2021年07月07日、『韓国銀行』から05月末時点での国際収支統計が公表されました。韓国メディアでは13カ月連続黒字という惹句が踊っていますが、経常収支が黒字ではないと成立しない国ですのでこれはスルーします。
また「経常収支が100億ドルを超えた」と報じられています。
毎度のことですが、経常収支の中身を確認してみましょう。以下のようになっています。
2021年05月の経常収支
貿易収支:63億6,740万ドル
サービス収支:-5億6,310万ドル
第1次所得収支:54億9,430万ドル
第2次所得収支:-5億3,740万ドル
経常収支(上記4つの合計):107億6,120万ドル⇒データ引用元:『韓国銀行』公式サイト「2021年5月の国際収支(暫定)」
確かに「経常収支:107億6,120万ドル」と大きな黒字です。まず、韓国のいつものパターンである
サービス収支:赤字
第1次所得収支:黒字
第2次所得収支:赤字
経常収支(上記4つの合計):黒字
からは外れてはいません。
しかし、「貿易収支の金額が常より多い」のと「第1次所得収支の金額が多すぎる」のです。
輸入が輸出の回復に追いついていない
まず「貿易収支」は以下のようになっています。
輸出:503億4,610万ドル
輸入:439億7,870万ドル
貿易収支(輸出 – 輸入):63億6,740万ドル
輸出金額「503億4,610万ドル」は対前年同期比で「149.0%」とほぼ1.5倍に増えたのですが、輸入金額「439億7,870万ドル」は対前年同期比で「141.1%」と1.4倍にしか増えていません。つまり、輸入の回復が遅れているため、そのぶん貿易でのもうけが大きくなったのです。
輸出に比べて輸入が回復せず、そのため黒字が大きくなるのは「不況型黒字」で見られる特徴です。韓国は不況型黒字から脱しつつあると見られていたのですが、しかしこの05月の貿易収支の結果では、まだ経過観察をしないと即断できないかもしれません。
多すぎる「第1次所得収支の黒字」はなぜか?
しかし、当月最大の注目ポイントは「第1次所得収支」の「54億9,430万ドル」という巨額黒字です。
韓国は、通常この第1次所得収支は「20億ドル」前後の黒字なのですが、当月は倍以上あります。
これはなぜなのでしょうか?
理由は第1次所得収支のさらに下の細目を見ると分かります。
2021年05月になんと「55億6,200万ドル」も黒字になっています。
同列の上の行(過去の月)を見ていただければ分かるとおり、通常よりも「30億ドル」ほど多いのです。これが第1次所得収支がいつもより30億ドルも増え、倍以上になった理由です。
さらに細目を見ると、直接投資(Direct Investment)がいつもよりも多いのです(以下)。
この直接投資の収支には、親会社と子会社との間の配当金・利子等の受け取り・支払いが計上されます(以下は財務省の説明)。
⇒参照・引用元:『日本国 財務省』公式サイト「用語の説明」
「2021年01月:10億5,210万ドル」「2021年02月:10億4,310万ドル」で、2021年05月:41億9,690万ドル」ですから、やはり「30億ドル」ほど多いのです。
つまり、韓国の05月の経常収支を100億ドル超えに押し上げたのは、第1次所得収支がいつもの倍もあったためで、その理由は配当金・利子等の受け取りが当月30億ドルも増えたからに他なりません。
第1次所得収支がどうなるのかは06月の国際収支統計が公表される次月を待ちたいところです。
(柏ケミカル@dcp)