2024年03月29日、アメリカ合衆国の『米国通商代表部』(UTSR)が「2024年外国貿易障壁評価報告書」(NTEリポート)を発表。このリポートは、合衆国にとって不利益となる貿易障壁を設けている国について詳細に「ココがいかん!」と指摘するものです。
上掲がリポートですが、PDFの元ファイルの59~102ページが「中国」に対する言及で、大部のリポートになっています。ページ数で測るのもナニではありますが、いかに中国が(合衆国の考える)自由貿易に根ざしていないのかの証明です。
合衆国は中国を「主要懸念国」としました。
このリポートは合衆国政府の行動指針になるものである
『米国通商代表部』は「中国の非市場的な政策と慣行」について以下のように書いています。
非市場的な政策と慣行(Non-Market Policies and Practices.)
経済と貿易に対する中国の国家主導の非市場的アプローチは、中国が追求する産業政策を形成し続け、中国企業に不公正な競争上の優位性を提供している。
これには、大規模な財政支援、規制やその他の優遇措置、外国の競争相手に不利になるような公式・非公式の政策や慣行が含まれる。
このような行為は市場を大きく歪め、混乱させており、鉄鋼、アルミニウム、太陽光発電産業などで現在進行中の事態に見られるように、深刻かつ持続的な過剰生産能力につながっている。
中国は先端製造業、ハイテク、その他の主要な経済分野の数多くの産業に重点を置いており、そこでは非市場的手段を通じてのみ達成可能な生産量と市場シェアの目標を設定し、追求している。
米国通商代表部(USTR)は、合衆国の労働者と企業の競争力を守るため、利用可能なあらゆる国内貿易手段を追求する決意であり、志を同じくする同盟国や貿易相手国と緊密に協力し、中国の有害な政策や慣行に対処していく。
端的にいえば、非市場的、すなわち市場の自由な競争に任せるのではなく、中国共産党政府が自分の好きなように介入しまくっとる――と述べているのです。
重要なポイントは、このリポートが合衆国政府の動きを規定するものであることです。
『米国通商代表部』のキャサリン・タイ代表は、以下のように述べています。
「法令では、NTE報告書が貿易および投資に対する重大な障壁を特定し、合衆国政府がそれらの市場を開放するために利用することが規定されている。
例年どおり、USTRは今年のNTE報告書をバイデン-ハリス政権の通商政策ツールキットの一部として活用し、勤勉な合衆国人労働者、農家、牧場主、中小企業、地域社会のために市場を開放する」
「NTE報告書が今年、かつてない注目を集めたのは、私たちがNTE報告書をその法定目的に戻すための措置を講じているからです。
われわれは、わが国を含む各政府が公共の利益のために統治し、合法的な公共政策の理由のために規制する主権的権利を有することを尊重する。
長年にわたり、NTE報告書はその法定目的から逸脱し、主権的な政策権限の有効な行使であるか否かを問わない措置を含むように拡大してきた。
例えば、南アフリカによるアパルトヘイト後の経済をより公平にするための努力、麻薬や爆発物の輸入許可要件、絶滅危惧種の輸入制限などがある。
NTE報告書を慎重に編集し、法令の趣旨に沿うように戻すことで、USTRはこの報告書を、市場機会を拡大し、わが国経済の成長を助けるために対処できる重要な貿易障壁を列挙した、より有用な文書にしようとしている」
タイ代表は、今回のリポートは「合衆国政府がこれから実行する政策」の指針になるためのものだ、と指摘しています。つまり、合衆政府はリポートに指摘された各国の貿易障壁を除くために動く――という宣言です。
目的は「勤勉な合衆国人労働者、農家、牧場主、中小企業、地域社会のために市場を開放する」ことです。
――で、槍玉に上がっているのが上掲のとおり「中国」。
これから中国が保持している貿易障壁を破壊し、市場が解放されるように「ギュウギュウやるよ」な――締め上げる宣言なのです。
中国はさっそく大反発! 厚顔無恥な主張
当然ですが、槍玉に上げられた中国は猛反発しています。以下が中国商務部が出したプレスリリースです。記者からの質問に答えた形になっています。中国には自由の報道などありゃしませんので、こんな格好をつけることなど何の意味もないのですが。
記者からの質問:
03月29日、米国通商代表部(USTR)は「2024年対外貿易障壁評価」を発表し、中国を主要懸念国として挙げた。これに対する中国のコメントは?回答:
中国は、各国の貿易政策が障壁にあたるかどうかは、『WTO』(World Trade Organizationの略:世界貿易機関)のルールに違反しているかどうかで判断すべきだと考えている。合衆国の報告書は、中国の関連政策や慣行が『WTO』のルールに違反していることを証明する証拠を示しておらず、いわゆる「非市場的」な政策や慣行、農産物やデータ政策における障壁を恣意的に非難しているが、中国はこれに断固反対する。
『WTO』に加盟して以来、中国は最大の発展途上国として、常に多国間貿易システムを強固に支持し、ハイレベルな開放を拡大し続け、社会主義市場経済システムと法制度を継続的に改善し、資源配分における市場の決定的な役割を十分に発揮することを主張し、これは国際社会から高く評価されてきた。
これに対し、合衆国側は「合衆国第一主義」を主張し、多国間貿易ルールを無視し、他国に一方的な関税を恣意的に課し、差別的な産業政策を打ち出し、「国家安全保障」を理由に輸出規制や投資制限などの措置を乱用し、対米外資を制限している。
また、企業の政府調達への参加や、公正な競争を妨げる人為的な貿易障壁を数多く設けている。 中国を含む『WTO』加盟国は、このことを強く懸念している。
合衆国は他国に対して虚偽の言いがかりをつけるのをやめ、『WTO』のルールを効果的に遵守し、公正で公平な国際貿易秩序を共同で維持すべきである。
⇒参照・引用元:『中国 商務部』公式サイト「商务部新闻发言人就美国贸易代表办公室发布《2024年外国贸易壁垒评估报告》答记者问」
全くスゴイとしか言いようがありません。
『WTO』に加盟したときにした約束を一切守っていない中国が、主要懸念国に指定されたことについて、『WTO』のルールを堅持し国際社会から高く評価されている――などといっています。
自由貿易に関して中国の状況は『WTO』に加盟したときから逆に悪くなっています。透明性は下がっているのです。市場には国営企業がますます増加し、恣意的に輸出入を止め、外国をいじめの対象にしています。
非科学的な主張を下に、日本からの水産物の輸入を全面的に停止したのは何なのでしょうか? この一事をもってしても『WTO』のルールを守る気がないことは確かです。
もう何度だっていいますが、中国を『WTO』『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)に加盟させたのがそもそもの失敗です。「やがて中国も自由主義経済に移行するだろう」などという甘い考えを持っていた、欧米の皆さんのせいです。
お前らはアジアの国のことなど何も分かっちゃいないんだ――なのです。もちろん、現在も何も理解していません。
(吉田ハンチング@dcp)