『Money1』でも紹介しましたが、韓国銀行が韓国国債の買いオペを行ったという報道があり、これがネットでも大変に注目を集めました。注目を集めた理由は、韓国がいよいよ破綻するのではないか、このオペがその前兆ではないかという筋の話だったからでしょう。実際、その国の中央銀行が国債を買うオペレーションを行うというのは良くありません。今回はそれがなぜなのか、という話です。
■紙幣は政府から独立した中央銀行が発行している!
まず、誤解している人がいるかもしれませんが、国債というのは「その国の政府が発行する債券」です。
お金の方はといいますと……お金には「紙幣」と「硬貨」がありますね。「紙幣」は政府が発行しているわけではありません。紙幣は日本の中央銀行たる「日本銀行」が発行しています。1万円札などの紙幣が「日本銀行券」と呼ばれるのは、その本質が日本銀行が発行している「証券(みたいなもの)」だからです。お金として価値のあるものと考えられ、使っていますが、その信用がなくなればただの紙切れなわけです。
次に「硬貨」です。「硬貨」は日本政府が発行しています。ですが、これは「補助貨幣」と位置づけられていて、一種類につき使用できる枚数が20枚まで、なんて制限があるほどで、その役割はあくまでも本道の通貨たる紙幣の補助なのです。
紙幣を発行している日本銀行は政府に属しているわけではありません。独自に「日本銀行券」を発行している、いわば民間企業のようなものです。資本金は1億円で、その株式は東京証券取引所に上場されています(銘柄コードは8301)。
日本政府は慢性的に歳入が足りなくて困っていますね。「お金が足りないならお札を刷ればいいじゃん」なんて思う人がいるかもしれませんが、上記のとおり政府が紙幣を発行しているわけではないので、「お札を刷って予算の足りない分を補う」ことはできないのです。ですから、日本政府は(赤字)国債を発行して、それを買ってもらい、歳入の足りない分を補うしかないわけです。
■中央銀行の信頼性を高めるために!
では、なぜ日本銀行は独立した存在となっているのでしょうか? ひと言でいえば「政府に勝手にお金を使わせないようにするため」です。政府というものは放っておくと予算の規律がゆるみ、際限なく歳出を増やしていくものなのです。
考えてもみてください。自分でお札を刷れて、歳入をまかなえるとすると、それに頼ってしまうことになるでしょう。「借金し放題」状況になりますものね。それが進みすぎるとどうなるかといえば、それはお金の刷りすぎでインフレを引き起こし、最終的には破綻です。破綻した国々の屍が歴史の中に累々と横たわっているのです。
そのようなことがないように、歴史の教訓として先進国では中央銀行と政府がきちんと役割分担できており、そのおかげで中央銀行の信頼性高まり、その国の通貨の信頼性が担保されているのです。
ですので、政府の発行する国債(簡単にいえば借金ですわな)を、中央銀行が「買いますよ!」というのは、つまり国債をお金にするようなもので、健全な財政規律を破るものなのです。この「国債のマネタイゼーション(「国債の貨幣化」とも呼ばれます)」を「財政ファイナンス」といいます。
「財政ファイナンス」を行うと、財政規律が緩んで、中央銀行が紙幣を発行しては国債を買うを繰り返し、ついにはハイパーインフレを引き起こす可能性があるのです。上記のとおり、そのような事態に陥って破綻した国は歴史の中に多数あるわけです。
ですので、財政ファイナンスは先進各国で法的・制度的に禁止されています。日本でも、日本銀行が国債の買いオペを行うことは、財政法によって禁止されているのです。
韓国銀行の買いオペが「すわ破綻か」という文脈で注目されたのは、このような背景があるからなのです。しかし、うちの国も韓国の心配をしている場合ではないのです。日本銀行も現在ちょっとヤバい状況であるのです。それについては別記事でご紹介いたします。
(吉田ハンチング@dcp)