2020年05月04日、韓国メディア『ソウルファイナンス』に「日韓通貨スワップはしばらく忘れる」という記事が出ました。日本にとっては「ぜひそうしていただきたい」という記事ですが、非常にバカな興味深い内容となっています。
以下に一部を引用します。
最近、いくつかのメディアで日本に防疫物資を支援し、日韓通貨スワップを締結しなければならないというニュアンスの主張が登場している。
もちろん世界を不安が襲っている経済の状況下で、さまざまな国と通貨スワップを大規模に締結しているのが望ましいのは確かだ。
しかし、日本は現在、日韓通貨スワップを単に韓国への経済援助と考え、日韓関係の武器として使用する動きを見せている。
過去李明博政府時代、李明博大統領の独島訪問がきっかけとなって満期解約された両国間の通貨スワップは、以後、朴槿恵政権時代再び締結の議論されたものの、日本側の少女像撤去要求のためにうやむやになった。
今、日本は通貨スワップ締結を膠着状態の日韓関係を改善する贈り物として掲げ、韓国政府の屈服を期待している。
文在寅政府が歴代政府に比べて日本に対して簡単に妥協はしないことを念頭に置いて、現在日本政府が取り出せるカードが通貨スワップだけという解釈も可能である。
⇒参照・引用元:『ソウルファイナンス』「日韓通貨スワップはしばらく忘れる」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
ものすごく牽強付会な態度であり、悪意ある誤解に満ちた文章です。あの断絶以来、日本から韓国に対して、「通貨スワップ協定」を再締結しませんか、と持ちかけを行ったことは一度もないはずです。
しかし、先にMoney1でご紹介したことがありますが、韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は「日韓通貨スワップの延長を(恐らく非公式に)何度もオファーしたことがある」のです。
日本には全く必要のないものをなぜ韓国にもちかける必要があるのでしょうか。韓国を屈服させるため? そんなことしなくても早晩韓国は自滅しそうですけれども。
さらに間違った認識は続きます。
現在、韓国は日本を除いて、多くの国と通貨スワップを締結した状態であり、その規模は、事前の制限を定めていないカナダを除いて、総額1,932億ドル規模に達すると韓国銀行が明かしている。
規模でみると、ほとんどは個々の国と結んだ二国間協定が占めるが、アセアン+3と結んだ多国間協定の規模も384億ドルに達する。
このうち、米国が600億ドルと半分近くを占めており、人民元に締結された中国がドル換算で約560億ドルで、規模の面で米国に近接している。
恐らく米国が韓米通貨スワップを600億ドル規模で締結した背景には、先に締結された中国との通貨スワップ規模が影響を及ぼしたものと見られる。
韓国が締結したと称している「通貨スワップ協定」(一応「 」でくくっておきます)の上限金額は以下のとおりです。
・対スイス:100億スイスフラン(約103億ドル)
・対マレーシア:150億マレーシアリンギット(約34.5億ドル)
・対オーストラリア:120億オーストラリアドル(約78億ドル)
・対インドネシア:115兆ルピア(約75.9億ドル)
・対中国:3,600億元(約504億ドル)
・対UAE:200億AED(約54億ドル)
・対カナダ(危機時に流動性を確保する協定):金額設定なし
・対アメリカ合衆国(ドル流動性スワップ):600億ドル
・CMI(チェンマイ・イニシアティブ):約384億ドル
計:約1,833億ドル
(為替レートは2020年05月05日のもので計算)
単純に足し算しても記事内の1,932億ドルにはなりません。現在のドルレートで計算していないものと思われます。また「アセアン+3と結んだ多国間協定」というのは「CMI(チェンマイ・イニシアティブ)」のことでしょうが、この全額を緊急時に引き出して使えるわけではありません。
「対アメリカ合衆国」の「600億ドル」は「ドル流動性スワップ」。また、対中国の3,600億元が使い物になるかどうかは疑問です(媚中国の文政権なのに最も不安なのが中国との約束だというのはなんとも皮肉なことです)。
さらに合衆国のドル流動性スワップが「600億ドル」になったのは、韓国の事情を考えてのことではありません。03月時点での異常な「ドル高」をストップさせないといけないという、合衆国自身の事情によります。自意識過剰もいいところです。
さらに韓国人が日本を悪し様に言う誤解まで引いています。
また、通貨危機当時、最初に抜けたのが日本の資金だったという痛い記憶が私たちにはある。通貨スワップを武器に梗塞された日韓関係を解き。優位に立ちたいという姿を見るに、日本との協定締結を急ぐ理由がない。
全くばかげた言説です。事実は全く逆で、アジア通貨危機時に最後まで韓国にドルを供給し続けたのは日本の銀行(邦銀)であるという、そんな基本的な知識もないのです。
さらに、今後予想される日本経済の危険性が韓国経済の足を引っ張る可能性もあらかじめ念頭に置く必要がある。
まだ安全資産として片付けている日本の円だが、日本の政府負債規模はいくら見ても尋常でない。
GDPの240%のレベルに達する政府負債と財政の40%ほどを国債発行で埋めるしかない構造を持った日本の状況は看過できないレベルである。
日本が経済的に傾くようになったら韓国経済など吹き飛んでいるかもしれない、という可能性については想像できないようです。
しかも日本にいわせれば、経済の危機的な状況に512兆ウォンの予算を組んで(これをスーパー予算と呼んでいます)、今回の新型コロナウイルス騒動で支援声明を約180兆している韓国政府はいかがなものか、です(本件は別記事でご紹介します)。
この約180兆は全部新たな借金です。180兆ウォンといえば512兆ウォンの約35.2%に当たるのですが、自分のことには考えが及ばないようです。
まとめの部分も振るっています。
むしろ韓国はコロナ19防疫成功を契機に国家の地位が高まり、外国為替管理に有利な立場になる可能性が大きくなった。
もっと堂々とした経済外交が必要な時だろう。少なくとも日本との関係では、私たちが惜しい姿を見せる理由はない。
「外国為替管理に有利な立場」というのが何を指すのか全く分かりませんが、韓国の通貨ウォンは韓国の人がどう叫ぼうがローカルカレンシーであって、それにふさわしい立場しか与えられることはありません。
韓国の人、韓国政府は「ドボンになったときに日本のことは忘れるようにする」のがお薦めです。日本は韓国に巻き込まれないようにしないといけません。
(柏ケミカル@dcp)