2020年03月19日、FRBは「FEDがスワップラインを拡大し、9カ国の中央銀行と締結すること」を発表しました。
この「スワップライン」は、(中央銀行に対する)流動性スワップ(Central bank liquidity swaps)というもの。簡単にいうと、中央銀行同士で通貨を融通する仕組みのことです。
今回拡大されたのは「Dollar Liquidity Swap Lines」(ドル流動性スワップライン)と呼ばれ※、FED(連邦準備制度:この場合は「連邦準備銀行」)が各国の中央銀行に対して(その国の通貨と交換に)ドルを融通するためのものです。
ドル流動性スワップラインは以下のようなイメージになります。
念のためにFRBによる仕組み(構造)の説明を以下に引いておきます。
The Federal Reserve provides U.S. dollars to a foreign central bank. At the same time, the foreign central bank provides the equivalent amount of funds in its currency to the Federal Reserve, based on the market exchange rate at the time of the transaction. The parties agreed to swap back these quantities of their two currencies at a specified date in the future, which is the next day or as far ahead as three months, using the same exchange rate as in the first transaction. Because the terms of this second transaction are set in advance, fluctuations in exchange rates during the interim do not alter the eventual payments. Accordingly, these swap operations carry no exchange rate or other market risks.
連邦準備制度が外国の中央銀行にドルを提供します。同時に、外国の中央銀行は、取引時の市場為替レートに基づいて同額の資金をその国の通貨で提供します。
双方の当事者は、最初の取引時のレートを用いた通貨量を指定日(翌日または3カ月後)に交換し戻す(スワップバックする)ことに合意しています。
この二つめの取引(スワップバック)の条件は、事前に設定されているため、その間の為替レートの変動は最終的な支払額に影響を与えません。したがって、このスワップラインによるやり取りには為替リスクやその他市場のリスクはありません。
⇒参照・引用元:『FRB』「How are the swaps structured?」
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/swap-lines-faqs.htm
2007年に始まり対象国は5カ国に落ち着いた
ドル流動性スワップラインは、ドル調達需要の高まり(というか逼迫)に呼応して設定されたもので、そもそもは2007年の12月にECB(欧州中央銀行)、スイス国立銀行と結んだのを始まりとしています。
その後、改めて「オーストラリア準備銀行」「ブラジル中央銀行」「カナダ銀行」「デンマーク国立銀行」「イングランド銀行」「ECB(欧州中央銀行)」「日本銀行」「韓国銀行」「メキシコ銀行」「ニュージーランド準備銀行」「ノルウェー中央銀行」「シンガポール金融管理局」「スウェーデン国立銀行」「スイス国立銀行(日本銀行の記載では「スイス国民銀行」)」と結びましたが、これらは2010年02月01日に終了。
2007年はサブプライムローンの問題が表面化した年。2008年はリーマンショック、2010年は欧州危機と経済的な危機が連続したことが、このスワップラインの締結、解除の背景にあります。
しかし、2010年05月にカナダ銀行、イングランド銀行、ECB(欧州中央銀行)、日本銀行、スイス国立銀行の5行と改めてスワップラインを締結。2013年10月には、一時的なものではなく「継続しよう」ということになり、これが現在まで続いています。
新型コロナウイルス騒動で対象国を9カ国拡大
今回、新型コロナウイルス騒動による世界的な経済危機の拡大を避けるため、9カ国とも「ドル流動性スワップライン」を結ぶことにしたというわけです。
2020年03月19日にFEDが一時的なドル流動性スワップラインを追加したのは、
・オーストラリア準備銀行
・ブラジル中央銀行
・デンマーク国立銀行
・韓国銀行
・メキシコ銀行
・ニュージーランド準備銀行
・ノルウェー銀行
・シンガポール金融管理局
・スウェーデン国立銀行
の9つの中央銀行です。上掲の2008年時に結んだ銀行と同じですね。当時のスワップラインを一時的に復活させたわけです。
この一時的なドル流動性スワップラインの取り決めの期限は、一応「6カ月」となっています。また、デンマーク国立銀行・ノルウェー銀行・ニュージーランド準備銀行の3行は300億ドルが限度。他の6行については600億ドルを限度としています。
当然ですが、このスワップラインは「期限が来たらドルは返せよ」というものですので、「ドルが入手できた、わーい!」では済みません。あと、これはドルを「貸す」ことですので「利息」(利子)も取られます。利率はその取引ごとに変わります。
⇒参照・引用元:『FRB』「Federal Reserve announces the establishment of temporary U.S. dollar liquidity arrangements with other central banks」
https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20200319b.htm
※FRBの解説によれば、スワップラインには2種類あります。一つは各国中央銀行にドルの流動性を貸与する「ドル流動性スワップライン」。もう一つはFEDが外貨の流動性を確保するための「外貨流動性スワップライン(foreign-currency liquidity lines)」です。
後者についてはテストを行っただけで、FEDは今まで一度も利用したことはない、とのこと。そりゃそうでしょうよ(笑)。世界の基軸通貨様ですからね。
(柏ケミカル@dcp)