世界第2位の資産運用会社『バンガード(Vanguard)』が日本での直販に乗り出すというニュースをお伝えしましたが、このバンガードがそもそもどのような会社かご存じでしょうか?
■革新的だった設立の信念
バンガードはジョン・C・ボーグル(John Clifton Bogle)が1975年に設立した資産運用会社です。現在では約5兆ドル(約550兆円)という巨額の資産を運用していますが、創業当時の預かり資産はわずか1,130万ドル(「First Index Investment Trust」:後述)に過ぎませんでした。
バンガードがここまで急成長したのは個人投資家からの圧倒的な支持があったためです。ボーグルさんは創業に当たり、以下のような信念を持っていました。
1.資産運用会社は顧客以外の利害関係者を持つべきでない
2.インデックス投資信託を開発しこれをメインとする
3.投資家のコストをできるだけ安くする
●「クライエントが所有するミューチャルファンド」
「1」は非常に重要な点です。資産運用会社が「ほかの誰か」に所有されている場合、会社の方針に影響が出ます。
たとえば金融関連会社や証券会社がその会社の株主であった場合、株主が開発したロクでもない金融商品を販売させられる可能性があります。顧客がそれに資金を投じて損をしても、株主が儲かっているからいいや、などという判断をしかねません。
このような事態を避けるためには、顧客自身がそのファンドの持ち主になることです。バンガードはこれを
「client-owned mutual fund company with no outside owners seeking profit」
利益関係者を外部に持たない「クライエントが所有するミューチャルファンド」
と呼んでいます。バンガードでは、ファンドに投資した人がその運用残高に応じてバンガードの株式を持ち、議決権が付与されます。この議決権はファンドごとにある運営委員会において行使できるのです。
つまり、バンガードのファンドでは「投資家(顧客)は所有者」なのです。利害関係者を他に持たないため、投資家(顧客)の利益だけに専念できるというわけです。
●インデックス投資はアクティブ投資を上回る!
バンガードが開発して投資を募ったのは「インデックス投資を行うファンド」です。Money1でも何度か紹介してきましたが、どんなに敏腕なファンドマネージャーがいても、インデックスを上回る利益を上げるのは容易なことではありません。
現在では「インデクックス投資」、また「インデクッスに連動した投資信託」は一般的になっていますが、当時としては非常に革新的なことでした。
※ただし、バンガードの金融商品の中にはリスクオン指向のものもあります。
●コストの徹底的な軽減!
投資信託は、投資家に手数料などのコストを要求します。しかし、このコストで結局投資家が赤字を被るという話は枚挙にいとまがありません。ファンド自体では利益が出ているのに「手数料を引かれたらマイナスじゃん!」ということがよくあるのです。
バンガードには外部株主はいませんし配当も出していませんから、そのためのコストがかかりません。また、特にスゴ腕ファンドマネージャーを必要としないインデックスファンドであれば、その分のコストも掛りません。
コストを軽くすれば投資家の利益が増えます。バンガードの金融商品は他社のものと比べて経費が軽減されるように設計されています。
■愚行と呼ばれたが……その戦闘力は他を圧倒
このようなボーグルの信念を背景に、1976年「First Index Investment Trust(ファースト・インデックス・インベストメント・トラスト)」(現「Vanguard 500 Index Fund」)が船出しました。
有名な話ですが、このインデックス・ファンドは「Bogle’s Folly」(ボーグルの愚行)とも呼ばれました。成功するわけがないと考えられたのです。
しかし業界が何と言おうが、バンガードのファンドは投資家からの支持を受け、預かり資産は増加の一途をたどります。ボーグルの信念が投資家(顧客)の希望と合致していたからです。
恐るべき戦闘力を発揮したバンガードは、現在世界第2位の資産運用会社となっています。そのバンガードが日本での直販を検討中というのは、なかなか興味深い事態だと思われませんか?
⇒『The Vanguard Group,Inc.』
https://investor.vanguard.com/
(柏ケミカル@dcp)