韓国文在寅大統領の任期もあとわずかですので、韓国メディアでも文政権の業績を総括する記事が増えてきました。『ソウル経済』が文政権の財政の成績を痛烈に総括する記事を出しています。
冒頭に掲げた数字が以下です。
国家債務の対GDP比率:14.1%増加
追加補正予算:10回・150兆ウォン編成
ここに文政権が要約されています。
文在寅さんは韓国史上政府負債を一番増やした大統領となりました。歴代1位です。この記録を抜くには、ポピュリストでウルトラ左翼の李在明(イ・ジェミョン)さんが大統領になるかしかないでしょう。
『ソウル経済』の記事内に日本人があまり知らない「なぜこんなに政府負債が膨らんだか」についての記載がありまして、それを以下に引きます。
(前略)
コロナ19危機で必然的に支出拡大の主張に力を入れたわけでもない。文大統領はコロナ19以前の2019年05月、国家財政戦略会議で「革新包容国家のための予算は決して消耗性支出ではなく、韓国経済・社会の構造改善のための先行投資と見なければならない」と先資論を主張した。
これに当時、李海瓚(イ・ヘチャン)『共に民主党』代表は「借金をもっとして負債比率を減らそう」という「良い債務」理論で答えた。
(政府が:筆者注/以下同)借金をして(お金をまいて)景気が改善されると、国内総生産(GDP)が増え、結果的に負債比率が改善されるため、債務拡大を恐れる理由がないという論理だ。
「良い債務」理論というのを初めて聞いたという方も多いかもしれません。政府が借金をいくら増やしても、そのお金をまくことでGDPが膨らむから政府負債の対GDP比率は上がらない、という理屈です。
文政権はコロナ前からこの理屈を信奉しており、だからこそじゃぶじゃぶお金をまいたのです。
で、そのとおりになったかというと……読者の皆さまもご存じのとおり、全くなりませんでした。
この『ソウル経済』の記事が面白いのは、文政権の失敗ぶりについてもチェックしている点です。2022年02月06日にヨン・ミョンベ『忠南大学』名誉教授が公表した論文を引いています。
ヨン教授が論文で計算したのは、いわゆる「財政乗数」の効果です。以前、Money1でもご紹介したことがありますが、簡単にいえば「わしが投入した1円は何倍になったんや」という指標です。
ヨン先生は、韓国政府が投入した追加予算でいくら国内総生産(GDP)を増やしたのかに焦点を当てて、以下のようにまとめています。
14兆100億ウォンの追加予算 ⇒ 97兆9,000億ウォン増加
乗数効果:6.73
2020年
103兆7,000億ウォンの追加予算 ⇒ 8兆7,000億ウォン増加
乗数効果:0.08
先生の計算がざっくり過ぎないかという気もいたしますが、とりあえず突っ込んだ割には効果が薄くなっててお話にならないと批判してういらっしゃいます。
『ソウル経済』の記事から先生の言葉を引けば以下のようになります。
(前略)
「追加予算を編成するときは政策効果を慎重に考えなければならないが、きちんとした分析なしに現金散布に依存して経済問題を根本的に解決することもできず、財政健全性だけ悪化させた」と批判した。彼は「良い借金」理論についても「追加予算を通じて創出したGDPは赤字国債の発行量より少なく、債務補償比率は100%に及ばず、これも虚構という事実が明らかになった」と指摘した。
無分別な赤字国の債発行によって金利と物価が上がる「借金の復讐」までも懸念すべきだ、というのがヨン教授の説明だ。
「良い借金」理論を「虚構!」と一刀両断にしています。
つまり、文政権の述べてきた経済政策はウソばっかりだったと今になって指摘していらっしゃるわけです。
ウソばかり言って政府負債を積み上げてきた文政権が間もなく終わります。この先どうするのでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)