日本ではほとんど知られていませんが、『東嶺集団』という企業があります。
主要業務は、鉄鋼の生産、および非鉄金属の精錬、鉱産エネルギー、サプライチェーンサービスなどです。また『東嶺集団』は中国西部で最大規模の亜鉛精錬を行う民間企業の一つです。
↑『東嶺集団』のホームページ/スクリーンキャプチャー。1971年創業で、もともとは小さな村の鉄工所だったのですが、上掲のように「小さな村の鉄板加工工場から1,000億ドル企業」へ躍進。「西部一の村」といわれるまでになったのですが……。
100以上の系列会社を持ち、総資産が400億元、従業員1万8,000人以上という巨大なグループで、「2023年中国企業500強」リストで205位にランクインしています。
中国を代表する企業グループといってもいいのですが、『陕西立邦软件有限公司』から陝西省宝吉市中級人民法院に『東嶺集団』に対する破産・更生申請が提出されました。
↑2024年07月25日に「全国企業破産更生事件情報ネットワーク」に公開された情報。
上掲は「全国企業破産更生事件情報ネットワーク」に公示された「『東嶺集団』の破産・更生措置についての追加の公告です。以下は和訳です。
東嶺集団株式会社再編案 管理人補充公告
公開時間:3時間前
公開者:東嶺集団株式会社管理人
閲覧回数:29回東嶺集団株式会社(以下「東嶺集団」)管理人は、2024年08月01日に全国企業破産再編案件情報ネットワークを通じて「東嶺集団株式会社再編案管理人公開選任審計機関、評価機関の公告」(以下「公告」)を発表しました。今回、管理人は「公告」の一部内容を修正することを決定しました。
修正内容は以下の通りです:
選任範囲:当初の「公告」における審計機関、評価機関の選任範囲を全国に拡大し、応募機関は全国で合法的に設立および登録されている会計事務所および資産評価機関とします。応募期限:応募期限を2024年08月13日17時まで延長します。
破綻したので、管財人を入れて処理を進めようとしています。
中国語メディアは、例えば以下のように書いています。
(前略)
事業面では多くの人が、『東嶺集団』の破産は不動産と深く結びついていることに起因する、と指摘している。『東嶺集団』の鉄鋼生産能力は、一時期さまざまな種類の鋼材販売量が1,000万トンを超え、中国の建築鋼材販売量ランキングで第1位に位置していた。
『東嶺集団』側はかつて「2022年における製鉄コストの51%はコークスと石炭に由来し、冶金産業チェーンの利益はすべて炭鉱に奪われた」と述べていました。
(後略)
当記事のアンカーが「突如破綻」とタイトルにしていますが、破綻の前兆はなかったのかといえば当然ありました。再度中国語メディアから引きます。
(前略)
破産再編を宣言する前に、『東嶺集団』はすでに多くの訴訟に巻き込まれていた。『天眼査』のデータによると、08月02日時点で、『東嶺集団』は145件の司法案件に関与しており、売買契約の紛争や借入契約の紛争など多岐にわたり、執行される金額は12.7億元にも達している。
また、注目すべき点として、阿里司法拍売ネットで、『東嶺集団』が所有する『長安銀行』の株式が西安市碑林区人民法院によって公開オークションにかけられ、開始価格は110,754,955.5元、1株当たり2.17元に設定されており、オークションの開始日は08月22日である。
(後略)
そもそも2023年の段階で、中国の鉄鋼業は危ない状況にありました。不動産市場が急速にシュリンクして、鉄鋼需要も急減。これに原料高が襲ったわけです。その割には、ダンピング価格で外国に鉄鋼を輸出しているのに驚きますが、そうしないと回らないというのが現実で、訴訟などもあってついにお金が回らなくなって破綻した――といったところではないでしょうか。
このように、つい昨年まで優良企業とされていた企業でさえ飛ぶのです。
この破綻によって、また多くの雇用が喪失するでしょう。中国のディストピア化が止まりません。
(吉田ハンチング@dcp)