アメリカ合衆国のイエレン財務省長官が訪中し、「公正なルールの下での健全な競争を望む」と述べました。
イエレン長官が述べた「健全なルール」とは、あくまでも自由主義陣営国の課すルールであって、中国の課す「俺様ルール」ではありません。
根本的な点が全然違うので、これはコンセンサスにはなり得ないことはMoney1でも先にご紹介しました。
イエレン長官が帰国した直後、中国共産党の御用新聞『Global Times』がさっそく「やっぱり駄目だ」という社説記事を出しました。
タイトルは「Hope Yellen’s ‘healthy competition’ is not a US-style one」(イエレン長官の言う健全な競争が合衆国スタイルでないことを望む)です。
記事の一部を以下に引用してみます。
(前略)
われわれは、イエレン長官が今回の訪中で多くの前向きな発言をしたことに注目した。例えば、彼女は訪問を締めくくる前の記者会見で、「世界は両国が繁栄するのに十分なほど広い」、「バイデン大統領と私は、米中関係を大国間の対立という枠を通しては見ていない」、「中国と合衆国は共に生き、世界の繁栄を分かち合う道を見つけるべきだ」と述べた。
彼女は、合衆国を中国から切り離そうとしているわけではないことを繰り返し強調し、「長期的に互恵的な経済関係を実現することは可能だ」と述べた。
(中略)
これらの要素が相まって、外界にポジティブな期待を与えている。
しかし、そうした期待は風にそよぐロウソクのようなもので、弱く不確かなものだ。
率直に言って、米中関係については、外部世界の全体的な悲観的な見通しは変わっていない。
イエレン長官の訪米によって両国間の経済関係が軌道修正されることはほとんどなく、米中関係が大幅に改善されることもないと考えられている。
人々は、ワシントンの対中政策の方向性は依然として封じ込めと抑圧に重点を置いており、合衆国による経済・貿易問題の安全保障化に変化はないと考える傾向が強い。
こうした見方は中国国民だけでなく、国際社会でも広く共有されている。
例えば、イエレンは米国が「勝者総取り」のアプローチではなく、中国との健全な競争を求めていることに何度も言及した。
これは良いことのように聞こえるかもしれないが、重要なのは「健全な競争」をどう定義するかである。
中国が無条件に協力する一方で、アメリカの地政学的欲求が満たされるようなアメリカ型の競争なのか、それとも相互尊重、平和的共存、Win-Winの協力に基づくものなのか。
米中関係の課題の根本原因は、ワシントンの中国に対する認識の欠陥にある。
「最初のボタン」の問題に対処しない限り、どんなに素晴らしい考えや願いがあっても、それは空中の城に過ぎない。
(後略)⇒参照・引用元:『Global Times』「Hope Yellen’s ‘healthy competition’ is not a US-style one」
――というわけで、この御用新聞の社説は正鵠を射てはいます。
「健全な競争ってなんだ?」と問うていますが、書き手も「それは合衆国のいうルールに則ったもので、実際には中国の封じ込めと抑圧に重点を置いている」と理解しています。
イエレン長官は「自由主義陣営国のルールに従って健全な競争をしよう」といったのですが、中国は案の定理解していません。いや、「それは合衆国のルールじゃないか」と理解して拒絶しています。
話は平行線で全く通じません。
自由主義陣営国は「中国の俺様ルール」に則ったりはしません。もう何度だっていいますが、米中の対立こそはイデオロギーの対立であって、すなわち新冷戦であり、和解などしようがないのです。
(吉田ハンチング@dcp)