フィデューシャリー・デューティーとはナニか 投資信託にだまされるな!

2017年07月04日、日本政府は金融庁の幹部人事を発表。森信親さんの「金融庁長官」続投が正式に決まりました。森長官は「豪腕」といわれていますが、日本の投資における環境を欧米並に整えようと努力しています。

■注目すべきは「フィデューシャリー・デューティー」

一般にはなかなか伝わらないことですが、もし森長官の「カイゼン」がうまく証券会社・銀行など、投資用の金融商品を扱う企業を変化させることができれば、日本の歴史上大きな転換点として評価されることになるでしょう。

「何が変わろうとしているのか」をひと言で表すならば、「フィデューシャリー・デューティー(fiduciary duty)」という言葉に尽きます。フィデューシャリー・デューティーは、「受託者責任」と訳されますが、日本の証券会社、銀行などが金融商品を扱う際に最も欠けているものと指摘されます。 「受託者」とは、顧客からお金を預かり運用している企業を指しています

先の記事で少し触れましたが、日本ではアクティブ投信(投信信託 = ファンド)を購入している人が多いのですが、これは証券会社や銀行などが薦めるからです。しかし、その販売者、運用者は顧客の利益を一番に考えて行動しているでしょうか?

フィデューシャリー・デューティー、受託者責任は、言い換えるなら「誰の顔を見て仕事をしているのか?」「顧客の顔を見て仕事をしていますか?」「顧客の利益だけを考えて仕事をしていますか?」と、問う言葉なのです。

■日本の販売手数料・信託報酬は高すぎる!

情けないことに、従来の証券会社・銀行などが販売する投資信託は顧客に利益をもたらすものではありませんでした。先の記事で触れたとおり、日本の過去10年の投資信託の平均収益率は「マイナス0.11%」なのです。アメリカでは「プラス5.02%」。この差は、まさにフィデューシャリー・デューティーの差と言っても過言ではありません。

上記のデータが示してるとおり、証券会社・銀行などの金融機関が顧客に販売してきた投資信託はそのほとんどが顧客の利益になっていません。はっきり言えば、それら投資信託を販売してきた企業は別に顧客が損をしたところで別に構やしないのです。

投信の販売時に取る「販売手数料」、また運用によって徴収する「信託報酬」、また解約手数料によって儲かるようになっているからです。これらの費用は運用された結果がプラスであれマイナスであれ顧客から徴収されるのです。こんなことで顧客本位といえるでしょうか?

実際、日米では投資信託に対する販売手数料が全く異なっています。
日本平均:3.20%
アメリカ平均:0.59%

さらに年率信託報酬(税抜き)も違います。
日本平均:1.53%
アメリカ平均:0.28%

先の記事にあったようにただでさえ(そしてアメリカのような優秀なファンドマネジャーがいてさえ)、アクティブファンドは利回りが良くないのです。ここから上記のような販売手数料、信託報酬が引かれたらどうなるでしょうか? 日本の投資信託の利回りがマイナスになって顧客に損をさせているのはまさに当然の帰結といえます。

また、顧客に薦める投資信託の銘柄についても問題があります。販売手数料や信託報酬が多く徴収できる銘柄を薦めたり、また親会社に利益が得られる銘柄を親会社・関連会社の意向で顧客に薦めたりといったことが行われてきました。これは全く顧客の利益に相反する行為です。

ファンドの運用会社が親会社の顔を見て仕事をするなんてことは言語道断です。ましてや顧客の利益に相反する、親会社に販売手数料が入るからファンドを作り・売るなんてことは許されません。顧客の損が親会社・関連会社の利益になるのですから全くひどい話です。

フィデューシャリー・デューティーとは、受託者(この場合は顧客のお金を預かる者)に対して、

・顧客の利益だけを考えて行動すべし
・自ら(受託者)の利益、他者の利益を考えるな

という義務を言っているのです。森長官がその豪腕をもって変えようとしているのは、日本のこれまでの、甘々で、顧客に損をさせても自分たちは儲かってきたという、証券会社・銀行など金融機関の姿勢そのものです。

一部の記事に「森長官の改革は箸の上げ下ろしにまで注文を付けるもの」みたいな批判があるようですが、それは全く的外れな、それこそ難癖といえましょう。

日本人は約1,700兆円に達する莫大な資産を持っています。これが有用に投資に回るためには、上記のように投資信託の運用利回りがマイナスになるような国では駄目なのです。そのためには証券会社・銀行など金融機関のカイゼンだけではなく、日本人それぞれが「これ以上だまさないぞ!」というしっかりした金融リテラシーを持つことも必要なのです。

(柏ケミカル@dcp)