本日は秋夕の祝日で韓国市場はお休みですが、もちろん外為市場は動いています。
2022年09月20~21日(現地時間)には『FOMC』(Federal Open Market Committeeの略:連邦公開市場委員会)です。
再び0.75%(=75bp)のジャイアントステップを踏む確率が高まっていると報じられているのですが、これが現実になると韓国とアメリカ合衆国の金利差は「0.75%」となります。
韓国から資金が流出する可能性が高まるのです。つまり、ウォン安がさらに進行することが予想されますが、現在でさえかつての通貨危機水準ですから、さらに進行すると……。
――というわけで、韓国メディアでは「どうするんだ」と警鐘を鳴らす記事が増加しています。
ただ、警鐘を鳴らすばかりで実のある話はありません。止められないからです。
一縷の希望なのかなんなのか、またぞろ「通貨スワップ」の連呼が始まっています。『NEWSIS』が堂々巡りの興味深い記事を出していますので、ご紹介します。
記事の一部を以下に引きます。
(前略)
問題は、為替レートの急騰を防ぐための効果的な方法が事実上ないという点だ。外国為替当局が為替レートの急騰を防ぐため、ドル売りで市場介入に乗り出しているが、為替レートの上昇の流れは崩れていない。
外国為替当局が安値進行する為替レートの防衛に乗り出して、外国為替保有額(外貨準備高のこと:引用者注)は今年に入ってだけで266億9,000万ドルも減った。
口先介入も為替レートの上昇傾向を鈍化させることができる方案ではあるが、効果は大きくない。
外国為替当局は今年に入って4回も口先介入に乗り出したが、4回とも為替レート上昇の流れを破れなかった。
(中略)
為替レートの急騰を防ぐためには、昨年末終了した韓米通貨スワップ締結が緊急に必要だという意見も出ている。
(中略)
しかし、現実的に米韓通貨スワップ締結は容易ではない状況だ。
ウォンの弱さが私たちだけの問題ではなく、全世界的なドル一強によるものだけに、通貨スワップが効果がないという指摘もある。
また、アメリカ合衆国が韓国と単独で通貨スワップを締結する可能性が低いのは事実だ。
李昌鏞(イ・チャンヨン)『韓国銀行』総裁は、先月金融通貨委員会直後、記者懇談会で「合衆国と常設通貨スワップを締結している主要国の通貨も弱気を見せている」とし「米韓通貨スワップ締結でドル強を防ぐことができるというのは誤解だ」と言った。
イ・ファンソク副総裁補は08日の記者会見で「通貨スワップ締結は私たちの努力で可能なのではなく、合衆国連銀の意志が重要だ」と話した。
⇒参照・引用元:『NEWSIS』「【統制不能為替レート②】外国為替危機信号弾?」
この記事で面白いのは、「このドル独歩高によるウォン安を止める方法は事実上ない」と書いておきながら、「米韓通貨スワップが必要という声が上がっている」と紹介している点です。
しかし、「米韓通貨スワップ」締結の可能性はほとんどない、と書いており、おまけに「通貨スワップが効果がない」という声が上がっていることも紹介しているのです。
堂々巡りです(笑)。
なにより「通貨スワップが効果がない」と指摘しているのは、記事内にもあるとおり、『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁なのです。
「米韓通貨スワップ締結でドル強を防ぐことができるというのは誤解だ」とはっきり述べています。
Money1でも何度もご紹介していますが、ドル流動性スワップ(韓国側呼称「通貨スワップ」)があっても今回のウォン安は止められません。
李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も指摘しているとおり、「合衆国と常設通貨スワップを締結している主要国の通貨も」対ドルで弱くなっていることがその証左です。
『韓国銀行』総裁が「通貨スワップがあってもウォン安を止められない」と述べ、副総裁補が「韓国の都合で通貨スワップは締結できない」とトドメを刺しているのに、なぜか韓国の識者・メディアからは「通貨スワップが要るんだ」という声がとめどなく湧き上がってくるのです。
いつまでたっても堂々巡りです。
(吉田ハンチング@dcp)