2021年08月12日、『韓国銀行』は、『トルコ中央銀行』との「通貨スワップ」契約の締結を電撃的に発表しました。なぜ韓国はこのような火中の栗を拾いにいくのでしょうか。
トルコの日刊紙『Sozcu(ソズジュ)』がこの協約締結について記事を出しており、その中に興味深い部分があるので、ご紹介します。
(前略)
KAVCIOĞLUが交渉を発表CBRT(トルコ中央銀行:筆者注)議長のŞahapKavcıoğluは、06月に韓国とのスワップ交渉が進行中であると述べた。
韓国に加えて、スワップ交渉の範囲内でアゼルバイジャン、イギリス、マレーシアと交渉が行われたと述べられた。
(中略)
2021年7月の時点で、CBRTの総準備金は1,057億ドルです。必要準備金として国内銀行が保有する外国為替と金をこの数字から差し引くと、246億ドルの純準備金が残ります。
スワップ契約を通じて外国銀行および国内銀行から借り入れた外貨を除くと、純準備金はスワップを除いてマイナス414億ドルです。
(後略)
見逃していましたが、トルコは06月に韓国と「通貨スワップ」契約について交渉を行っていたとのこと。また、韓国以外にはアゼルバイジャン、イギリス、マレーシアと交渉を行っていたとのこと。
次に、『トルコ中央銀行』が持つ外貨資産は非常に脆弱であるということが分かります。
2021年07月末時点で、あるとする「総外貨資産:1,057億ドル」の中から国内銀行のものである外貨と金を引けば、246億ドルしか残らないことが一点。
この246億ドルから、外国銀行と国内銀行から借り入れた外貨を除くと、なんとマイナスになるというのです。それが「-414億ドル」です。
つまり、「246億ドル」と「-414億ドル」の天地「656億ドル」は借入金というわけです。
その借入金の内訳を以下のように書いています。
したがって、7月末現在、CBRTには約660億ドルの借入した準備金があります。
このうち、約452億ドルは国内銀行とのスワップで構成され、208億ドルは中国とカタールの中央銀行とのスワップで構成されています。
CBRTは、弱い準備金の見た目を改善するためにスワップ契約を結んでいますが、エコノミストは、CBRT自身の準備金の大幅なメルトダウンが経済にとって最も深刻なリスクの1つであると指摘しています。
※引用元は同上
『トルコ中央銀行』は『中国人民銀行』、『カタール中央銀行』との中央銀行間のスワップ協定を結んでいますが、それが208億ドルもあるというのです。
韓国が2020年にドボン寸前になって、アメリカ合衆国『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)と結んだドル流動性スワップで調達した金額は約200億ドルでした。
『韓国銀行』はなんとか全額返済しましたが、『トルコ中央銀行』は中国、カタールから借りたままの現在進行形です。
メルトダウンも何も、純資産がマイナスでしかも外国銀行から調達しているとなれば、これはもう倒れているも同様です。
『韓国銀行』が提供するウォンはこのような国に渡るのです。しかも、ウォンからドルに換えないと国際間の取引で役に立ちませんから、トルコがウォン売りドル買い(両替)を行うとウォン安を進行させる要因になります。
今回の通貨スワップの最大限度額がわずか「20億ドル」という規模なのは為替レートへの影響を最小限に抑えるためとも考えられます。
なぜ『韓国銀行』はトルコとの通貨スワップを締結したのでしょうか? 韓国はトルコから大きな貿易黒字を上げていますので、それをカタに取られたのかもしれません。
つまり、韓国企業との取引にスワップ資金のウォンを使うのであれば、トルコは貴重なドルを減らさないで済みます。韓国にとっても韓国企業が代金を取りっぱぐれることがありません。
『韓国銀行』のプレスリリースには、ローカルカレンシー同士で取引できることを目指すと書かれていますので、今回の通貨スワップの締結はこの点に重点を置いたものと見られます。
ちなみに、トルコはかつて「貿易赤字が大きく、外貨が流出するので韓国とのFTAを破棄しようかな」と韓国を脅したことがあります(以下の記事を参照してください)。
(吉田ハンチング@dcp)