ウォン安が止められず、韓国の通貨当局は四苦八苦しています。そもそもアメリカ合衆国が極端に流動性を絞っているのが原因なので、基本、合衆国の動きが変わらない限りウォン安は止められません。
外貨準備のドルをいくら溶かしても恐らく無駄なので、「どうしようもない」なのですが、韓国メディア『ソウル経済』が、ケネス・ロゴフ(Kenneth Saul Rogoff)先生の言葉を引いた記事を出していますので、ご紹介します。
このロゴフ先生は、国際マクロ経済学、国際金融論が専門の経済学者で、『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)のチーフ・エコノミストを務めたこともある碩学でいらっしゃいます。
また、ロゴフ先生の『国家は破綻する─金融危機の800年』(Carmen M. Reinhart先生との共著/原題:This Time Is Different/「今度は違うよ」)は、金融危機の歴史を紐解いた大変に面白い本なのですが、「データが違ってるじゃんかよ」と指摘されたというガッカリな経緯があります。
それはともかく、『ソウル経済』の記事から一部を以下に引いてみます。
20日、ロゴフ教授は世界経済研究院が「グローバルマクロ経済リスクと政策的示唆点:今回は本当に違うか」をテーマに開催したウェビナーでこのような見解を明らかにした。
(中略)
ロゴフ教授は最近、全世界的な「キングドル」現象に対して「合衆国連銀の攻撃的金利引き上げなど、さまざまな要因で超強勢を示しているが、まだ10~15%ほどさらに上昇する余地がある」とし、追加上昇の可能性を予告した。
一方、「危機時には先進国より小規模の新興国がより脆弱であるという点がキングドル現象を生んでいる」とし、「ドル強勢が続く場合、新興国および脆弱国は深刻な経済逆境に直面する可能性がある」と警告した。
(後略)
韓国にとっては「いい加減にしてくれ」な話ですが、ロゴフ先生はドルがまださらに10~15%上昇するかもしれない――と予測していらっしゃいます。
韓国の気を付けること!
韓国については以下のような発言があります。
(前略)
ロゴフ教授は、韓国も短期的には、連銀の金利引き上げとドルの超強勢によく対応することが最も重要な政策的課題になるだろうと強調した。(中略)
それと共に「(主要中央銀行の目標物価上昇率である)2%台を上回るインフレが維持されるだろう」とし「特に低出産・高齢化問題がひどい韓国は物価を抑えるのが難しい環境が維持されるのではないかと思う」と話した。
(中略)
ただ、経済体力を考慮して金利引き上げ速度を調節しなければならないと提言した。
ロゴフ教授は「(コロナ19以降各国が)基準金利を緩め過ぎたのも間違いだが、今はあまりにも早く上げるミスをしている」とし「物価を握ることも重要だが、基準金利を急激に上げれば経済危機が発生する可能性があるため、慎重にしなければならない」と指摘した。
「韓国も短期的には、連銀の金利引き上げとドルの超強勢によく対応することが最も重要な政策的課題になるだろう」とおっしゃっていますが、「どうやって?」なのです。
また「基準金利を急速に引き上げたら経済危機が発生する可能性があるぞ」と警告していらっしゃいます。
この点は、さすがに『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁も心得たもので、合衆国が0.75%(=75bp)上げても50bp(=50bp)で抑えています。なにせ、韓国の場合には、異常な速度で増えた家計負債(最近では企業負債も危ない)の爆弾に点火する可能性があるのでドラスティックに上げられませんので。
「あー、もーアメリカなんとかなんないのかよ」とぼやきながら、うっすい氷の上をそろーっと抜き足差し足で進んでいくしかないのです。氷を踏み抜いたらドボン騒動です。
(吉田ハンチング@dcp)