先日、孫正義CEO率いる『ソフトバンクグループ』が所有していた『ARM』をアメリカ合衆国企業『NVIDIA』(エヌビディア)に売却することが決定しました(2020年09月14日)。
『ARM』はスマホなどの心臓部になるCPUを設計・開発するメーカーで、『NVIDIA』はグラフィック処理を高速化するGPU、グラフィックボードのメーカーで、両社とも世界的な半導体関連企業です。
この買収劇は、アメリカ合衆国と中国の対立にも波紋を投げかけており、中国は特にこれに強く反発しているのです。
中国が『ARM』の買収を避けたい理由
というのは、『ARM』はCPUの命令セット、設計アーキテクチャーなど根幹に関わる技術を有しており、同社のライセンスを受けて半導体を製造しているメーカーがあまたあるのです。
これを合衆国企業が押さえることは、またぞろ「合衆国の技術を25%以上使用したものをエンティティーリストに掲載された企業などに輸出することを制限する」という措置に力を与えることになります。
すでに『ARM』は中国企業『ファーウェイ』(Huawei:華為技術)に対する技術供与を停止してはいますが、新たに中国最大の半導体メーカー『SMIC』が一部制限を受けることが決まったようですし、『ARM』は中国の半導体産業に圧力を掛けるための新たなカードになることが予想されます。
中国としては、『ARM』が合衆国企業の手に落ちることはなんとか避けたいところなのです。
買収の承認を得る必要がある!
この買収は、しかし『ソフトバンクグループ』と『NVIDEA』だけの契約締結だけで終わる話ではありません。合衆国、イギリス、中国、EUを含む規制当局の間で承認されなければならないのです。これは市場を独占する世界的な巨大企業を作らないためです。
つまり、中国当局の承認が下りなければこの買収は成立しないことになります。
中国としてはここが付け目です。すでに中国では専門家から「この買収に国として反対すべきである」という声が挙がっています。
例えば、中国工学アカデミーの学者である倪光南(Ni Guangnan)さんは、『Sina Finance and Economics』のレポートによると、27日の「第4回情報セキュリティ産業開発フォーラム」に出席し、次のように発言しています。
(前略)
さらに、倪光南(Ni Guangnan)は、『NVIDIA』による『ARM』の買収の問題についても話しました。
「『ARM』はもともと英国の会社でした。その後、日本が支配権を握りました。現在、合衆国が支配権の70%を所有しており、『ARM』を買収しようとしています。
買収が成功した場合、私たち(中国:筆者注)にとって非常に不利なので、私たちの商務省はこの合併を拒否するだろうと私は信じています。」
⇒参照・引用元:『財経头条』「倪光南:商務省はNVIDIAによるARMの買収を拒否する可能性がある」(原文・中国語/筆者(バカ)意訳)
中国がこの承認に否定的に動くのは間違いないと見られています。そのときに合衆国がどう動くのかはけっこう見物です。
(吉田ハンチング@dcp)