2023年12月03日、日曜日だというのに『韓国銀行』が非常に興味深いリポートを公表しました。
韓国は合計特殊出生率が世界最悪まで落ちて、「世界で最初に人口減少によって消滅する国」と目されています。このままいくと、G9に入るどころか、国としての体がいつまで持つのかの方が問題です。
今回『韓国銀行』が出したリポートは、まさに「この少子高齢化が急激に進む韓国はどうすればいいのか」という問題を扱ったものです。
どこを取っても非常に興味深いリポートなのですが、韓国にとって暗い、しかし的確な指摘をしている部分を以下に引いてみます。
16.効果的な政策対応がなく、韓国の出生率がモデル上の確率的な経路を踏む場合、人口減少が加速し、2070年には90％の確率で年1％以上の人口減少が発生し、同じ確率で4千万人以下に総人口が減少するだろう。
（後略）
このままいくと、90％以上の確率で年1％以上の人口減少が発生します。韓国メディアでは「世界で人口5,000万人以上、国民1人当たりの所得3万ドル以上のクラブ『30－50クラブ』」などといいますが、人口5,000万人は維持できません。
もっともそんなクラブはありません。韓国メディアが勝手に言っているだけですが。
17.少子化に対する効果的な政策対応がなければ、韓国の経済成長率は2050年代には68％の確率でマイナスを示すと予測された。
（後略）
このまま少子化が進むと、68％の確率で韓国の経済成長率は2050年代にはマイナスに陥ります。もっとも、2050年代までかかるだろうか？という疑問があります。
19. 韓国の家計動向調査のミクロデータを用いて分析した結果、高齢層ほど同一年齢集団内の所得不平等度が大幅に拡大し、これらの高齢層の人口比率が高くなると経済全体の所得不平等も深刻化することが分かった。
（後略）
このまま少子化が進むと、高齢者ほど所得格差が広がることになり、社会全体での経済的不平等も拡大します。
4.超少子化の原因
22. 本節では、さまざまな分析を通じて、超少子化問題は結局、「青年」が体感する高い「競争圧力」と「不安」(雇用、住居、子育てに対する不安)に関連しており、これが結婚と出産の延期と放棄に繋がっていることを示す。
（後略）
この「超少子化の原因」の章は圧巻で、韓国で超少子化が進行しているのは、青年に掛かっている競争圧力と不安のためだと結論付けているのです。
24. [雇用環境]
若者に与えられる経済資源の中核である仕事を見ると、雇用率は過去より若干上昇したものの、OECD平均に大きく及ばない。
（後略）
韓国の青年層に不安を与えているものの中核は「雇用」です。『韓国銀行』が指摘するとおり、韓国では若者の雇用環境は非常に悪いのです。上掲の表組のポイントは以下です。
2022年
15～29歳の雇用率
OECD平均：54.6％
韓国：46.6％25～39歳の雇用率
OECD平均：87.44％
韓国：75.3％
韓国の青年層の雇用率はOECD平均より、15～29歳で「8.0％ポイント」、25～39歳で「12.44％ポイント」も低いのです。
25. 青年層の非正規雇用が増加するなど、雇用の質的な面も悪化した。青年層（15～29歳）の賃金労働者のうち、非正規労働者の割合は2003年の31.8％から2022年には41.4％と大幅に増加（9.6％p）した。
国別比較が可能な臨時職労働者の割合を見ると、韓国は27.3％（2022年基準）で、資料が入手可能なOECD34カ国中2位（1位：オランダ、27.7％）と高く、雇用安定性が悪いと評価される（雇用労働部2023）。
（後略）
雇用率が悪いだけではないのです。韓国では雇用の質の悪化しているのです。非正規被雇用者の割合が41.4％に達するようになりました。非正規雇用が正規雇用よりも悪いとは一概にはいえませんが、しかし非正規雇用となると将来に不安があるのは確かです。
上掲の指摘部分だけまとめても、このまま少子化に有効な手立てが打てない場合、
人口減少が加速し、2070年には90％の確率で年1％以上の人口減少が発生し、同じ確率で4千万人以下に総人口が減少する
韓国の経済成長率は2050年代には68％の確率でマイナスを示す
超高齢化に伴い、所得格差はさらに拡大する
（高齢者層の中での所得格差も拡大する）
となるのは分かっているわけです。真っ暗な未来ですね。
これは『韓国銀行』による深刻な警告です。どうすべきかとその効果についても書いていますが、そちらはオリジナルのリポートを参照してください。
（吉田ハンチング＠ｄｃｐ）
