先の記事で、韓国メディアは「日韓通貨スワップ協定」に執心しており、「日本銀行が日本政府から十分に独立していないために協定が結べない」といわんばかりであるという件をご紹介しました。
日本政府からすれば「国際間の約束事を守らない国との契約など結べるはずがない」ですし、「韓国の通貨『ウォン』のようなローカルカレンシーと『通貨スワップ協定』を締結しても日本の得にならない」から締結しないのです。
政府が国の利益にならないことをしないのは至極当然のことですね。
日本銀行からしても「韓国ウォンとのスワップライン※1を締結することに何の意味も見いだせない」ので締結しないだけのことでしょう。
ところが、韓国政府また韓国メディア、つまりは韓国の人にはなぜかこれが理解してもらえません。
「政治的な要件でもめてはいるが、経済のことだけ考えれば締結できるはずだ」と思うようで、そのため「日本政府の影響下にあるため日本銀行が動けない」⇒「独立性が高ければ日本銀行はスワップラインを結ぶはず」という考えに至るのです。
「日本は韓国と『通貨スワップ協定』を締結しない。政治的にも経済的にも何の得にもならないから」ということが理解できないのです。
韓国銀行総裁の「何度もオファーした」発言
ここにきて日本銀行の独立性について韓国メディアが言い立てている理由は、韓国銀行の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁の発言にあるのかもしれません。
2020年03月20日、『聯合ニュース』の記事に「韓国・合衆国の通貨スワップはヤマを超えた…韓日スワップはより険しい」という記事が出ました。
同記事から一部を引用します。
(前略)
日本銀行(BOJ)法※2によると、第3条「BOJの通貨と金融調節における自主性は尊重されなければならない」と書かれている。この条文が政府から日本銀行の独立性を裏付けているが、このすぐ後に続く第4条には、「通貨及び金融の調節が経済政策の一環であるという点を考慮して、政府の経済政策と両立可能でなければならない」という条文がある。
これは政府との密接な接触を維持し見解を十分に交換するという点を明示しており、日本銀行の独立性についての問題は慢性的なものとして挙げられる。
日韓通貨スワップの問題も、最終的には財務省所管であるだけに、国際金融協力においても日本銀行が政府から自由であることは難しいわけだ。
イ・ジュヨル総裁は昨年7月23日、国会企画財政委員会の業務報告で「(日本側に)スワップ延長のオファーを何度もしたが、日韓通貨スワップは経済外の要因が考慮対象に入っている」とし「また契約を締結するときは日本銀行だが、国際協力の決定権は財務省が握っている」と言及したことがある。
(後略)⇒参照・引用元:『聯合ニュース』「韓国・合衆国の通貨スワップはヤマを超えた…韓日スワップはより険しい」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、※2、強調文字は筆者による(以下同)
注目ポイントは、韓国銀行の李総裁の発言「(日本側に)スワップ延長のオファーを何度もしたが……」です。
先の記事でご紹介したとおり、あの中断以降「韓国から日本に正式に『日韓通貨スワップ協定』について提案されたことはない」と在韓公使の西永知史さんが明言しています。
これは「非公式になら何度も打診したことがある」と告白した、と取れます。
あるいは、中断される「当時は」何度も打診したという意味でしょうか? それならそれで中断された際の李総裁の発言と矛盾します。
李総裁は中断が決定されたときに「安定的な金融市場の状況と堅実なマクロ経済の環境を勘案した際、延長の必要性は大きくないと判断した」と語っているのです。なぜ必要性のないものの延長を「何度も打診した」のでしょうか?
もしこの記事が本当で、李総裁が国会企画財政委員会の業務報告でこのように述べたのなら、実は李総裁は何度も「日韓通貨スワップ協定」について日本側の誰かに打診し、そのたびにいい反応はもらえなかったということになります。
さらに「国際協力の決定権は財務省が握っている」という発言から、李総裁は「政治的な要件をうんぬんする日本政府の影響下になければ、日本銀行は締結するのでは」といった考えを持っているように窺(うかが)えます。
やはり、李総裁も「日本は韓国と『通貨スワップ協定』を締結しない。政治的にも経済的にも何の得にもならないから」ということを理解していないように見受けられるのです。
先の記事でも触れましたが、政府の依頼を受けてお札を刷ったことがある中央銀行に「中央銀行の独立性」について講釈を垂れられるいわれはありません。
(柏ケミカル@dcp)
※1韓国が望んでいるのがFRBのいう「ドル流動性スワップ」、いわゆる「スワップライン」かもしれませんので一応こう表記します。
※2ちなみに『日本銀行法』の第三条、第四条は正確には以下になります。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
⇒参照・引用元:『e-Gov』「日本銀行法」
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=409AC0000000089#9