通貨安に悩むロシアが繰り出した一手ですが、これは効くかもしれません。
2022年03月31日、ロシアのプーチン大統領は「ロシアが輸出する天然ガスの代金は「ルーブルで払うべし」という法律に署名しました。
非友好的な国は天然ガスの貿易についてロシアの銀行にルーブル口座を開設しなければならなくなります。2022年04月01日から、この口座を使ってガス代金を支払うことになります。
ロシアメディア『タス通信』によると、プーチン大統領は「誰も無料で何かを売っているわけではなく、私たちも慈善活動をしない。つまり、既存の契約は停止される」と強調した、とのこと。
また「ガスをドルやユーロで取引する際に生じるリスクはロシアにとって容認できない。決済のロシアルーブルへの移転は、財政的および経済的主権を強化するための重要なステップである」とも。
さあEUは困った立場に追い込まれました。
ルーブル高になるかも……
外貨をルーブルに換えて支払いますので、ドル・ユーロ売りルーブル買いが大量に発生し、ルーブルの価値が上がることになります。
現在のドル・ルーブルチャートは以下のようになっています(チャートは『Investing.com』より引用:日足)。
一時は「1ドル=158.3000ルーブル」までいきましたが、この記事を書いている2022年03月31日22:46現在「1ドル=84.1601ルーブル」。
ロシアがウクライナに侵攻を開始した02月24日の終値とほぼ同じ水準まで戻しています。これにはロシア国内の資本規制、また外貨購入禁止といった措置が影響しています。つまり、ルーブルを売らせないことで下げを抑制しているのです。
また、プーチン大統領の発言によってルーブルを買っているプレーヤーがいるわけです。さらにはウクライナとロシアが近々停戦となるのではないかという期待も影響しています。
ノルド・ストリームを通して天然ガスをロシアから輸入していたEUなどがルーブルで支払うことになると、さらにルーブル高方向にチャートを下落させるでしょう。
天然ガスの輸出に限って見ても、ロシアはEUから「1日当たり4億5,000万ドル」を得ているのです。
ルーブル支払いの商品を拡大したらどうかという発言
2022年03月30日、Викторович Володин(ヴャチェスラフ・ヴォロージン)国家院議長は、自身のテレグラムで「ロシアにとってルーブル決済する輸出商品リストを拡大するのが有益だ」と述べました。
肥料、穀物、食用油、原油、石炭、鉄鋼、木材などを含めるべきとしました(以下がヴォロージンさんの実際の書き込み)。
<<最後の段落を和訳します>>
Более того, будет правильным там, где нашей стране выгодно, расширить список экспортируемых за рубли товаров: удобрения, зерно, масло, нефть, уголь, металлы, лес и т.п.さらに、わが国にとって有益な場合には、ルーブルで輸出される商品のリストを拡大することもありでしょう。肥料、穀物、食用油、石油、石炭、金属、木材などです
⇒参照・引用元:『Telegram』「Вячеслав Володин」
というわけで、「ルーブルで決済をしろ」とロシアが要求するのは天然ガスにとどまらない可能性があります。
仮にロシアがエネルギー資源の全てをルーブルで支払え、といった場合どうなるでしょうか。
『IIF』(Institute of International Financeの略:国際金融協会)のデータによれば、ロシアは2021年時点でエネルギー資源輸出によって「2,350億ドル」を得ています。これは、全輸出額の半分です。
これが全部ルーブル支払いになると、その分の両替が起こるわけで……これは外為市場にとって大きな波になります。
面倒くさい事態になってきましたが、とりあえずエネルギー枯渇が深刻に懸念されるEUはどう対処するでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)