日曜日ですので読み物的な記事を一つ。
1984年に刊行され韓国でベストセラーになった『丹』という小説があります。
当時の韓国はいわゆる「漢江の奇跡」という高度成長の最中で、1988年に開催されるソウルオリンピックに向かって盛り上がっていました。
そのせいでしょう、異常なほど自信過剰な内容となっています。昔の話で、若い読者の皆さんは恐らくご存じないでしょうから、この素晴らしい小説の中身をご紹介してみます。
黒田勝弘先生が自著の中でこの『丹』という小説を紹介されていますので、以下に引いてみます。
(前略)
この小説は、一種のオカルト的超能力小説である。かの地に古来伝わる「丹学」とか「仙道」とか称される、仙人たちの伝承的超能力の話を書いている。
韓国では仙人とはいわず「道人」といっているが、深山幽谷で苛酷な修行を積み、たとえば何百年、何千年前の過去をのぞきみることや、その逆の未来予知、さらには壁の向こう、何千里のかなたが見える透視術、一瞬のうちに長距離を走る縮地、超速度、飛越など、時間と空間を超越できる奇想天外な超能力者たちの話である。
小説『丹』は、実在する仙道の達人「羽鶴道人・権ピルジン翁」の体験談として、ノンフィクション仕立てになっている。
この小説で興味深かったのは、超能力者「羽鶴道人」がその未来予知能力を発揮して、韓国の「大運三千年」を展望したところだ。
それによると、韓半島は十五年以内に南北が無血統一される。
その後、韓国は鴨緑江を越えて次第に北方大陸に進出し、昔の高句麗の地を回復する。
さらにその後、旧満州の一帯から蒙古の一部、シベリア、バイカル湖、そして東方はカムチャッカ半島にいたる、中国やソ連の地までを領土とし、アジア大陸の巨大国家となる。
世界は東洋中心となって世界の主役は韓国、中国、インドに移り、なかでも韓国は現在のアメリカのような役割を果たすことになる――。
⇒参照・引用元:『ぼくのソウル白書』著:黒田勝弘,徳間文庫,1994年08月15日 初刷,pp65-66
※強調文字、赤アンダーラインは引用者による。
1984年に刊行された本ですから、「15年以内に南北朝鮮が無血統一される」は大外れでしたし、韓国の大運3,000年の話に至っては、「そうなればいいですねぇ」という誇大妄想としかいいようがありません。
実在の「羽鶴道人」なる超能力者が語ったことを作家のキム・ジョンビンさんがまとめた――という点がミソで、「もしかしたらホントかも……」とでかいホラ話を支持した人が多かったのかもしれません。
さしずめ日本でいえば『ノストラダムスの大予言』的な本でしょうか。
今となってはまさに黒歴史みたいな小説(?)ですが、小説だというのに信じる人が出てしまうのが韓国の面白いところです。
(吉田ハンチング@dcp)