ウォン安が進行しており、天井圏での戦いとなっています。
2025年11月24日、韓国の企画財政部は「企画財政部と保健福祉部、『韓国銀行』・『国民年金』は国民年金海外投資拡大過程での外国為替市場の影響などを点検するための四者協議体を発足した」と公表しました。
これには前段があります。
実は11月14日、突然、企画財政部の具潤哲(ク・ユンチョル)部長(長官)が李昌鏞(イ・チャンヨン)『韓国銀行』総裁と緊急市場点検会議を行って、「国民年金など主要需給主体と緊密に協議する」と明らかにしていたのです。
何をやってんだろ――だったのですが、今回の布石だったのです。あるいは『韓国銀行』にナシを通しておいた――と見られます。
面白いのは、企画財政部からプレスリリースが出ていないことです。
この24日にできた「四者協議体」は明らかにウォン安を止めるためのものです。
韓国メディア『国民日報』では、
「政府は、国民年金の大規模な海外投資のためのドル需要が構造的に為替レートを押し上げていると見ている。国民年金は今年08月末基準で全資産1322兆ウォンのうち43.9%(約581兆ウォン)を海外へ投資している。
この日開かれた1回目の会議でも、国民年金の大規模海外投資が為替市場の需給に及ぼす変動性を減らす方策が比重をもって扱われたことが分かった」
――と書いてます。
「ドルウォンの為替レートが過度に高くなったとき、国民年金がドル資産を一部売却すると、市場へのドル供給が増え、為替レートの安定に役立つことがあります」なんて書いているメディアもあります。
これは無茶苦茶な言説で、要するにウォン安を止めるためにドル資産を売ってウォンに換えろという話です。『国民年金』にですよ。基金に集めた資金を通貨安防衛に使うというのです。これ、国のやることでしょうか。
もっとも、韓国政府はドル不足の際に、『輸出入銀行』に私募債を発行させて『サムスン電子』などの大企業からドルを吸い上げたことがあります。
普通ならガバナンス的に「どうなの?」ということでも平気な顔で行う国ですから、国民年金の資金を通貨防衛に使わないとは言い切れません。もし本当にやったら国際的には赤っ恥をかきます。
なぜなら、
年金基金=加入者の老後資産を長期運用する「受託者(fiduciary)」
為替レート防衛=中央銀行+財務省※の仕事(外貨準備・政策金利・資本規制など)
※韓国では企画財政部
という切り分けが常識であり、
ここに政府が真正面から出てきて、
「ウォン安がきついから、国民年金のドル資産を売って為替を支える」
――などというメッセージを出したら、
年金運用の政治利用
ガバナンスの未成熟
通貨・財政運営の脆弱さの露呈
として、『IMF』や『OECD』圏の投資家や格付け会社からは確実にマイナス評価になります。
まあ面白いからやってみればいい――です。
だからプレスリリースを出さずにメディアを介しているわけです。だから「何をするつもりなのか」にメディアが想像を巡らす事態になっているのです。
(吉田ハンチング@dcp)






