韓国の借金が、政府・企業・家計のどれを取っても雪だるま式に増加しています。
これについては韓国メディアも心得ており、指標が悪化するたびに記事にはしています。特にもう1,000兆ウォンを超えることが確定した政府の負債については、ちくちくと攻撃してはいるのですが、文在寅号は「アンストッパブル」です。
ご紹介してきたように、韓国メディアでは「これまでは政府債務は対GDP比で40%前後に抑えるというのが暗黙の了解だったのに……」と嘆いています。
韓国政府(あるいは文大統領本人)はよほどシャクに障ったのでしょう。
2020年06月24日、韓国メディア『ソウル経済』に「韓国政府が『新たな財政指標』を導入」という「おっ!」となる記事が出ました。
資産と負債を差し引きして「純負債」で比べようよ!という話
韓国政府の債務(簡単にいえば「借金」)は「『純債務比率』で見よう!」というのです。
つまり、
政府にあるのは債務(借金)だけではない。
資産だってある。資産と債務を差し引きして「純債務」を計算し
これの対GDP比率で財政が健全かどうかを判断しようぜ
という、まあ一見至極もっともな話です。
1,000万円の借金があるお父さんが、時価3,000万円の土地を保有しているとしたら、そのお父さんを「借金まみれ」とはいいませんね。
資産と負債のネット(net)で判断しないといけません。
国は「お父さん」じゃない
どこかで聞いた議論だと思われませんでしょうか。日本の財務省も同じ件で批判を浴びてきました。
韓国と違って、日本の場合は「財務省」自身が「国の借金が大変だー」といい、「資産」の部を無視して「債務」ばかりを強調してきました。
最近では「財務省は、負債ばかりを強調して『国民1人当たりの借金○○○万円』なんていってきたけど、日本政府が保有する『資産』もあるでしょ。netで判断しろよ!」と批判されることが多くなっています。
韓国:「資産もあるから負債が増えても大丈夫!」にしようっと!
日本:これ以上負債が増えたらダメだ! 資産? それは言うな!
というわけです。
韓国政府の姿勢は一理あるように見えますが、根本の部分で間違っています。
一般のお父さんと国は違うのです。
国の資産の部には、株式・債券・現金などの換金できるものだけが入っているのではないのです。道路とか、誰が買うんだよみたいなものも資産計上されています。
もっとも、「政府の金融資産」を定義し直してまで、この新しい財政指標を導入しようという動きがすでに始まっているとのこと。
非常に面白い試みなので、ぜひやってみていただきたいものです。
財政悪化を糊塗しようとしているんじゃないの!
この件を報じた『ソウル経済』から一部を引用します。
(前略)
問題は、企財部が導入しようとしているGDP比「純債務比率」が、実際の状況よりも健全性を良好であるように見せることができる、という点である。政府が「有利な統計」を使おうとしているのではないか、という疑念が湧くのはそのためだ。
これまで発表してきた、代表的な財政の健全性の指標であるGDP比の管理財政収支赤字が今年歴代最悪の5.8%まで悪化する状況なので、口に合う統計を使おうというわけだ。
匿名を要求した国策研究機関のある関係者は、「会計帳簿上の金融資産であっても、実質的には売却が困難な資産が多い」とし「実効性が落ちる」と指摘した。
この関係者は「一般的に、(純債務比率は:筆者注)財政の健全性を良く見せるための補助指標として多く活用されている」と付け加えた。
(後略)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
というわけで、同紙がいうとおり、これは「韓国政府が財政悪化を糊塗するために言い出したこと」と考えられます。
でも、面白いのでやらせてみればいいのではないでしょうか。ウソと借金にまみれた政権であったと歴史に名を残すでしょうから。
ちなみに、日本政府の借金について財務省に取材した記事をずいぶん前(2014年)ですが上げました。財務省のスタンスは以降あまり変化がないように見えますので、もしご興味がある方はぜひ以下の記事を参照くださいませ。
(柏ケミカル@dcp)