紹介してもらえますか?汪文斌:
関連する報道には留意しています。中国と韓国の関係部門はこの件に関して連絡を取り合っています。具体的な状況については、管轄当局に問い合わせてください。
汪文斌さんは、担当部署に聞いてください――と丸投げしました。
では中国の海関総署はなんといっているかというと――実は、いまだに本件についてなんら情報を公開してはいないのです。
一方で、2023年12月04日、中国の商務部と韓国の産業通商資源部が「中韓自由貿易協定」の第5回合同委員会を開催しています(下掲写真)。
中国商務部のプレスリリースによると以下のようになっています。
(前略)
双方は中韓FTAの実施状況を共同で確認し、両国の産業チェーンとサプライチェーンの統合を促進し、両国の経済成長を後押しする同協定の貢献を高く評価した。会談において、双方は、物品貿易、原産地規則、貿易の技術的障壁、経済協力の分野における協定の履行を共同で検討し、国境を越えた電子商取引の物品通関の効率、電子通信機器の認証、一部の農産物のコード化と分類について深く意見を交換した。
双方は、産業チェーンのサプライチェーンにおける協力を深化させ、中韓FTAの質の高い実施を促進し、協定が両国の企業及び国民により良い利益をもたらすよう、交渉の第2段階を加速させるために共同で努力することで合意した。
双方は、中韓FTAの実施と更なるレベルアップについて、両国の研究機関による共同研究を実施することで合意した。
さらに双方は、二国間輸出管理対話メカニズムの構築及び生産-供給チェーンのためのホットラインの設置について意見交換を行い、コンセンサスに達した。
(後略)
この階段で尿素についての話が出ないはずはないのですが、中国側のプレスリリースには出てきません。
代わりに「二国間輸出管理対話メカニズムの構築及び生産-供給チェーンのためのホットラインの設置」について話し合われています。韓国はクリティカルな資源、中間財などで中国依存が高まっていますので、交渉も中国側からかなり押し込まれたものと推測できます。
韓国はFTA(二国間の自由貿易協定)を推進してきました。中国とも締結し、それで大儲けをしてきたのですが、Money1でもご紹介しているとおり、もはや対中国貿易では利益が出せなくなっています。
利益どころ大赤字なのが現状です。上掲のとおり、2023年は(韓国統計庁の通関ベースのデータで)01~11月は1カ月たりとも対中国貿易で黒字になったことはなく、累計「-180億ドル」です。
このままいくと、中国に資金を貢ぐ国として経済を営むことになるやもしれません。せっかく日本が併合して近代を移植してあげたのに、戦後に日本の資金で高度成長を遂げたのに、元の木阿弥ですね。
(吉田ハンチング@dcp)