日韓首脳会談で「飛ばし」た韓国大統領室だからなぁ――という話なのですが。
アメリカ合衆国と韓国が「通貨スワップ」締結の検討に入った――という報道が『Reuters(ロイター)』から出ているのですが、にわかには信じがたい話です。
この元ネタは『聯合ニュース』の以下の記事です。
⇒参照・引用元:『聯合ニュース』「大統領室「流動性供給装置に通貨スワップを含む…米韓NSCレビュー」
本当にそんな話を合意したのか?
まず、大統領室は、
と述べています。
そもそもこれが疑問で、米韓の正式な会談はなく、ほとんど立ち話ほどの時間しかなかったと思われるのに、そんな話を本当に両国首脳が合意できたのでしょうか。
確かに、去る05月にバイデン大統領が訪韓した際の米韓の共同声明、イエレン財務長官が訪韓した際に出された文書では、上記の基になる合意はありました。
まず、バイデン大統領が訪韓した際の共同声明です。以下の文言がありました。
(前略)
両大統領は、持続可能な成長と秩序正しく機能する外国為替市場を含む金融の安定を促進するため、外国為替市場の発展について緊密に協議する必要性を認識する。
(後略)⇒参照・引用元:『White House』公式サイト「United States-Republic of Korea Leaders’ Joint Statement」
「安定した外為市場のために両国が緊密に協議する」となっています。
次にイエレン財務長官が訪韓した際、企画財政部が出した文書には以下のような文言がありました。
必要であれば、流動性供給の仕組みのようなさまざまな協力を行うことができる
have ability to implement various cooperative actions such as liquidity facilities if necessary.
⇒参照・引用元:『韓国 企画財政部』公式サイト「米韓財務長官会の結果」
現在、ウォン安が急進しています。
この状況を鑑みると、「今こそ」というわけで、韓国の大統領室が合衆国に「外為市場の安定のために協議してくれ」「流動性供給のための装置を提供してくれ」ともちかけたのは理解できますし、本当なのでしょう。
Money1でもご紹介しているとおり、韓国メディア、識者が「通貨スワップ」を連呼している状態なので、韓国政府は動かざるを得ません。
しかし、立ち話程度の時間で、本当に合衆国が韓国側の要求に応えて「じゃあ、それについて話しましょう」となったのでしょうか。
「韓国のひとりごち」なのでは?
次に、本当に米韓の間で「通貨スワップ」締結が検討されるのか?です。
『聯合ニュース』の記事から以下に一部を引用してみます。
(前略)
これを巡って米韓通貨スワップも迂回的に議論されたという解釈が出た。これについて、崔相穆(チェ・サンモク)経済首席秘書官はブリーフィングで、
「流動性供給装置にはさまざまなものがある」とし、
「両国金融当局間の協議を通じて具体化すると考えるが、通貨スワップも両国当局間協議の対象となる流動性供給装置に含まれる」
と述べた。
崔相穆(チェ・サンモク)首席は、去る05月の米韓首脳会談と、去る07月の米韓財務長官会議のときより、流動性供給装置に対する表現がさらに進展したと説明した。
(後略)⇒参照・引用元:『White House』公式サイト「United States-Republic of Korea Leaders’ Joint Statement」
百歩譲って、本当に「合衆国と韓国の外為当局の協議が行われる」として――、上掲のとおり、協議するという「流動性の供給装置」の中に「通貨スワップが入る」というのは、崔相穆(チェ・サンモク)の「解釈」に過ぎません。
ですので「合衆国と韓国が通貨スワップ締結の検討に入った」というのは非常にフライング気味の見解で、いまだ「韓国大統領室が勝手に主張している状態」と見た方がいいのではないでしょうか。
いつもの韓国のやり口で、合意もないのに先に公表し、なし崩し的に既成事実化を狙う――というものである可能性もあります。
もちろん、本当に協議が行われたとしたら、韓国側が「通貨スワップ」を連呼するのは間違いありません。
本件については、まず本当に「流動性の供給装置について米韓で協議が行われるのか」を見極めるべきでしょう。「飛ばし」でなければいいですね。
(吉田ハンチング@dcp)